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トラスツズマブ(ハーセプチン)は早期乳癌に有効

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トラスツズマブ(ハーセプチン)は早期乳癌に有効

Trastuzumab (HerceptinR) Effective in Early Breast Cancer(Posted: 10/24/2005) New England Journal of Medicine2005年10月20日号で発表された大規模国際臨床試験の結果によると、化学療法後1年間トラスツズマブ(ハーセプチンR)を投与した患者において、化学療法のみの患者より乳癌再発が半減した。


要約 

化学療法終了の後トラスツズマブ(ハーセプチン®)の投与を1年間受けた乳癌患者の再発率は、化学療法しか受けなかった患者の約半分であることが、大規模で国際的な臨床試験結果から明らかになりました。米国における2つの試験でも同様の結果が得られたことから、今回の試験結果は侵襲性の高い乳癌患者のための新しい標準治療を確立することになります。

出典  New England Journal of Medicine, October 20, 2005 (ジャーナル要旨日本語訳参照)

背景
乳癌の約2割はHER2というタンパク質を過剰に生成(過剰発現)し、それは細胞表面に現れます。HER2を過剰発現する腫瘍は過剰発現しない腫瘍に比べて増殖が速く、再発の可能性も高くなります。

トラスツズマブはHER2を過剰発現する腫瘍細胞(HER2陽性という)を標的とし、その増殖速度を緩めるかあるいはストップさせる薬剤です。1998年以来、同剤は他の臓器に転移したHER2陽性乳癌の治療に使用されてきましたが、HER2を過剰生成しない腫瘍を持つ患者には効果がありません。

HER2陽性進行乳癌の女性の治療にトラスツズマブが奏効した結果、手術直後の早期癌患者への追加的(補助的)治療法としての同剤の有効性を試験するため、いくつかの大規模な臨床試験が計画されました。

うち2つの臨床試験は米国国立癌研究所(NCI)の後援によるもので、これらの結果を合わせてまとめたものが2005年4月上旬発表されました。(NCIプレスリリース日本語訳参照)New England Journal of Medicineに2005年10月20日に発表された中間解析(ジャーナル要旨日本語訳参照)によると、化学療法と併用してトラスツズマブの投与を受けた患者は、化学療法のみを受けた患者に比べ乳癌再発のリスクが52パーセント低くなっていることが分かりました。

この研究結果を受けて、これら2つの臨床試験は中断され、化学療法のみを受けていた患者にトラスツズマブの投与が推奨されました。

以下は同様の結果が示された第3の国際的試験についてのものです。

試験
この国際的な試験には、世界39カ国の3300名以上の早期乳癌女性が参加しました。癌がリンパ節に転移している患者およびリンパ節に癌はないけれど、直径1センチメートル超の腫瘍がある患者を試験の被験者として適格としました。すべての患者にはHER2を過剰発現している腫瘍がありました。

腫瘍を取り除く手術の前に化学療法を受けた患者もいれば、手術後に化学療法を受けた患者もいました。これら化学療法のレジメンの種類は様々でした。患者は必要に応じて放射線療法およびホルモン療法(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬)による治療も受けました。

すべての化学療法および放射線療法の終了後、被験者を3群のいずれかに任意に割り当てました。第1群にはトラスツズマブを1年間投与、 第2群にはトラスツズマブを2年間投与、第3群には本剤を投与せず主治医による観察のみとしました。

この試験はベルギー ブリュッセルにあるJules Bordet Instituteの Martine Piccart-Gebhart医師が率いる研究チームが実施しました。

結果
中央値1年間の経過観察の後、トラスツズマブ1年間投与群の患者の乳癌再発率は、投与しなかった患者群に比べ46パーセント低くなっていました。(トラスツズマブ2年間投与群の患者はこの解析には含まれておらず、その結果は後ほど報告する予定です)トラスツズマブは、被験者が受けた化学療法の種類に関係なく、癌の再発リスクを等しく軽減する効果があると思われます。経過観察の期間が短いため、2群間の全生存率に統計的な有意差があるか否かを明らかにすることはできませんでした。

これらの試験結果は非常に説得力があり、経過観察のみの群にトラスツズマブを投与開始することが推奨されました。全患者の経過観察は10年間続けることになっています。

制限事項
これまでのトラスツズマブの試験から、同剤投与によりうっ血性心不全のリスクが増す患者もいることが分かっています。うっ血性心不全では、心筋障害により心臓が正常に収縮拍動しません。うっ血性心不全の危険因子を持つ女性はこの試験の被験者として適格者に含まれませんでした。にもかかわらず、観察群の患者よりもトラスツズマブ群の患者がより多くうっ血性心不全あるいはその他の心臓障害に苦しみました。

腫瘍がHER2タンパクを過剰出現しない患者にトラスツズマブを投与しても効果は全くないため、トラスツズマブ療法の開始前に注意深い検査が必要です。この試験では偽陽性(試験結果が誤ってHER2の過剰出現を示す患者)の数を減らすため過剰出現の検査を2回(2度目は中央検査施設にて)行わなければなりませんでした。

トラスツズマブ療法は、日常的にこの試験を実施し、かつ正確な結果を確保するため注意深い手順を取っている検査施設での試験においてHER2の過剰出現を確認した場合にのみ検討すべきである、と試験の著者らは述べています。

コメント
この試験の結果は4月上旬に終了したNCIの後援による2つの試験結果と合わせて「ただただ驚くものである」とヒューストンのテキサス大学M.D.アンダーソン癌センター(M.D. Anderson Cancer Center)のGabriel N. Hortobagyi医師は付随の論説で述べています。

今日までタモキシフェン以外に乳癌再発リスクを50パーセント減少させた薬剤はなかった、と同医師は書いています。(タモキシフェンは、腫瘍が女性ホルモンのエストロゲンに反応する場合にのみ投与します。)

リンパ節に転移したHER2陽性乳癌女性患者のすべて、およびリンパ節にまだ転移していないHER2陽性乳癌患者のほぼすべての治療として、化学療法とトラスツズマブの併用が標準治療となる時が来た、と同医師は述べています。

「これらの結果は劇的で、HER2陽性乳癌患者のための新しい標準治療を提示している」とNCI癌治療評価プログラムの臨床腫瘍医で乳癌専門医のJo Anne Zujewski医師は語ります。

同医師は、「ここで報告されている経過観察期間は短いが、3つの大規模な臨床試験のすべてで同様の結果が出ていることから研究結果の信頼性は高い」と付け加えた後、「観察期間を延長すれば、トラスツズマブの長期投与による副作用の情報を得ることが出来るだろう」と述べました。

(Chihiro 訳・島村義樹(薬学) 監修)

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