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術前の放射線化学療法は直腸癌の局所再発を防ぐのに役立つ

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術前の放射線化学療法は直腸癌の局所再発を防ぐのに役立つ

Chemoradiation Before Surgery Helps Prevent Local Relapse of Rectal Cancer(Posted: 10/12/2005) New England Journal of Medicine.2004年10月21日号によると、外科手術の前に放射線と化学療法を受けたステージⅡおよびⅢの直腸癌患者は、手術後放射線と化学療法を受けた患者に比べて、後のトラブルが少なく、直腸に再発する可能性が少なくなる。


要約
直腸癌の臨床病期がⅡ期やⅢ期の患者が、術前に放射線治療および化学療法を受けた場合、後に問題が少なかったり、術後に放射線治療および化学療法を受けた患者に比べて、癌が直腸に再発するリスクが低くなっていました。しかしながら、術前にこのような治療や療法を行っても、直腸以外の部位での再発を防げなかったり、延命には至りませんでした。

出典  The New England Journal of Medicine, Oct. 21, 2004 (ジャーナル要旨参照)

背景
手術のみで治療が行われる場合、臨床病期がⅡ期またはⅢ期の直腸癌患者(腫瘍が直腸壁、または近傍のリンパ節、あるいはその両方に拡がっている患者)では、”局所再発”や直腸での癌の再発のリスクが高くなります。放射線治療または化学療法、あるいはその両方を追加して行うと、このリスクを減らすということは、従来の試験によりわかっていますが、局所再発のリスクを最小限に抑えたり、術後の患者の生活の質を最大に高めたり、可能な場合は患者の生存を延ばしたりする、このような追加の治療を行う最良の方法は、決定されていませんでした。

1991年に米国国立医療研究所主催で行われたコンセサス会議では、医師が術後に(通常、5-FUとしても知られるフルオロフランシルを使用した)化学療法および放射線治療の両方を行うことが勧められましたが、この方法が患者の慢性的な腸管の問題に対するリスクを高める場合があることが、いくつかの証拠によって示唆されていました。

ヨーロッパで行われた試験では、術前に化学療法を行わずに放射線治療のみを行うという代替的な取り組みによって、手術のみの場合に比べると、局所再発のリスクを減らすことがわかっています。術前に放射線治療を行うもう1つの考えられる利点は、治療によって腫瘍を小さくできるので、外科医が、患者の正常な腸機能をより温存できるように、根治術を小さく済ますことができる場合がある、ということです。

しかし、大規模な臨床試験においても、放射線治療および化学療法(化学放射線療法と呼ばれる)が手術前(術前)または手術後(術後)に行われることで患者の治療成績が良くなったかどうかは、はっきりと解明されたわけではありませんでした。

試験
ドイツでは、1995年から2002年にかけて、26か所の異なる病院で働く研究者が、臨床病期がⅡ期またはⅢ期の直腸癌患者823人を無作為に選んで、術前または術後に5-FUを使用した化学放射線療法を行いました。ただし、諸々の理由により、両群で脱落した少数の患者は、最終的に除外されるか、または最終的な解析の前に別の群に変更するよう依頼されているので、解析は、手術前群405人と手術後群394人、合計799人の無作為に選ばれた患者に基づいています。

術前群の患者には、手術前に6週間の化学放射線療法を完遂しました。 他群の患者には、まず手術を行い、続いて、腫瘍が取り除かれた部位へと放射線を追加照射する他に、術前群の患者と同一の化学放射線レジメンを実行しました。その後、両群の患者に5-FUの追加投与を行いました。

患者は、2年間は3か月ごとに経過観察を受け、その後の3年間は6ヶ月ごとに経過観察を受けました。当該試験は、ドイツ直腸癌試験グループ(German Rectal Cancer Study Group) によって行われたもので、ドイツのエラルゲン大学のRolf Sauer医師が責任者でした。

結果
中央値で4年少し前の経過観察期間後、術後群の13%が局所再発を起こしたのに比べ、術前群の患者では、再発を起こしたのは6%でした。また、両群でほぼ同数(術前群の36%、術後群の38%)の患者が別の場所で再発を起こしました。

5年時の全生存率は、術前群で76%、術後群で74%でしたが、 この差異は、統計的に有意なものではありません(偶然にに起こるほど差が小さい)でした。

概して、術前群の少数の患者が、下痢や、腫瘍摘出後の腸管の接合部で生じる狭窄といった、短期あるいは長期の重篤な副作用によって、苦しむのみでした。

数人の患者は、試験の開始時に外科医が直腸の全摘出、つまり人工肛門造設術(老廃物を排出するための瘻を下腹部に作る)が必要だと考える腫瘍を有していましたが、このような患者の場合、術前群では人工肛門造設術を回避できる可能性が高く、腫瘍摘出後の腸の再接合の成功率は、術後群の倍でした。

制限事項
術後に化学放射線療法を受けるように割り当てられた群では、ほぼ5人の患者のうちの1人が、Ⅱ期やⅢ期ではなく、Ⅰ期の直腸癌であることがわかりました。つまり、腫瘍がより小さく、医師が考えていたよりも進行していなかったということです。患者は無作為に割り当てられて治療を受けているので、術前群に割り当てられた患者でも、ほぼ同数がⅠ期であった可能性があります。ゆえに、術前の化学放射線療法では、早期の腫瘍に対して過度な治療を行ってしまうという欠点があります。

現時点では医師が術前に腫瘍の病期をを予測する技術は完全ではない、とミネソタ大学のRobert D. Madoff医師は、同じ巻の論説で述べています。 また、病期分類の技術が改善されるまで、術前治療を受ける患者の何人かは、この追加の治療によって恩恵を受けないというリスクがある、とも付け加えています。

コメント
「これは、術前の放射線治療および化学療法が、術後の化学放射線療法に比べて、臨床病期がⅡ期またはⅢ期の直腸癌患者の局所再発を減らすことを初めて立証した重要かつ適切に行われた研究である」と、国立癌研究所の癌治療評価プログラムの腫瘍外科医Meg Mooney医師はコメントしています。

局所再発の減少、短期や長期にわたって副作用がおこる割合の低下、および低位置の腫瘍に対する括約筋温存手術の可能性の増加等、さまざまな利点があることを考慮すると、、5-FUを使用した術前化学放射線療法は、直腸壁、または近傍のリンパ節、あるいはその両方に拡がっている直腸癌の患者に対して好ましい治療法だとみなすことができる、とMooney医師は付け加えます。この方法に関するさらなる研究は、2005年の時点で進行中であり、この標準的な化学放射線療法レジメンに、オキサリプラチンなど別の化学療法剤()を追加することによって、さらによい結果をもたらす可能性があるかどうかについて明らかにすることを目的としています。

(Yucca 訳島村義樹(薬学) 監修)

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