術後化学療法カペシタビンは早期トリネガ乳がんに奏効せず

サブグループ解析では、非基底細胞様乳がんを有する患者がこの治療法により便益 を受ける可能性があることが示唆された

第3相ランダム化比較試験 であるGEICAM/CIBOMA臨床試験のデータによると、早期トリプルネガティブ乳がん患者に対して手術および標準化学療法の完了後に化学療法薬であるカペシタビンによる治療を行っても、無病生存率や全生存率は経過観察群と比較して有意に改善されなかったと、12月4日から8日に行われた2018年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。

「早期トリプルネガティブ乳がん患者は、通常、手術と化学療法による治療を受け、時には放射線療法を受けることもあります」と、スペインマドリードのコンプルテンセ大学グレゴリオマラニョン病院内科学教授および腫瘍内科学部門長のMiguel Martín医学博士は語った。「しかし、再発リスクは高く、I期の患者の7~10%、II期の患者の15~20%、III期の患者の25~50%で疾患が再発します。そのため、新たな治療法が早急に必要とされています」。

「標準治療にカペシタビンによる術後化学療法を追加しても無病生存率や全生存率が有意に改善されないことが判明し、われわれは失望しました」とMartín医学博士は続けた。「しかし、非基底細胞様(ノンベーサル型)乳がんを有する患者のサブセットではカペシタビンにより有意に便益 を受けるようだというわれわれの発見と、CREATE-X試験のデータでは化学療法後に残存病変を有する乳がん患者に対してカペシタビンによる術後化学療法を行うと再発率が有意に下がり、全生存率が有意に改善されていることから、トリプルネガティブ乳がん患者はがん専門医とともにカペシタビンによる術後化学療法を検討するよう強く推奨します」。

Martín医学博士らは試験において、手術と化学療法による治療歴のある早期トリプルネガティブ乳がん患者876人を、カペシタビンを8サイクル投与する群または経過観察群へとランダム に割り付けた。

追跡期間中央値である7.3年の後、5年無病生存率は、カペシタビン群へランダム に割り付けられた448人の患者では79.6%で、経過観察群へとランダムに割り付けられた428人の患者では76.8%であった。5年無病生存率は統計的には有意に改善されず、つまり試験の結果は形式的に否定的なものであったと、Martín医学博士は説明した。

「カペシタビンの有益性は有意でないようにみえます。しかし、この試験の参加者が876人のみであり、このことは微小ではあるが臨床的意義のある差異を特定するほどの検定力がないことを意味しています」とMartín医学博士は報告した。「CREATE-X試験とわれわれの試験の結果が一致しない一因として、対象集団の予後像が異なることがあるようです。われわれの対象集団の再発リスクは、CREATE-X試験よりもはるかに低いものでした」。

Martín医学博士らはサブグループ解析において、非基底細胞様乳がんを有すると免疫組織化学染色により定義された患者248人中、カペシタビンによる術後化学療法群へとランダムに割り付けられた患者は経過観察群へとランダム に割り付けられた患者と比較して、疾患イベントの経験率が49%低く、死亡率が52%低かったことを発見した。

「この結果は興味深いものです」とMartín医学博士は語った。「しかし、この相互作用試験は、全生存率が統計的に有意であった(p=0.0052)ものの無病生存率については否定的であった(p=0.0694)ため、この結果は慎重に解釈するべきです」。

Martín医学博士によると、この試験の大きな欠点は、症例数が少なく、また、対照群における再発イベント数が予測していたよりも少ないことから、この試験には検定力に限界があり、カペシタビンを用いたときの予後について微小だが臨床的意義のある改善がなされたか明らかにできないことである。

この試験はRoche社から支援を受けた。Roche社はカペシタビンの提供も行った。Martín医学博士はPfizer社とLilly社から講演代を受理した。また、AstraZeneca社、Novartis社、Roche-Genentech社、Pfizer社、Glaxo社、PharmaMar社、Taiho Oncology社およびLilly社から諮問委員会への参加に対する謝礼を受理し、Novartis社とRoche社から研究助成を受けた。

翻訳担当者 串間貴絵

監修 東海林洋子(薬学博士)

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