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外用剤は乳がんの予防に有用か

タモキシフェンは、疾患リスクが高い女性の乳がん予防に有用である。しかし、タモキシフェンの利益を受ける立場にある女性の多くは、ほてり、血栓や脳卒中のリスク上昇などの副作用への懸念から、この錠剤を服用していない。経口のタモキシフェンに代わる、より副作用が少ない製剤を検討することを目的として、2つの臨床試験でこの薬物の外用剤を研究している。

これらのランダム化プラセボ対照試験は、乳房に直接塗布する、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)と呼ばれるタモキシフェンのゲル製剤について研究している。

NCIのがん予防部門のBrandy Heckman-Stoddard医学博士によると、この試験の目的は、タモキシフェンの外用剤投与は、経口投与と比較して、乳房内での薬物濃度が同等であっても、血液中および体内の他の部位での薬物濃度レベルが低くなるかどうかを確認することである。

「体内の薬物濃度が低いほど、女性の副作用が少なくなる可能性があります」と同博士は付け加えた。

 

乳がん予防のための外用剤の試験

4年前、ノースウェスタン大学Feinberg School of Medicine のSeema Khan医師は、小規模な試験を実施した。この試験は、乳管内上皮に認められる異常細胞増殖、すなわち非浸潤性乳管がん(DCIS)として知られている状態に対して、乳房皮膚にゲルを塗布した女性群と、経口タモキシフェンを投与した女性群で比較した。(DCIS患者は、異常細胞がまだ乳房の他の組織には広がっていない)

「ゲルと錠剤の両方でDCIS細胞の増殖が同様に減少しました。ゲルの治療を受けた女性の乳房内のタモキシフェン濃度はかなり良好でした」と、タモキシフェンゲルの新しい臨床試験の1つを指揮しているKhan医師は述べた。4-OHTには手指消毒用ゲルと同様の感触と硬さがあるという。

ゲル群の女性では、経口タモキシフェン群の女性よりも、副作用に関連する特定のバイオマーカーの血中濃度が低かったことも明らかになった。

Khan医師は、これらの結果を現在行われているランダム化プラセボ対照臨床試験で確認する必要があると強調した。4-OHTゲルは、特定の女性群での使用を目的としていることにも言及した。

「このアプローチは、乳がんリスクが高い健康な女性とDCIS女性患者を対象としています」と同医師は述べた。 「問題が乳房に限定されている場合に、このアプローチが適切でしょう」。

乳がん細胞が乳管壁を突き破ってしまうと、外用剤の使用は実用的なアプローチではなくなる。なぜなら、これらのがん細胞は体内の他の部位に広がる可能性が出てくるからであると説明した。

「このような場合、浸潤性乳がんに対する全身的治療を行う必要があり、局所的なアプローチでは治療が奏効しません」とKhan医師は述べた。

DCIS患者にとって、外用剤の塗布は「局所的な病変に対する局所的な治療」であると、Heckman-Stoddard博士は述べた。

 

乳腺濃度を臨床試験の指標として使用

NCIは4-OHTゲルの臨床試験のうちの1つの共同実施組織であり、ゲルを製造しているBHR Pharma社はもう1つの臨床試験に資金援助を行っている。

「この2つの試験の結果は非常に興味深いものです」と、Heckman-Stoddard博士は述べた。 「そしてこれらの試験でゲルの有効性が実証された場合、NCIによる次の大規模第3相乳がん予防試験につながる可能性があります」。

両方の試験で、薬剤の抗がん効果を示すものとして乳腺濃度の変化を評価している。

2つの理由から、乳腺濃度が乳がんの重要な研究分野に浮上している。高濃度乳房が乳がんのリスク因子であるため、そして、マンモグラム では高濃度乳房により乳がんが遮蔽され、一部の腫瘍を検出するのが困難になる可能性があるためである。

経口タモキシフェンの臨床試験では、乳房濃度が最も減少した患者群で乳がんリスクも最も低くなることが明らかになったと、2番目のタモキシフェンゲル臨床試験を指揮している、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBanu K. Arun医師は述べた。

この試験の参加者は、1年間乳房に4-OHTゲルまたはプラセボゲルを塗布する。 「マンモグラムの乳房濃度を測定し、その低下が認められることを期待しています」と、Arun医師は述べた。

容易に入手可能な薬剤である経口タモキシフェンが乳がんリスクを減らし、乳房濃度を低下させるというエビデンスは有力だが、タモキシフェンの経口投与で利益を受ける可能性のある女性の多くが副作用のためにこの薬剤を服用しない可能性があるため、乳がん予防には「新しいアプローチが必要」であると、Arun医師は続けた。

「ゲルでほてりが回避できるかどうかについて明確なイメージがあるわけではありません」とKhan医師は述べた。「しかし進行中の臨床試験は、副作用が軽減されるかどうかについての情報を提供してくれるはずです」。

また、これらの臨床試験は、外用剤が乳房内でどのように分散または分布しているかについての疑問を解決してくれるかもしれない。 Heckman-Stoddard博士は、外用剤が異なると分布も異なる可能性があることに言及した。

これらの臨床試験は、乳がん予防に使用するゲルの量を乳房の大きさに基づいて変えるべきかどうかについても調査していると、Khan医師は述べた。

 

他の薬物を対象とするためアプローチ方法を拡大

NCIは、4-OHTゲル試験で(共同実施組織としての)役割を果たすのに加えて、乳がん予防を目的とする外用剤の2つの追加試験に資金援助を行っている。

そのうち1つの試験は、ゲル製剤のベキサロテン(タルグレチン)について調査し、もう1つの試験は、ゲル製剤のエンドキシフェンについて調査している。

現在の臨床試験で乳がん予防に外用剤を使用できる可能性が実証された場合、Khan医師は、患者が経口摂取するには毒性が強すぎる一部の薬物の外用剤を含む追加の薬物について調査する予定である。

「健康な女性にがん予防薬を提供するので、高い水準の安全性と忍容性が必要です」と、Khan医師は述べた。

「特定のタイプのレチノイドなどの一部の薬剤は、健康な女性の経口使用には適していませんが、これらの薬物の外用剤が皮膚から吸収されて望ましい効果を得られた場合、がん予防の選択肢が広がる可能性があります」と付け加えた。

現時点で、研究者らは現在の4-OHTゲル試験と、研究を進めるために必要な数百人の女性の募集に焦点をあてている。

「私はこのアプローチについて楽観的です」とArun医師は述べ、ゲルの使用について言及した。 「タモキシフェンがどのように作用して乳がんを予防するかについてはわかっており、経口タモキシフェンによる試験の結果があるからです」。

Khan医師は同意し、「この薬剤のためにこの機会が作られています」と述べた。「両方の試験が適切な方向に進めば、数千人の女性を対象とした試験でこのアプローチについて調査する準備が整うことになります」。

翻訳会津麻美

監修田原梨絵(乳腺科、乳腺腫瘍内科)

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