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低脂肪食により乳がんの死亡リスクが低下

「果物や野菜たっぷりの低脂肪食は、乳がんによる死亡リスクを低下させ得る」。とMail  Online(デイリーメール紙電子版)が報告している。
この記事は、閉経後の女性約5万人を対象に、1990年代に実施された米国の試験の長期の追跡調査に基づいている。

女性らは、8年にわたり、これまで通りの食生活を続けるか、低脂肪で果物や野菜を多く摂取する食生活をするかに割り付けられた。

試験中、1,764人の女性が乳がんを発症した。 低脂肪食は乳がん発症のリスクに有意な影響を及ぼさなかったが、その後、研究者はさらに10年間乳がんを発症した女性を追跡調査した。

研究者らは、診断を受けてから10年以上生存した女性の割合は、通常食の女性では78%であったのに対し、低脂肪食を続けた女性では82%であったと特定した。

確かに、これはわずかな違いにすぎない。しかし、適切に実施されたこの試験は、乳がんに関してすでに認知されている事実を概して支持するものである。

過体重または肥満になる可能性があるので、飽和脂肪が多い食事は乳がんにも他の種類のがんにも既に示されている危険因子である。

果物や野菜は健康的な生活習慣の一部に過ぎないかもしれないが、結果に影響を与え得るものである。

この研究では、バランスの取れた食事と定期的な身体活動によって、がんのリスクや他の多くの慢性疾患のリスクが軽減されるという多くの根拠を示している。

この研究はどこで行われたのか?
この研究は、カリフォルニア州ドゥアーテにあるシティーオブホープ国立医療センターおよび米国のさまざまな施設の研究者が行った。

資金は、国立心肺血液研究所・国立衛生研究所(NIH)・保健福祉省、および米国がん研究協会が提供した。

この研究は査読のある雑誌であるJAMA Oncology誌に掲載された。

デイリーメール誌のレポートはほぼ正確なものであった。

これはどういった種類の研究なのか?
これは、1990年代に実施されたランダム化比較試験の追跡調査であり、この試験では閉経後女性が低脂肪食に割り付けられた。

元来の試験では、低脂肪食が乳がんリスクを低下させるかどうかを確認することを目的としていた。

この解析では、乳がんを発症した女性が、低脂肪食を摂取した場合に、通常の食生活の場合と比べて、より長く生存したかどうかが調べられた。

この試験はランダム化デザインであり、これほど多くの女性を対象とする食事療法の研究はまれである。

通常、このような研究は観察研究にならざる得ない。なぜなら、通常は何千人もの人々をランダムに特定の食事に従わせることができないからだ。

異なるグループに女性をランダム化することは、結果に潜在的に影響を及ぼしうる交絡因子を、2つのグループ間で少なくともバランスをとることを意味した。

研究者らは何をしたのか?
女性の健康イニシアチブ(WHI)の食生活改善(DM)試験では、48,835人の閉経後女性を低脂肪または通常食のいずれかにランダムに割り付けた。

女性はがんリスク因子に合わせて、2年ごとにマンモグラフィーによるスクリーニングを受けた。
ホルモン補充療法を受けている場合にはより頻繁にスクリーニングを行った。

この試験は、1993年から1998年にかけて、米国の40カ所の施設で実施された。

低脂肪食では脂肪を全エネルギー摂取量の20%に減らすことを目指していた。 参加者は、果物・野菜・穀物の摂取量を増やすことも奨励された。

食事内容は、栄養士によって指導された。栄養士は、1年に18回のグループセッションを個人セッションと組み合わせて指導を行った。

各参加者は、自分の脂肪摂取目標を設定し、研究期間中に食物頻度アンケートに回答した。

試験期間中に乳がんを発症した女性は、より頻繁に栄養指導を受けて低脂肪食を継続した。 食事療法の介入は計8年間続いた。

試験期間中に計1,764人の女性が乳がんを発症したが、低脂肪食は乳がん発症のリスクに有意な影響を与えなかった。

その後、乳がんに罹患した女性を平均11年間追跡調査して、食事ががん生存に影響を与えるかどうかを調べた

基本的な結果はどういったものか?
乳がんの女性1,764人のうち516人が死亡した。通常の食事群では78%の女性が生存していたのに対し、低脂肪食群の女性の82%が10年生存していた。

つまり、低脂肪食が死亡リスクを22%減少させることを意味した(ハザード比0.78、95%信頼区間0.65〜0.94)。

ほとんどの死亡原因は、想定されるように乳がんであり、91人の死亡は心臓血管疾患(CVD)であった。 低脂肪群においては、乳がんとCVDの両方の死亡が少なかった。

研究者らの結論は何か?
研究者らは、「食事の介入期間中に乳がんの診断を受けた女性において、食事療法群の乳がん患者で全生存期間が延長された。」と結論付けた。

「この延長は、ある程度は、いくつかの死因において生存率が向上したことによっている。」

結論
この研究には多くの強みがある。 数千人が参加し、8年にわたり慎重にガイドされた食事介入を実施し、それらを入念に追跡した食事療法の試験は稀である。

一般的に、この知見は乳がんリスク因子に関する既知の事実の裏付けとなる。飽和脂肪が多い食事は、既に乳がんの危険因子として認識されている。

残念なことに、この研究では、低脂肪食は最初に発症したがんに対して効果があるという説得力のあるエビデンスを得るには至らなかった。その差は統計的に有意ではなかったからだ。

しかし、がんを発症した後も低脂肪食を継続した女性には、全生存期間において有意差が見られた。しかしながら、生存率における絶対数としての差はわずか4%に過ぎず、かなり小さかったと言わざるを得ない。

低脂肪食には、より多くの果物や野菜や全粒粉も含まれていた。

しかし、果物や野菜が乳がんや生存に直接影響を及ぼすのか、あるいは飽和脂肪の低い一般的な健康食を食べることでもリスクが低下するかどうかはわからない。

低脂肪食を摂取している女性は、乳がんの別の確立された危険因子である過体重または肥満になる可能性がより低いであろうということにも留意したい。

がん危険因子の多くは、残念ながら、遺伝的およびホルモン的要因のような、自分でコントロールできないことである。

しかし、健康的な生活習慣を続けることは、乳がんや他の多くの慢性疾患のリスクを軽減するのに役立つ。

つまり下記の通りである。
・適正体重を目指す。
・飽和脂肪酸や塩分、糖分が少なく、果物・野菜・食物繊維の多い食事を摂る
・定期的な運動をする
・喫煙しない
・飲酒量を適正にする

分析 Bazian
ウェブサイト編集 NHS

 

翻訳池上紀子

監修尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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原文掲載日

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