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ASCO他が、臨床試験の参加基準を広げるガイドライン案をFDAに提出

米国臨床腫瘍学会(ASCO)およびフレンズ・オブ・キャンサーリサーチ(Friends)は、がんの臨床試験の適格基準を現在より広げる5つの新ガイドライン案を米国食品医薬品局(FDA)に提出した。本提言はASCOおよびFriendsが共同で行った臨床試験参加の適格基準を緩和するための取り組みの一環であり、試験参加の「最小年齢」、「HIV/AIDSの有無」、「脳転移」、「臓器機能不全」および「過去に発症した、または現在併発している悪性腫瘍」の5つの特定領域で新指針を定めている。

 

「適格基準は患者の安全性を確保するが、その基準が過剰に厳格な場合、臨床試験の参加に悪影響を与え、臨床現場で臨床試験の結果をがん患者の治療に適用する能力が低下する」とASCOの理事長Monica M. Bertagnolli医師は語った。「このことにより、臨床試験のスポンサーが、ガイダンスにより適格基準をどのように最新化するのかを理解でき、そして臨床試験参加者が承認後に治療を受ける人たちと同様の患者であることを確証できる」。

 

適格基準は、臨床試験参加候補者が参加のため満たすべき特徴を明確に示し、また年齢、現在の健康状態、性別、病歴、がんの種類とそのステージを特定している。このようなやり方で試験対象の母集団の特徴を定義することにより、研究者たちは試験治療の有効性および毒性について理解を深め、試験結果の解釈について交絡因子の影響を最小限にすることが可能である。しかし、適格基準がより厳格な場合、参加資格のある患者がほとんどいなくなり、日常の臨床現場で見られるより多様な患者集団への治療に試験結果が適用できなくなる。

 

「適格基準の見直しおよび更新を行うことにより、歴史的に除外されてきた患者に重要な機会が新たに与えられる」とFriendの理事長兼CEOのJeff Allen氏は語った。「私たちは、FDAと米国国立がん研究所(NCI)が外部の利害関係者と協力して、このような重要な課題に取り組む意欲を持つだけでなく、われわれは多くの患者に間違いなく利益をもたらすことを全力で遂行していることを賞賛する」。

 

ASCOおよびFriendsは、患者ががんの臨床試験により多く参加することを推進するため2016年初旬に適格基準を最新化する取り組みを共同で開始した。患者の試験への参加を制限する可能性が高いが参加の安全性に影響する可能性が低い5つの領域を特定した。研究者、患者支援団体、規制当局および業界代表者の作業部会が各領域を調査し、患者の参加を制限する場合の多い特定の試験対象患者基準および除外基準を修正するよう提言した。また、ASCOおよびFriendsは本プロジェクトを通じてFDAと密接に連携をとった。

 

2017年10月、両団体はこれら5つの特定領域の適格基準への対応を提言すると同時に、がんの臨床試験の適格基準の包括的調査について共同研究書を発表した。これら提言の実施を手助けするため、次にASCOおよびFriendsは5つの領域の適格基準の枠を拡大する根拠および方法を記載した指針書を作成した。

 

脳転移:脳転移の発生率は特定のがんにおいて上昇しつつあり、特に黒色種、肺がんおよび乳がん患者に影響が及ぶ。臨床試験から患者を除外することは特定のがん患者の半分から1/3を失う可能性があることを意味する。

 

HIV/AIDSB型およびC型肝炎:HIV/AIDS、B型およびC型肝炎の治療をしている患者がより多く試験に参加できるよう適格基準を広げることは多くの場合に正当化され、これら慢性ウイルス感染症の患者に効果的ながん療法の開発を促進する可能性がある。

 

年齢制限:がんの分子的原因および小児がんと成人がんにおけるその原因の共通点を十分に理解することにより、がんの臨床試験の初期に子供を参加させる根拠が得られる。加えて、成人に広範囲にわたる試験を実施した後に順調に臨床試験を実施しても、潜在的に期待の持てる新たな療法が小児患者に至るまでには時間がかかる。

 

臓器機能不全:臓器機能不全の患者は薬物代謝や浄化機構にかかわらず臨床試験から除外される場合が多い。しかし、一般集団が加齢化するにつれ、がんに至る腎疾患、肝機能異常および心疾患の患者数が増加する。薬剤が直接特定の臓器に影響しない場合または臓器機能不全が薬物代謝や浄化機構に直接影響しない場合、臓器機能の弱い患者は試験に参加できる場合がある。さらに、薬剤開発中に毒性データが入手可能になり、安全性評価基準が確定された場合、臓器機能障害の患者を参加させるためプロトコルは改正されるべきである。

 

過去のまたは現在併発している悪性腫瘍:過去または現在併発している(共存症)悪性腫瘍の患者数が増加している。悪性腫瘍または共存症が過去に発症または現在併発している個人を除外すると、高齢患者の試験への参加が阻害される場合がある。

 

ガイドライン案をまとめ、一般意見聴取のための公開をするにあたり、FDAはASCOおよびFriendsの提言を検討する予定である。ASCOおよびFriendsはガイドライン案にコメントが可能になり、コメント提出したのち発表を行う。

 

提出した指針書の全文はこちら

翻訳松長愛美

監修小宮武文(腫瘍内科/トゥーレーン大学)

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