凍結手袋(frozen glove)の使用によりドセタキセル化学療法による皮膚と爪への損傷を軽減 | 海外がん医療情報リファレンス

凍結手袋(frozen glove)の使用によりドセタキセル化学療法による皮膚と爪への損傷を軽減

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凍結手袋(frozen glove)の使用によりドセタキセル化学療法による皮膚と爪への損傷を軽減

Frozen Glove Reduces Skin and Nail Damage from Docetaxel Chemotherapy
(Posted: 08/01/2005)ドセタキセル(タキソテールR)の静注投与中、手を非常に低温に保つよう凍結手袋(Frozen Glove)を付けた患者は、その後の手の皮膚や爪のダメージが顕著に少なかったことがthe Journal of Clinical OncologyのJuly 1, 2005号で報告された。


要約
あるフランスの試験によると、ドセタキセル(タキソテールR)化学療法の静脈内投与受ける際、試験的な「凍結手袋(frozen glove)」を着用して手を非常に冷たくしておいた患者では、その後に手の爪や皮膚に生じる損傷が非常に低減されていました。

出典  Journal of Clinical Oncology, July 1, 2005 (ジャーナル要旨参照)。

背景
ドセタキセルはタキサン系化学療法剤に区分されます。タキサン類は癌細胞が増殖するのを抑止し、広範囲の癌に対して有効です。ドセタキセル投与を受ける人の約半数に「手足症候群」として知られている副作用が生じます。これは、比較的軽度な、しびれてチクチク痛む感じから、痛みを伴って皮膚が剥けたり水疱ができたりするものまであります。

ドセタキセルには、爪に問題を起こす副作用もあります。患者の約40%において、爪がもろくなったり変色したりします。約3%では爪が感染して剥がれ落ち始めることさえあります(爪甲離床症)。

多くの場合、このような副作用は美容的問題にとどまるのですが、時には痛みがひどくて患者が治療をやめたり中断したりしてしまうこともあります。ドセタキセルは、乳癌、肺癌、前立腺癌など多数の癌治療用薬として米国医薬品局(FDA)が承認しており、そのため毎年何千人もの患者にこのような副作用が起こる危険性があるのです。

頭皮を冷やして行う治療法(凍結療法)は化学療法後の脱毛を軽減するためにすでに行われています。爪や皮膚への化学療法による損傷を冷却することによってどのように防ぐことができるのかは正確にはわかっていませんが、低温にすることによってこれらの組織に到達する薬物量が少なくなるということを示唆する試験がいくつかあります。

試験
今回の第2相多施設試験には、さまざまな異なるタイプの癌治療のためにドセタキセル投与を受ける予定の45症例を、2002年から2003年の間にフランスの研究者が登録しました。本試験登録前にタキサン治療を受けたことのある患者はいませんでした。また、手の爪や皮膚に問題のある患者もいませんでした。

すべての症例が、右手にElasto-Gel フレキシブル手袋(フランスAkromed社製)を着用しました。この手袋は、親指だけが離れていて、4本指はまとめて入れるミトンのような形で手を覆うものです。冷却によって得られた低温状態は手袋内のグリセリンにより保たれます。手袋はおよそ-30℃(-22?)で3時間以上冷却を行いました。患者は、ドセタキセル静脈内注射を1時間実施する間とその前後それぞれ15分間の計90分間冷凍手袋を着用しました。投与の中間(45分時点)で、患者は新しい手袋を着用し、冷却レベルが持続するようにしました。冷却した手の爪および皮膚に生じた変化を、手袋で保護しなかった左側の手と比較を行いました。

本試験はパリのthe Georges Pompidou European Hospital のFlorian Scotte 氏が実施しました。

結果
凍結手袋で保護した側の患者の手は、保護しなかった側の手と比較して皮膚および爪に生じた問題は少なく、また程度においてもより軽度ですみました。手袋をはめた手では89%において爪には問題が生じませんでしたが、保護しなかった側の手では49%でした。爪甲離床症とは爪が指から剥がれるものをいいますが、保護した手においてはこれは起こりませんでしたが、保護しなかった手では22%に生じました。これらの結果はすべて統計学的に有意なものでした。

手袋をはめた手の3分の2(67%)において、皮膚の問題は認められませんでした。軽微な皮膚の問題が保護しなかった手の44%に生じましたが、手袋をはめた手では22%に過ぎませんでした。重篤な皮膚の問題は、保護しなかった手では9%、手袋をはめた側の手では2%に生じました。この場合にも、結果はすべて統計学的に有意なものでした。

研究者達は患者に、冷たさと手袋による制約がどの程度耐えられるものであるかを、その他の「快適さ」に関する要素と合わせてたずねました。回答のあった43例のうち、37例(86%)が治療に満足したと答えましたが、6例はそうではありませんでした。このうち5例は試験を中止しました。

コメント
今回のような支持療法の臨床試験は、化学療法やその他の治療法による副作用に焦点を当てたものが多く、癌患者のQOLを改善できる可能性のある医療行為を調べるものです。NCIのCommunity Clinical Oncology ProgramのAnn O’Mara, Ph.D., R.N. 氏は、「試験は極めて直接的であり、結果は特筆すべきものであった。この試験は脱毛症(毛髪の喪失)を防ぐために冷却療法を用いることをその基礎としている。これは非常に有望であり、より大規模な試験が続いて行われることを期待している。」と、述べました。

制限事項
凍結手袋は皮膚よりも爪の保護に対してより有効でしたが、O’Mara氏は「臨床の場でより大きな痛みを伴うことが多いのは手足症候群と皮膚の問題なのです。」と述べました。3週間の治療後数週間、あるいは数ヵ月間もの間、患者は手のひらを保護している皮膚を失い、著しく耐えられない状態になり、相当の痛みを感じることもあり得るのです。

O’Mara氏はまた、患者が手袋のつけ心地に満足したかどうかをたずねる際に、より有意義なつけ心地の測定指標があったのではないか、と述べました。痛みと機能性はどちらも患者にとって重要な側面であり、この論文で述べられている「限定された満足度の測定指標をはるかに超えたものである」と、述べました。

皮膚細胞を冷却することによって化学療法剤が癌を駆逐するのを妨げたり、あるいは細胞内における化学療法剤の代謝を変えてしまうかもしれないといった懸念を表明する研究者もいます。しかし、皮膚転移(もとの腫瘍から皮膚へ癌が広がること)が手の近辺では起こりにくいことを考えれば、この懸念は凍結手袋療法にはおそらくあてはまらないであろう、とO’Mara氏は述べました。

(しげどん 訳・Dr.榎本 裕(泌尿器科) 監修)

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