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ビタミンDが一部のがんのリスクを下げる可能性(国立がん研究センター発表)

「日光に当たるとがんリスクが20%低下する可能性がある」とDaily Telegraph紙は報道する。

太陽光ビタミンと呼ばれるビタミンDの血中濃度が高い人はがんと診断されることが少ないかどうかを日本の研究者が調査した。

ビタミンD濃度が最も高い群は最も低い群と比較して全がんリスクが22%低いことを明らかにした。

また部位別がんリスクについてもデータを観察し、ビタミンD濃度が最も高い群は肝がんのリスクが最も低いことを明らかにした。

この研究はかなり大規模なもので、7,345人から得た調査結果が含まれている。ビタミンD濃度を一回測定し、平均15年間の追跡調査が行われた。

ビタミンDは日光に当たると皮膚で生成され、脂肪分の多い魚、卵黄および赤身肉にも含まれている。

ビタミンDはサプリメントとしてさまざまな場所で入手可能であり、骨を強く保つ効果があることで知られている。サプリメントは、奨励用量で摂取している限り非常に安全だと考えられている。

人口全体のうちビタミンDを十分に摂取できないおそれのある集団もあり、ビタミンDサプリメントを毎日摂取するよう奨励されている。

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本記事のもとになった研究

日本、国立がん研究センター、滋賀医科大学、およびビタミンD測定検査を提供する富士レビオ株式会社のチームが、他の医療検査と併せて本研究を実施した。

本研究は国立がん研究センター、厚生労働省、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業による助成を受けて実施された。

本研究はオープンアクセスのピアレビュー誌、British Medical Journal誌に発表されており、ウェブ上で無料で閲覧できる。

Mail Online(英国タブロイド紙電子版)の見出しには、「ビタミンD濃度が増加すると肝がんのリスクが最大で50%減少する」という最も人目を引く統計だけが掲載されているが、英国メディアの報道は妥当である。

Mail Onlineはまた、ビタミンDの効果は女性よりも男性で顕著に現れると報じたが、この内容は男女間で「有意な効果はみられなかった」という研究結果と正面から相反する。

 

研究手法

本研究はケース・コホート研究である。ケース・コホート研究とは、対象の転帰(本件の場合はがん)を有する研究コホートの全参加者と、比較対象の他のコホートの代表的なサンプルとを組み入れる研究手法である。

この手法により、研究者は非常に大規模な初期コホートのデータを組み入れる必要がなくなり、対象の転帰の調査に注力できる。

コホート研究により、ビタミンDとがんのような要因間の有益な関連性は確認できるが、ある要因が別の要因を直接引き起こす原因となることは証明できない。

研究の参加者

研究者らは、140,420人が参加した大規模な日本の公衆衛生学的調査から得た情報を使用した。

40~59歳の成人が1990年および1993年に参加の案内を受け、2009年末まで追跡調査が行われた。

研究開始時、参加者は自分の健康や生活様式についてのアンケートに回答し、血中ビタミンD濃度が測定された。

試験中にがんと診断され、データが使用可能な参加者を選択した(3,301人)。

次に、試験中にがんと診断されなかったコホートから、データが使用可能な4,044人を無作為に選択した。

ビタミンD濃度により全参加者を4分位に分けた。

ビタミンD濃度が最も低い群と比較してがんと診断される可能性がどの程度か調査した。

ビタミンDは、春、冬よりも夏、秋に濃度が高くなる。そのため、測定した時期を考慮してビタミンDの測定値を調整した。

また、以下を考慮して数値を調整した。

・年齢

・性別

・肥満度指数(BMI)

・余暇時の運動

・喫煙

・飲酒

・がんの家族歴

・糖尿病歴

乳がん、卵巣がんおよび子宮がんの分析では、下記を考慮して数値を調整した。

・女性の初潮年齢

・出産した子供の人数

・女性ホルモン剤の使用

・閉経状態

・閉経年齢

基本的な結果

ビタミンD濃度が最も高い群はがんを発症する可能性が低く、最も低い群と比較してがんと診断される可能性が22%低かった(hazard ratio (HR) 0.78, 95% confidence interval (CI) 0.67 to 0.91)。

胃がん、大腸がん、前立腺がんなど部位別にがんを調査したところ、ビタミンDとがん罹患率の低さとの間に統計的に有意な関連はなかった。

しかし肝がんだけは例外で、リスクに統計的な有意差が確認された。

ビタミンD濃度が最も高い群は、最も低い群と比較して肝がんと診断される可能性が55%低かった(HR 0.45, 95% CI 0.26 to 0.79)。

しかし、信頼区間の幅が広いことからもわかるように、この結果には不確実性が存在する。

閉経前の乳がんはビタミンD濃度の影響を受ける可能性があるというエビデンスを確認したが、エビデンスの数が少なく、この結果が偶然の所産ではないことを確証できなかった。

興味深いことに、全体のがんリスクの差は、ビタミンD濃度の最も低い群と二番目に低い群との間で最も大きかった。

ビタミンD濃度の最も高い群は、その次に高い群に比べて改善がみられなかった。つまり、一定濃度以上であれば、ビタミンD濃度が増加してもがんリスクは低下しないことを示唆している。

結果の解釈

ビタミンDはがんリスクを下げる可能性があるという仮説を研究結果は裏づけていると研究者は述べている。

また、今回の結果は「天井効果」を示しているようであり、がんを防ぐビタミンDの最適量を明らかにするにはさらに多くの研究が必要であると述べた。

結論

タミンDがカルシウムの吸収を助け、骨を強くするという既知の効果に加え、がんを防ぐ可能性があることを支持するエビデンスが本試験により示された。過去の研究は一貫性がなく、結果も不明瞭であった。

しかし、今回の研究結果も決定的なものではなく、次のような多くの制約があった。

・試験は日本で実施されたが、ビタミンD濃度は地域だけでなく民族によっても異なる。

・研究結果はとりわけ日本国外の人に関連がない可能性がある。

・この研究はビタミンD濃度を一回しか測定していない。ビタミンD濃度は時間と共に変化する可能性がある。

・コホート研究は、ある要因が別の要因を直接引き起こす原因となること(因果関係)を証明できず、研究者は潜在的な交絡因子すべてを考慮していない可能性がある。

英国のガイドラインでは、英国で日光から十分にビタミンDを得るのがむずかしい秋と冬にビタミンDを摂取することを提案しているが、年間を通してビタミンDを摂取すべき人も存在する。

ビタミンDサプリメントを摂取すべきかどうかについての詳細はこちら。(英語)

 

(参考)★ 国立がん研究センター 多目的コホート研究
2018/03/08 血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについて-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果-

 

 

翻訳松長 愛美

監修大野 智(補完代替医療/大阪大学・帝京大学)

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原文掲載日

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