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腫瘍の遺伝子変異に応じた治療により、さまざまながんの生存率が改善

ASCOの見解

「分子標的薬治療が最初に導入されて20年が経過しました。最初の『プレシジョン医療』となったこれらの療法はがん治療に革命を起こし、多くの患者の延命に役立ちました。しかし、それは革命のほんの始まりにすぎません。今や遺伝子検査はより迅速かつ確実になり、腫瘍の出現部位だけではなく、その遺伝的構成に基づいてがんを治療することで、さらに多くの患者を助けることができます」とASCO専門医のCatherine Diefenbach医師は述べた。

 

研究者らは、大規模な個別化医療試験に参加した進行がん患者を対象として、継続的な前向き分子プロファイリングを行い、それらの患者について後ろ向き解析を実施した。腫瘍の分子検査を用いて分子標的薬を選択した結果、多様ながん種で腫瘍の増殖が緩徐になり、生存期間が延長することを見出した。腫瘍に少なくとも1つの遺伝子変異を有する患者1,307人のうち、3年全生存率は、適合する分子標的薬治療を受けた患者群で15%であったのに対して、適合しない治療を受けた患者群では7%であった。10年全生存率は適合治療群が6%であったのに対して、非適合治療群では1%であった。治療開始から3.2年の時点から、適合治療群の全生存率は横ばいであった(11%の患者が生存)。

 

研究参加者のうち適合治療を受けた患者の大半は臨床試験中の治験薬の投与を受け、一部の患者は、臨床試験の一環として別の適応症でFDA承認された市販の分子標的薬の投与を受けていた(適応外治療)。

本研究は本日の記者会見で取り上げられ、2018年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

 

「これは、プレシジョン医療が多様ながんの生存率におよぼす影響を評価するために最長の年月をかけてフォローアップを行なう、最初にして最大規模の研究です」と筆頭研究著者のApostolia Maria Tsimberidou医師(医学博士、終身教授、ヒューストンのテキサス大学MDアンダーソンがんセンター在籍)は述べた。「次世代シークエンシングを用いた腫瘍の分子検査は治療の最適化に使用できる可能性があること、治療が困難ながん患者の治療法を選択する際に考慮に入れるべきであることを、われわれの知見は示しています」。

 

研究について

難治性がん患者の腫瘍の分子検査に基づいて選択された個別化医療の効果を評価するために、2007年、IMPACT(Initiative for Molecular Profiling and Advanced Cancer Therapy:分子プロファイリングおよび進行がん治療のためのイニシアチブ)臨床試験が開始された。本研究の対象となった患者は、標準治療を受けても増悪した進行がん患者であった(一部の患者は、16回も前治療を受けていた)。希少かつ治療法のないがんと新規診断された患者はごく少数(2.8%)であった。最も多いがん種は、胃がん、婦人科系がん、乳がん、メラノーマ、肺がんおよび甲状腺がんであった。

 

研究の初期には、腫瘍について個々の遺伝子の変異を解析していたが、研究の終盤(2013年末まで)には、次世代遺伝子シークエンシングを用いて20~50種類の遺伝子を一度に解析した。分子検査を受けた3,743人の患者のうち、1,307人の腫瘍に少なくとも1つの遺伝子変異が見つかった。うち711人の患者は、腫瘍の生物学的特徴に適合した治療(例えば、変異または転座した遺伝子機能を遮断する薬剤)を受け、596人の患者は、腫瘍でみつかった遺伝子変異に適合しない治療を受けた(当時、その患者に適合する治療がなかったため)。適合治療には、単剤分子標的薬療法、化学療法との併用による適合分子標的薬治療などの治療が含まれた。

 

主な知見

適合分子標的薬治療群の全生存率は、開始から3.2年の時点から横ばいであった(11%の患者は生存)。適合分子標的薬治療は、全生存期間の延長を予測する独立因子であることが多変量解析で判明した。3年全生存率は適合治療群では15%であったのに対し、非適合治療群では7%であった。 10全生存率は適合治療群で6%であったのに対し、非適合治療群で1%であった。全生存期間中央値は適合治療群の9.3カ月に対して非適合治療群7.3カ月、がんが増悪するまでの無増悪生存期間中央値は適合治療群4カ月に対して非適合治療群2.8カ月と、適合治療群の方が長かった。

 

研究者らは、ベースライン特性に基づき患者の全生存期間を予測する予後スコアを作成した。 1,307人の患者のベースライン特性を考慮すると、PI3K / AKT / mTOR経路における分子変異は、他の変化と比較して、全生存期間がより短期であることを予測する独立因子であった。生存期間の短縮を予測する独立因子は他に、肝転移、乳酸デヒドロゲナーゼ濃度の上昇、機能不良状態、アルブミン値の低下、血小板数の上昇、および年齢60歳以上であった。

 

次の段階

現在進行中の追跡調査研究IMPACT 2は、腫瘍の分子特性に適合する分子標的薬治療を受ける患者と、腫瘍の分子解析に基づいて治療法が選択されていない患者の無増悪生存期間を比較するランダム化第2相臨床試験である。 Tsimberidou氏は、次世代シークエンシングを用いたプレシジョン医療、免疫機能、および免疫療法などの新薬の導入は、がん患者の臨床転帰を有意に改善する見込みがあると述べた。

 

本研究資金として以下の寄贈者からの寄付を受けた:Alberto Barretto氏、 Jamie Hope氏、および Zane W. Arrott夫妻

 

研究の概要

疾病名

複数種類のがん

研究のタイプ

後ろ向き解析

患者数

3,700人強

研究対象

適合分子標的薬治療対非適合治療

主要所見

奏効率、全生存期間、および無増悪生存期間は、腫瘍遺伝子変異に適合する治療で改善した。適合分子標的薬治療群の全生存期間は3.2年の時点から横ばいであった(11%が生存)。

副次的所見

適合分子標的薬治療における最良転帰。非PI3K/AKT/mTOR経路異常における最良転帰

 

 

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翻訳佐藤美奈子

監修花岡秀樹(遺伝子解析/サーモフィッシャーサイエンティフィック)

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