思春期/若年白血病(ALL)患者には小児向け環境またはNCI指定がんセンターでの治療が有益

成人向け環境で治療を受けた思春期/若年成人(AYA世代)ALL患者の生存は不良

最新の米国血液学会誌「Blood Advances」に示されたレトロスペクティブ分析によると、急性リンパ性白血病(ALL)の思春期/若年成人は、成人用の施設での成人向けの治療に比べて、小児用の環境で小児向けの治療を受けた場合のほうが優れた生存上の利益を得た。

15〜39歳の思春期/若年成人ALL患者は、小児向けのがん環境で治療を受けることも、成人向け環境で治療を受けることもある。しかし、小児向けの環境で初回治療を受けた思春期/若年成人ALL患者のほうが、成人向け環境の場合よりも優れた全生存を示した(ハザード比0.53、95%信頼区間 0.37-0.76)(国立がん研究所(NCI)/小児腫瘍学グループ(COG)と成人向け環境との比較では、ハザード比 0.80、95%信頼区間 0.66-0.96)。

多変量解析により、白血病特異的生存率でも統計的に有意な小児環境での治療の優越性が示され、成人向け環境に比べた小児環境でのハザード比0.51、95%信頼区間0.35-0.74、成人向け環境に比べたNCI / COG施設の白血病特異的生存率のハザード比  0.80、95%CI 0.65-0.97であった。

米国パロ・アルトにあるスタンフォードヘルスケアの腫瘍内科医であるLori Muffly医師らは、California Cancer Registryの2004~2014年までのデータを使って、思春期/若年成人のALL患者の治療と転帰のパターンを調査した。対象期間にALLと診断された思春期/若年成人について、社会人口学、治療場所、行われた初回治療を評価した。またCOX回帰モデルを使用し、15~39歳の思春期/若年成人の全コホート、思春期/若年成人のうち25歳未満のコホート、そして成人向けがん環境のみで治療を受けた思春期/若年成人の全生存率及び白血病特異的生存率とALL治療法、施設、治療法との関連を特定した。

思春期/若年成人に対するがん治療には大きなばらつきがあり、小児向けの治療が推奨されているにも関わらず、多くの患者が成人向け施設で成人向けのがん治療を受けている。

思春期/若年成人(AYA世代)のALL患者は、しばしば小児向けと成人向けがん治療の狭間に入り、小児向けがんセンターを紹介される場合も成人向けのがんセンターを紹介される場合もあり得る。さらに、多くの総説、社会のガイドライン、思春期/若年成人のがんに関する情報で小児向けの治療法が推奨されているにも関わらず、思春期/若年成人のALL患者が成人向けの施設で治療を受けた場合、小児向けまたは成人向けのどちらのALL一次治療法も使用される可能性がある。

この分析における1473人の患者の診断時の年齢中央値は22歳で、うち32.3%が15~18歳で、25歳未満が56.8%を占めた。コホートの3分の2が男性で、63.7%がヒスパニック系の人種・民族であった。

患者の過半数(67.7%)は、成人向けのがん環境で治療を受けていた。成人向けの環境で治療を受けた患者のうち、初回治療で小児ALL向けの治療法が使用されていたのはわずか4分の1(24.8%)で、40.7%の患者はNCI指定の施設で治療を受けていた。治療は明らかに年齢によって異なり、15~18歳の思春期/若年成人患者は86.9%、19~24歳では16.0%が、小児向け治療を受け、25~39歳の思春期/若年成人は、98%以上が、成人環境で治療を受けていた(p<0.001)。

小児向け治療で治療を受けた思春期/若年成人の割合は、研究期間中に有意に増加しており、2004~2007年には27.3%であったのに対し、2012~2014年には34.9%とであった(P=0.002)。

成人施設にて治療を受けた場合、一次治療が成人向けであっても小児向けであっても転帰にあまり違いはなかった。

成人施設で治療を受けている思春期/若年成人では、小児患者に適した初回治療を行うことでの生存は改善しなかった。成人環境にて治療を受けた思春期/若年成人世代の転帰は小児または成人のALLの初回治療の後でも違いは見られなかった。ハイパーシクロホスファミド、ビンクリスチン硫酸、アドリアマイシン、デキソメタゾンからなる成人向けレジメンを適用された思春期/若年成人世代と小児ALL向けレジメンを適用された思春期/若年成人では、全生存率(ハザード比0.83、95%CI0.58-1.20)または白血病特異的生存率(ハザード比:0.99、95%CI:0.66-1.47) に有意差は見られなかった。

これらの知見は、AYA世代のALL患者には、小児の環境とNCI/COG指定のがんセンターにおいて初回治療が検討されるべきであることを示唆し、思春期/若年成人ALL患者にとって有意な生存の改善には、小児環境での治療が関連していることを示している。

成人向けがん環境における小児ALL患者向け治療による長期的な生存上の利益は生存している患者の追跡期間の中央値が2.3年と短かかったため、限定的なものであった。また、造血細胞移植と転帰への影響など、継続治療を確実に追跡することができなかった。

情報開示

外部の資金提供は公開されなかった。

参考文献

Muffly L, Alvarez E, Lichtensztajn D, et al. Patterns of care and outcomes in adolescent an@d young adult acute lymphoblastic leukaemia: a population-based study. Blood Advances 2018; 2:895-903. doi: https://doi.org/10.1182/bloodadvances.2017014944

翻訳担当者 池上紀子

監修 北尾章人(腫瘍・血液内科/神戸大学大学院医学研究科)、

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