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短時間作用型カルシウムチャネル拮抗薬(降圧剤)は閉経後女性の膵がんリスク上昇と関連

米国がん学会(AACR)

カルシウムチャネル拮抗薬(CCB)の中でも特に短時間作用型のCCBは高血圧の治療のために処方されるが、閉経後女性の膵臓がんリスク上昇を伴うことが明らかとなり、2018年4月14~18日に開催された米国がん学会(AACR)の年次総会で発表された。

 

「膵臓がんは米国のがん関連死亡原因の第4位で、2018年の死亡者数は44,330人と推定されています」と、NCI指定がんセンターであるベイラー医科大学Dan L Duncan総合がんセンター(ヒューストン)の博士課程修了研究員であり、本研究の筆頭著者であるZhensheng Wang医学博士は言う。本研究はベイラー医科大学医学部准教授Li Jiao医学博士主導の研究室で実施され、Jiao医師が本研究の試験責任医師を務めた。

 

「膵臓がんは通常、高血圧などの慢性的併発疾患も有する高齢者に生じます」とWang医師は述べた。「降圧薬の使用は著しく増加しています。そのため、一般集団における降圧薬の使用と膵臓がんリスクとの潜在的な関連に注意を向けることは疫学上大きな意義があります」。

 

本研究は、降圧薬および終末糖化産物受容体(sRAGE)という受容体が膵臓がんリスクにいかに影響するかの評価を目的とした。過去の研究では、sRAGEには体内での抗炎症作用があり、膵臓がんリスクの低下に関係することが示唆されていた。降圧薬はsRAGE濃度を上昇させることが分かっているため、研究者らは降圧薬の使用と膵臓がんリスクの間に逆相関がある可能性があるという仮説を立てた。

 

「しかし、短時間作用型のカルシウムチャネル拮抗薬(CCB)を使用している人の間で予想外の膵臓がんリスク上昇がみられたのには驚きました」とWang医師は述べた。

 

彼らは、1993~1998年に実施された長期的な全国健康調査Women’s Health Initiative(女性の健康イニシアチブ、WHI)に登録された50~79歳の閉経後女性145,551人を対象とした前向きコホート研究を実施した。女性たちが服用していたあらゆる薬剤について、製品名、一般名、使用期間、剤型などのデータを収集した。ベータ遮断薬、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)およびカルシウムチャネル拮抗薬(CCB)の4種類の降圧薬を分析し、コックス比例ハザード回帰モデルを用いて、4種類の薬剤の膵臓がんリスクとの関連についてのハザード比を算出した。

 

2014年8月29日までに、研究者らは対象女性のうち841人の膵臓がん患者を確定した。研究対象女性に対して、研究者らは免疫測定法を用いて、膵臓がん患者489人およびがんに罹患していない対照群977人のsRAGEの血清レベルを測定した。

 

短時間作用型CCBの利用歴がある女性では膵臓がん発現率が66%高くなるリスクが認められた。短時間作用型CCBの投与を3年以上受けた女性は、CCB以外の他の降圧薬の投与を受けた女性と比較して膵臓がんリスクが107%高くなることが分かった。

 

CCBの中でも特に短時間作用型CCBは、膵臓がんリスクの上昇に関与する唯一の降圧薬であった。ACEi、ベータ遮断薬、利尿薬、長時間作用型CCBの使用歴は、膵臓がんリスク上昇に関与していなかった。

 

本研究ではまた、短時間作用型CCBの使用歴がある女性は、他の降圧薬を投与された女性よりもsRAGEレベルが著しく低かったことがわかった。「sRAGEは、炎症促進性のRAGEシグナルを阻害することにより炎症反応を緩和すると考えられます」とJiao医師は説明する。

 

著者らの説明によれば、これらの知見を確認し、機序を理解するためには、さらなる研究が必要であるが、「CCBの使用により生じるカルシウムチャネルの遮断によってsRAGEの放出が抑制され、そのため抗炎症性sRAGEのレベルがさらに低下する可能性があります。慢性炎症が、他の多くのがんと同様に膵臓がんのリスク要因であることはよく知られているため、このことは重要です」。

 

「短時間作用型CCBの使用および膵臓がんリスクに関するわれわれの知見は新しく、事実であると確認されれば医学的かつ疫学上の広範な潜在的意義があります。短時間作用型CCBは、メタボリックシンドロームの構成要素の一つである高血圧を抑制するために今も処方されています。メタボリックシンドロームは膵臓がんのリスク要因である可能性があります」とWang医師は述べた。

 

Jiao医師は、本観察研究が米国の閉経後女性を対象に実施したものであるため、その結果は男性、閉経前女性、または米国外の集団には汎用化できない可能性があることを指摘した。未調整の交絡因子または残余交絡因子もこの知見の一因となっている可能性がある。

 

本研究は、国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立がん研究所の助成(5R01CA172880-03)およびHouston VA HSR&D Center for Innovations in Quality, Effectiveness and Safetyの助成(CIN13-413)を受けた。Wang医師はCancer Prevention and Research Institute of Texasの研究養成助成金による支援を受けており、WHIプログラムはNIHの一部である米国国立心肺血液研究所からの助成を受けている。著者らは利益相反がないことを宣言している。

翻訳太田奈津美

監修稲尾 崇( 呼吸器内科/天理よろづ相談所病院 )

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