ペムブロリズマブと化学療法の併用が転移性NSCLC患者の生存期間を延長

転移性非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)と新たに診断された患者において、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)と化学療法の併用療法を受けた患者では、化学療法のみを受けた患者と比較して全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)が有意に延長されたことが、4月14日から18日の2018年米国がん学会年次総会で発表された第3相臨床試験KEYNOTE-189のデータで示された。

本試験は、同時にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

「進行非小細胞肺がんの長期的生存率は今も低く、ほとんどの患者さんの標準治療は化学療法であり、生存期間を月単位で延長できる余地があります」と、ニューヨーク大学ランゴン・ヘルス、パールマターがんセンターの内科学准教授であり、胸部腫瘍内科プログラム責任者であるLeena Gandhi医学博士は述べた。

2017年5月、米国食品医薬品局は、第2相KEYNOTE-021試験のコホートGのデータに基づき、進行性非扁平上皮非小細胞肺がんの一次治療として、ペムブロリズマブを、ペメトレキセドとカルボプラチンを用いた化学療法との併用において承認した。しかし、第3相試験からの確実な結果が得られていなかったため、この治療は、広くは実施されなかったと、Gandhi博士は言う。「また、第2相試験では当初、高い生存率は示されませんでした」と、付け加えた。

「KEYNOTE-189試験の結果は診療の実態に変化をもたらすものです。今回の第3相試験では、PD-L1の発現にもかかわらず、全患者群で全奏効率の改善、および無増悪生存期間と全生存期間の延長が証明され、死亡リスクが半減しました。上皮成長因子受容体(EGFR)および未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の変異のない進行非扁平上皮非小細胞肺がんの一次治療では、これほどの治療効果は過去に例のないものです」とGandhi博士は述べた。

KEYNOTE-189試験は、転移性非扁平上皮非小細胞肺がんで、転移に対する治療を受けていない患者を対象としたランダム化二重盲検第3相試験である。患者616人が、ペメトレキセドおよびプラチナ製剤を用いた化学療法にペムブロリズマブを併用する群(被験群)、またはプラセボを併用する群(対照群)に2:1の割合で無作為に割り付けられた。患者は、PD-L1発現陽性細胞の割合を示すスコア(1%未満か1%以上か)で層別化された。

追跡期間中央値10.5カ月の時点で、全生存期間の中央値は対照群で11.3カ月であったのに対し、被験群では未達であった。死亡リスクは、対照群に対して被験群で51%低く、PD-L1高スコアグループにおいては58%低かった。

無増悪生存期間の中央値は、対照群で4.9カ月であったのに対し、被験群では8.8カ月であった。

対照群の患者には、疾患進行が認められた場合、クロスオーバー(乗り換え)にて、ペムブロリズマブの投与が認められた。Gandhi博士は次のように述べた。「PD-1/PD-L1阻害剤を疾患後期に使用するよりも、早い段階で併用投与するほうが、より良好な結果が得られる可能性があると思われます。これは、50%の乗り換え率にもかかわらず、明らかに生存が良好であったことから示唆されます」。

さらに、「毒性は、急性腎障害の発現率が被験群で高かったこと(5.2%、対照群では0.5%)を除いては予想通りでした」と付け加えた。有害事象による全治療の中止率は、対照群で7.9%であったのに対し、被験群では13.8%であった。免疫関連の有害事象の発現率は、対照群で11.9%であったのに対し、被験群では22.7%であった。

本研究の限界として、PD-L1高発現患者における治療の有効性は、ペムブロリズマブ単独投与、もしくは化学療法とペムブロリズマブの併用投与のどちらが高いのかを評価するようには試験がデザインされていなかったという点があげられる、とGandhi博士は述べ、さらに「本試験の対照群の結果はいくつかの歴史的対照群ほど良くはありませんでしたが、本試験は厳密なランダム化比較試験で、確かに2群間に明らかな差が認められています」と述べた。

本試験はMerck社主導試験である。Gandhi博士は、Merck社、Genentech/Roche社、Syndax社、Ignyta社、AstraZeneca社の科学諮問委員を務め、Merck社より研究資金の助成を受けている。

翻訳担当者 竹原 順子

監修 稲尾 崇(呼吸器内科/天理よろづ相談所病院)

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