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リンチ症候群検出率を上げる先進ゲノム検査

単回先進ゲノム検査が、従来型の複数回検査法よりも大腸がん患者のリンチ症候群の検出において効果的である。この臨床データは、オハイオ州立大学総合がんセンターのArthur G. James Center Hospital and Solove Research Institute(OSUCCC-James)により報告された。

 

研究者らによれば、こうした先進遺伝子検査を診断時に実施すれば、多くの大腸がん患者の治療方法決定の指針となり、治療促進に役立つと同時に、リンチ症候群の可能性が高い大腸がん患者を特定することができる。リンチ症候群はがんを発症しやすい体質であり、DNA修復遺伝子の1つに遺伝性変異をもつ人に発症する。リンチ症候群の人は、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、胃がんなどのがんが発症する可能性が通常よりかなり高い。

 

この研究の目的は、リンチ症候群の有無の判定に一般に用いられている現行の複数検査法の代わりに、単回検査で複数種の変異を検出する先進腫瘍シーケンシング手法を利用できるかどうかを確認することであった。

 

この目的のため、研究者らは「オハイオ大腸がん予防イニシアチブ(OCCPI)」に参加した大腸がん患者419人の腫瘍サンプルを分析した。OCCPIは、新たに大腸がんと診断された患者とその血縁者がリンチ症候群であるかどうかを調べる全州的研究調査である。

 

OCCPI研究参加者全員から腫瘍サンプルを採取して、従来の複数検査による遺伝子検査法と、単回検査による先進ゲノム腫瘍シーケンシング検査法により分析した。後者の単回検査法では、1個の腫瘍サンプルで複数種の変異について同時に分析した。

 

2つの検査法の結果を比較したところ、先進腫瘍シーケンシング法が従来の複数検査法よりもリンチ症候群検出において感度が高く、より特異的な情報が得られることが分かった。腫瘍シーケンシング法では、リンチ症候群検出率が10%上昇したうえに、患者の治療選択肢に関する重要な情報も提示された。

 

この研究結果は、医学雑誌JAMA Oncology誌2018年3月29日号で報告されている。

 

「従来の検査方法では、リンチ症候群の疑いを指摘するだけで、複数の検査を追加して行わなければ診断を確認できないため、診断プロセスが滞り、費用がかかります」と、Heather Hampel 氏(MS、認定遺伝カウンセラー、本研究の責任著者、OCCPI主任研究員)は言う。「この新手法では、患者の先天性変異を1回の検査で正確に示すことができます。その変異は血液検査で確認する必要がありますが、新手法で必要な1回の変異検査は、複数遺伝子パネル検査よりも安価です。従来の方法では、リンチ症候群の有無の判定までに、患者は多い場合には5回も検査を受けなければならないこともあります」。

 

本研究では、新規検査法の想定外の利点もいくつか示された。例えば、DYPD変異を有する患者8人(1.7%)が特定された。この変異がある患者は、大腸がん治療に最も広く使用される化学療法である5-FU化学療法に対して重度の毒性反応を起こしやすい。また、別の患者8人は、さまざまな遺伝性がん感受性遺伝子に変異を有することが判明し、これは患者とその家族にとって重要な情報である。

 

「こうした情報を事前に知っていれば、腫瘍専門医はそうした有害反応を回避するために別の薬剤を選んだり、低用量で投与したりできるため、有益と思われます。さらに、この検査では、他の既知のがん感受性遺伝子を同時に調べることによって、他の潜在的遺伝性がん症候群を識別することもできます」とHampel氏は述べた。

 

先進腫瘍検査法を利用して、進行期大腸がん患者の治療選択肢決定に役立つ3つの遺伝子(BRAF、KRAS、NRAS)の変異を正確に検査できることはすでに知られていたが、同じ検査法をリンチ症候群の有無の判定に利用できることが、新たに分かったのである。

 

今回の結果は、先進腫瘍検査法の利用を、標準治療法が奏効していない進行期大腸がん患者に限定するのではなく、すべての大腸がん患者の標準治療に組み入れることを目指す一歩前進であると研究者らは言う。

 

「この新規検査法は高額なものですが、一部の患者にとっては他の多くの検査が不要となるため総じて費用対効果は高いと考えられます。今はそうであると言えなくとも、将来は必ずそうなります。腫瘍シーケンシングの費用は低下し続けているからです」とHampel氏は付け加えた。

 

しかしながら、これが費用対効果の高いアプローチであるかどうかを判断するには、正式なコスト分析研究が必要であろう。

 

OCCPIは、オハイオ州でがん研究資金として1億5700万ドルを調達した草の根サイクリングイベントPelotoniaの資金提供を受けている。

 

本研究の共著者は以下の通り。
Rachel Pearlman, MS, Weiqiang Zhao, MD, Daniel Jones, MD, PhD, Wendy Frankel, MD, Paul Goodfellow, PhD, Ahmet Yilmaz, PhD, Kristin Miller, Jason Bacher, Electra Paskett, PhD, Peter Shields, MD, and Albert de la Chapelle, MD, PhD, and of The Ohio State University; Mallory Beightol, Angela Jacobson, Brian Shirts and Colin Pritchard of the University of Washington; and Richard Goldberg, MD, formerly of Ohio State and now at West Virginia University.

 

 

翻訳山田登志子

監修石井一夫(計算機統計学/久留米大学バイオ統計センター 准教授)監修

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