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肺がん検診はリスクの最も高い人に最大の恩恵がある可能性

  • 2018年4月8日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

退役軍人健康庁(VHA)主導による実証プロジェクトのデータをもとに実施された新たな分析は、肺がん検診の恩恵を最も受けやすい人をより明確にする一助となる可能性がある。

 

肺がんリスクが最も高いと判定された人が低線量CTにより肺がんが検出される可能性が高いことを、研究者たちはリスクモデルを用いて明らかにした。

 

肺がんリスクが最も低い人では肺がんが検出される可能性は低く、そのような人たちが検診から得られる利益と被る不利益の比は満足できるものではなかったと、ミシガン大学の研究責任者で公衆衛生修士のTanner Caverly医師らが1月22日JAMA Internal Medicine誌で発表した。

 

新たに実施された分析に付随する論説で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のMichael Incze医師およびRita Redberg医師が肺がん検診のあり方を再評価することの重要性を、以下のように記述している。

 

「(肺がん検診の)未来は患者選別法を再評価し改良を加え、検診のリスクと利益を明確に伝える能力にかかっている。」

 

肺がん検診実証プロジェクトの再検討

VHAの実証プロジェクトで年齢や喫煙歴のため肺がんリスクが高いと考えられる約2,100人が、全米8か所のVHAセンターで3年にわたり低線量CTによる検診を受けた。全米肺検診臨床試験(NLST:National Lung Screening Trial)の偽陽性率(26.3%)と比較して、低線量CTでは偽陽性率(58.2%)が大幅に高いことが本プロジェクトにより明らかになった。

 

53,000人以上が参加したNLSTの最新の結果によると、低線量CTを受けた高リスクの患者(55~74歳までの現在および前ヘビースモーカー)の肺がん死亡率は約16%減少したことが明らかになった。この結果により、米国予防医学専門委員会(USPSTF:US Preventive Services Task Force)は2013年に(主にNLSTに参加基準に基づいた)肺がんリスクの高い人に毎年低線量CTによる肺癌検診を推奨することになった。

 

USPSTFの推奨から間もなく、包括的な肺がん検診プログラムをVHA内および臨床試験の境界を超えて運営する方法をさらによく理解するために、VHAの実証プロジェクトが開始された、と実証プロジェクトの初期に分析を主導した公衆衛生修士であるVHAのLinda Kinsinger医師は語った。

 

本研究で明らかになった偽陽性率の高さが非常に注目を集めたため、肺がんリスクの異なる人たちでの検診の利益と不利益の比にさらに調査する必要があると考えたとCaverly医師は語った。

 

検診の不利益には、例えば、良性腫瘍を検出したことによる必要のない侵襲的処置や心労、さらに経過観察のために実施する不要なCTスキャンによる放射線曝露などが含まれる。偽陽性率が高いため、検診の費用対効果に関する懸念もある。そのためCaverly医師らはどの患者が最も恩恵を受けるのかを見出したいと考えた。

 

「このデータをもう少しさらに掘り下げて分析すれば、(利益と不利益の)バランスが、ある人にとっては本当に問題となり、別の人にとってはさほど問題にならないということが明らかになると考えられる」とCaverly医師は語った。

 

リスクに基づく肺がん検診

分析を行うために、Caverly医師らは以前開発した肺がんリスクモデルを用いて、VHAプロジェクトの患者を年齢や喫煙の有無などの要因をもとに最低リスクから最高リスクまで5つの群に分類した。

 

最低リスク群と比較して、最高リスク群では肺がん1例を診断するために検診を受ける必要のある人は少ないことが分かった。例えば、検診を受けた1,000人中肺がんと診断されたのは、最高リスク群で約30例、最低リスク群では約5例であった。

 

しかし、どの群も偽陽性率は同等で、5つの群全体の偽陽性率は56.2%であった。

 

この分析により、「検証済みのリスク層別化ツールを実世界のコホートに適用して検診基準を改善するうえで重要な貢献をした」と、Incze医師らは記述している。。

 

しかし、最高リスク群でも低線量CTの「偽陽性率が注意を要するほど高く」、プロジェクト参加者の「利益と不利益の比が望ましくない場合がほとんどであった」と指摘している。

 

さらなる個別化検診に向けて

「本分析から得たものは、利益と不利益のバランスは個人個人によってかなり異なるというシンプルな教訓で、この個人差が何を意味するのかを解釈するのは困難である」とCaverly医師は語った。

 

この新たな分析により、一人の肺がんによる死を防ぐために検診を受けなければならない人が依然多いことが分かるが、「初回の検診をもとにした分析にすぎないことに注意する必要がある」とCaverly医師は警告した。2度目以上の検診も含めていれば、肺がんによる死を防ぐため検診が必要な人数はさらに少なかっただろうと続けた。

 

最近実施された別の研究でもリスクに基づく肺がん検診の影響に注目していた。例えば、NLST参加者のデータを用いて実施された費用対効果の分析が2月6日Annals of Internal Medicine誌に掲載され、肺がんリスクの最も高い人が低線量CTから恩恵を受ける可能性が最も高いことが明らかになった。最低リスク群と比較して最高リスク群では7年間でより多くの肺がん関連死が回避されたことが、リスク区分を明らかにするためのモデルを用いて実施した研究で明らかになった。

 

しかし、本研究の最高リスク群の患者は「年齢が高く、喫煙量が多く、また慢性閉塞性肺疾患とすでに診断されている場合が多い」とタフツメディカルセンター(Tufts Medical Center)の研究責任者のDavid Kent医師らは記述している。その結果、別の病気で死亡し、生活の質の測定値も低いため最高リスク群の検診の恩恵の程度が「非常に低く」なった。

 

「肺がんの早期発見で命が助かる人の利益を維持しつつ、肺がん検診で被る不利益を最小限に抑えるためにさらにすべきことがあることは明らかである」とIncze医師およびRedberg医師は記述した。

 

Annals of Internal Medicine誌に記載された研究に付随する論説でメモリアル・スローンケタリングがんセンター(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)のAngela Green医師とPeter Bach医師は検診により救える命があることに異論はなく、リスクモデルを用いることにより肺がん検診の効率性が高まる可能性があると述べた。

 

しかし、最近実施された研究では、現時点で肺がん検診を受けているのは対象者の2~4%にすぎないことを示していると両医師はさらに加えた。

 

したがって、「検診率が低いため、検診を受けるべき人を特定することが、机上の空論にすぎないかもしれない」と記述している。

翻訳松長愛美

監修吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

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