[ 記事 ]

腸内ウイルスが骨髄移植後の致命的合併症に関連

  • 2018年3月19日
  • 発信元:カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)

移植片対宿主病のリスクを高める特定のウイルスが新たな研究で明らかに

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)

腸内にひっそりと存在しているウイルスが、骨髄移植患者における移植片対宿主病(GvHD)という重大な合併症を引き起こす可能性があるということが、UCサンフランシスコとサンルイ病院(仏パリ)の研究者らが実施した新たな研究により明らかになった。

 

GvHDは、骨髄幹細胞移植を受けた患者の60%が発症し、うち約半数が死亡する。移植後に、レシピエントの免疫細胞が異物であるドナー細胞を攻撃して拒絶するのを防ぐため、臨床医は薬物を用いて免疫応答を抑制することが多い。GvHDは、臓器拒絶反応とは逆の反応で、移植臓器の免疫細胞が新たな宿主である患者を攻撃する。

 

この疾患に対する意識は浸透しているにもかかわらず、患者が手術に入る前にGvHDを発症するリスクを予知する明確な方法はまだない。 2017年7月31日にNature Medicineのオンライン版に掲載されたこの新たな研究では、消化管系に影響を及ぼす急性腸内GvHDの発症リスクを臨床医が評価することを可能にするウイルスバイオマーカーを発表した。

 

研究チームは、あらゆる生物学的サンプル中に存在するすべての生物の遺伝物質を迅速かつ同時に配列決定することができるメタゲノミック次世代シークエンシング(mNGS)技術を使用して、患者の消化管内の微生物群をカタログ化し、移植の過程を通して細菌やウイルス集団の変化を観察した。

 

マイクロバイオームと呼ばれる細菌集団のmNGS分析は大きな話題になっているが、ウイルス集団を意味する「ウイローム」に焦点を当てた研究はほとんどない。

 

「ウイロームは健康と疾患において重要な役割を果たすと考えられる。今回の研究では、移植が腸内ウイロームに及ぼす影響を明らかにすることが目的だった」UCSFの医学研究室准教授であり、この研究の主任研究者であるCharles Chiu博士は言う。

 

この新しい研究では、44人の患者から移植前と移植から最大6週間後に採取した便試料をスキャンし、試料中のすべてのDNAとRNAの配列を決定して微生物群の構成物のリストを作成した。

 

この技術を用いて、研究者らはGvHDを発症した患者の腸内で広がった多数のウイルスを同定した。特に注目すべきは、ピコビルナウイルス(PBV)科の構成物であった。移植前のこれらのウイルスの存在は、たとえ非常に少数の集団であっても、患者が移植後にこの疾患を発症する可能性が高いという徴候であった。

 

Chiu氏は、「メタゲノミクスという手法がなければ、感染の原因はヘルペスウイルスやアデノウイルスの可能性が高いと予想していたかもしれない。ピコビルナウイルスを取り上げることはかったでしょう」と述べた。

 

パリ・ディドロ大学准教授であり、この研究の筆頭著者でもあるJérôme Le Goff博士によれば、PBVは非常に多様なウイルスのファミリーであり、その多様性はHIV以上である。 「すべてのウイルスを一度で同時に検出する試験をデザインすることは非常に難しいのです。長い間、研究室ではPBVを探す手段がありませんでした」と同氏は言う。実際に、PBV陽性と診断された18人はそれぞれ異なるウイルス株を有しており、その多様性により単一の臨床試験を用いてPBVを検出することが困難であった。

 

研究チームはまた、移植から3〜5週間後に発症した患者で、他の常在型ウイルスについて新たに増殖していることを認めた。面白いことに、GvHDの発症は、これらの隠れウイルスの後期覚醒を引き起こしていると考えられ、鶏と卵ならぬ「ウイルスが先か、GvHDが先か」という長年にわたる議論に終止符を打つこととなった。研究者らは、彼らが見たウイルスの再燃の多くは、移植後の潜伏感染の再活性化によるものであると結論づけている。

 

予測バイオマーカーとしてのPBV実用化の可能性については、Chiu氏の研究チームは、移植前に患者を検査することを目的にメタゲノミクスを基盤とする試験を行うことを望んでいる。「マイクロバイオームに変化が認められましたが、生体内のウイロームでは、その変化がより明確になりました。消化管に定着している細菌の消失によって、患者にGvHDが生じやすくなると考えられています。生体内のウイロームの変化が、この疾患の発症に対して一定の役割を果たす可能性があることも示しています」。

 

この新たな研究はGvHD発症時におけるPBVの存在を強く示唆しているが、これらのウイルスがどのようにGvHDを引き起こすかを結論づけるには時期尚早である。研究チームは分析を拡大してウイルスが疾患リスクを調節するメカニズムを解明しようと、現在、パリとUCSFの両方で、さらに多くの成人と小児患者の登録を行っている。ウイルスの役割を体系的に理解できれば、抗ウイルス薬を使用して体の免疫応答を調整することが疾患を軽減する最善の戦略であるかが最終的にわかると考えられる。

 

Chiu氏は「移植前に患者のGvHDリスクを評価する方法を持てることは素晴らしいことだ」とし、Le Goff氏が述べたステップにより新たな治療法につながる可能性があると述べた。 「今後数年でウイルス関連GvHDの予防法が見つかることを期待している」とLe Goff氏は言う。

翻訳ステップアップチーム

監修石井一夫(計算機統計学/久留米大学バイオ統計センター)

原文を見る

原文掲載日

【免責事項】

当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

関連記事