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Dexmethylphenidateによりchemobrain(化学療法による脳機能障害)が軽減

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Dexmethylphenidateによりchemobrain(化学療法による脳機能障害)が軽減

Dexmethylphenidate Reduces Some Symptoms of Chemobrain
(Posted: 06/01/2005)2005年ASCO会議での報告によると、化学療法に関連した倦怠感や脳機能障害(chemobrain)は、薬剤dexmethylphenidate (FocalinR)によって緩和される。

要約
化学療法に起因する疲労および認知機能障害(chemobrain)と診断された癌患者は、8週間にわたり中枢神経刺激薬であるDexmethylphenidate(Focalinc)で治療を受けました。プラセボで治療をうけた患者と比較して、デキサメチルフェニデートを服用した患者は、疲労が有意に軽減し、場合により記憶機能が改善する場合もありました。

出典

フロリダ州、オーランドで開催された米国癌治療学会年次総会(2005年5月17日発表)

背景
全身化学療法の治療法の多くは、化学薬剤の混合剤を患者の血流に送り込み癌細胞を殺すものですが、この方法では体全体が大規模な攻撃を受けるかたちとなります。このように化学療法を受けた患者の多くが同様の主観的感覚ぼんやりする、非常に忘れっぽい、常に疲れる、またはただ気分がよくないなど-を報告します。現在、臨床医師たちはchemobrainと呼ばれる症状であると認識しています。そのchemobrainには、疲労、精神錯乱、記憶障害および集中力の欠如など複雑にからみあった症状があります。

癌に関連した疲労は癌患者10人中7人もの患者にあらわれる可能性があり、休息しても通常は緩和されません。乳癌および肺癌患者の約99%が疲労を報告し、化学療法または放射線治療を受けた患者の61%が治療を中止した後も疲労が続くと報告します。

長期にわたる患者の病気および治療期間中、医師がこのような症状を解決したり、個々に症状を認識または治療するのは困難です。たとえば、ぼんやりするのは疲労によるものなのか、それともこの2つの症状はお互い独立しているのかなどです。

中枢神経刺激薬に属する薬剤の臨床試験が、chemobrainと診断を受けた患者に対して実施されましたが、現在、chemobrainのいずれの症状に対する治療も承認されていません。

試験
Dexmethylphenidate(d-MPH)の安全性および有効性を検証する第2相臨床試験では、余命6か月以上の癌患者が14か月以上にわたり21ヵ所の施設で試験に組み込まれました。患者全員が試験の始まるすくなくとも2か月前に最低4サイクルの細胞毒性を有する化学療法を終了していました。患者の年齢の中央値は約53歳でした。そのうち94%が女性(女性癌患者のうち76%が乳癌で、14%が卵巣癌)、79%が白人、9%がアフリカ系アメリカ人でした。

患者全員が、様々な試験で評価されたように、化学療法に起因する疲労および認識機能障害と診断されました。1週間プラセボの錠剤を1日2回5mg服用しました。このとき、医師達はプラセボと知っていましたが、患者には知らされていませんでした。症状が持続または悪化した患者は、プラセボかd-MPHのいずれかを8週間服用する群に無作為に割り当てられました。ここで行われる臨床試験は二重盲検試験です。すなわち医師も患者も誰がどの治療を受けているのかを知りませんでした。2つの治療群の患者は、身体的特徴および精神衛生状態という点で均等でした。

患者の症状に基づいて、医師は適当と思う治療量を調整することが可能でした。最初の6週間は1日10mgずつ最大1日50mgまで増減しました。22人の患者が、副作用またはその他理由のため、試験を中止しました。すなわち132人が全8週間におよぶ試験を終了しました。d-MPH治療群が59人、プラセボ治療群が73人でした。

本臨床試験は主に、薬剤が化学療法に起因する疲労の治療に有益であるかどうかを判断するためのものでした。評価を実施するうえで、医師達は、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue Subscale (FACIT-F) Total Scoreに最も信頼を置いていました。臨床試験の第2の目的は、薬剤が認知機能を改善するかどうかを調べ(記憶および認識活動を測定するHigh Sensitivity Cognitive ScreenすなわちHSCSと呼ばれる試験で評価した)、有効および安全な用量範囲を見つけることです。医師達は、なんらかの変化を測定できるように治療前と治療後両方で疲労および認識試験を実施しました。

主任医師は、University of Cincinnati医療センターのElyse Lower医師です。

結果
8週間後、d-MPH治療群の患者は、FACIT-Fで測定したころ、プラセボ治療群の患者よりも疲労が有意に軽減しました。HSCS試験の記憶部門において、d-MPHは患者が有意に改善する手助けにもなりましたが、その他いずれの認識機能も改善を示しませんでした。しかし、臨床試験は認識機能に関して決定的な結論を出せるようにはデザインされていませんでした。

プラセボ治療群の患者と比べて、d-MPHを受けた患者により多く、少なくともひとつの有害事象がありました(90%対78%)。しかし、本臨床試験で見られた重篤な有害事象2例はプラセボ治療群において見られました。多く見られた軽度から中等度の副作用は、頭痛(d-MPH治療群が40.8%に対しプラセボ治療群は33.3%)および吐き気(d-MPH治療群が27.6%に対しプラセボ治療群は7.7%)でした。

コメント
Lower医師は、「d-MPHにより成人癌患者の化学療法に起因する疲労が有意に軽減し、1日50mgまでの用量であれば安全かつ耐容性が良好である」と結論を出しました。Lower医師と同僚医師は、d-MPHは、chemobrainに伴う疲労および記憶障害を治療する薬剤として奨励されるべきであると提案しています。

制限事項
Memorial Sloan Kettering Cancer Centerの苦痛緩和医療の精神科医であるKathleen. M. Foley医師は、この臨床試験は、chemobrain(の複雑な機能)を評価するのに十分でなく、実際のところ疲労に対する試験をしていたとASCOの討論で語りました。

国立癌研究所のCancer Treatment and Diagnosis部門の外科副部長、Ted Trimble医師は、本臨床試験は、疲労には有効であるが、d-MPHがchemobrain症状の複合体という点において効果がない、またはマイナスの効果をもたらすのではないかという可能性を考慮していないデザインであると考えています。

本臨床試験の大部分が乳癌治療患者で占められており、ASCOの討論で、試験結果が他の癌患者に対しても適用できるかどうかという疑問が浮上しました。Lower医師は、本試験は被験患者を限定するものではありませんでしたが、様々な癌のうち臨床試験を行う施設で多くの割合を占める癌の患者が組み込まれたと語りました。Lower医師はd-MPHの有利性がすべてのグループには適用しないことを示すデータは何もなかったと語っています。Trimble医師は、乳癌患者に用いられる抗癌剤はその他頻繁に見られる癌に慣行的に投与される治療薬であり、化学療法後患者が疲労および認識障害を報告した状況で本治療薬は機能するであろうと仮定するのは当然であるという意見に同意しました。

Trimble医師は、ほとんどの臨床医師がd-MPHを日常的に治療に適用する前に大規模な臨床試験で試験結果を再確認したいと考えるであろうことを指摘しました。    (ポメラニアン 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修)

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