循環腫瘍細胞がHR陽性乳がんの晩期再発を予測できる可能性

臨床的に再発の証拠が得られていないホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性ステージ2-3乳がんを有する患者で、診断から5年後に血中の循環腫瘍細胞(CTC)が検出された患者は、乳がんの晩期再発リスクが増加したと、2017年12月5日~9日に開かれたサンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。

「われわれは、診断から5年後のシングルポジティブCTCアッセイは晩期再発に関する独立予後情報を与えることを発見した」とJoseph A. Sparano医師(ニューヨーク、アルバート・アインシュタインがんセンター、モンテフィオーレ・アインシュタインがん治療センターの臨床研究アソシエイトディレクター)は述べた。「晩期再発リスクの階層化、治療および臨床試験の情報提供のためのリキッドバイオプシーをベースにしたバイオマーカー利用の概念を実証する」。

近年、乳がんの治療法が発展したにも関わらず、依然として多くの女性が最初の診断から5年以上経過してから晩期再発となる。すべての乳がん症例の半分以上を占めるHR陽性乳がんは晩期再発リスクが高いとSparano氏は指摘した。「治療法の指針となる晩期再発バイオマーカーが必要である」と彼は強調した。

Sparano氏とECOG-ACRINがん研究グループの共同研究者によりデザインされ実施された本試験の参加者は、以前ECOG-ACRIN臨床試験E5103に登録された患者である。E5103は、術後補助療法としての化学療法への血管内皮増殖因子VEGF阻害剤ベバシズマブの併用を評価した試験である。Sparano氏と共同研究者は、HER2陰性ステージ2~3乳がんの初回診断後4.5年から7.5年の間に、CELLSEARCH CTCアッセイを使って患者から採取した血液サンプルにおける循環腫瘍細胞(CTC)を測定した。試験登録時に再発の臨床所見を示した患者はいなかった。HR陽性乳がん患者の再発率が4.5%であったのに対して、HR陰性群における再発率は0.5%であった。

本試験に登録された546人の患者のうち、CTCアッセイで陽性と判定されたのは4.8%であった。HR陽性乳がん患者では、CTC陽性は5.1%であった。これに対してHR陰性乳がん患者では、CTC陽性は4.3%あった。中央値1.6年の追跡後、CTCアッセイ陽性判定は、HR陽性患者において乳がん再発リスクが20倍近く増加したことに関連していた。HR陽性疾患を有し、2年で再発した患者のCTCアッセイ陽性的中率は35%で、このコホートでの陰性的中率は、98%であった。 HR陰性患者群ではCTC陽性は再発と関連性がなかった。

Sparano氏は、これらの結果は少々予想外だったとコメントしている。「われわれは、初回診断から約5年以上経過時点でCTCを有する患者が5%いたことに驚いた」と述べた。「CTC陽性患者は、再発率が高いと予想していたが、再発リスクが比較的短期間でこれほど高くなるとは予想していなかった」。

「HR陽性乳がんにおける晩期再発はすべての再発症例の約半数を占めるが、今回の研究はこうした再発に関する予後バイオマーカーとしてのCTCアッセイの臨床的妥当性の強力な証拠を示している」とSparano氏は述べた。「予後解析のためのCTCアッセイの使用は、長期補助内分泌療法あるいは他の治療選択肢が最も有効である患者のより正確な特定に役立つだろう」と彼は指摘した。

次の段階の一つとして、シングルネガティブCTC検査あるいはシリアルネガティブ検査を陰性予後マーカーとしてどのように役立てられるかの研究がある。陰性予後マーカーは5年以上の長期補助内分泌療法の回避に役立つかもしれない。

本試験の限界として、CTCアッセイ後、平均1.6年追跡期間が短いことがあげられる。Sparano氏は、さらなる追跡期間が必要であるとともに、今回の設定でのCTCアッセイの臨床的有用性を判定するためにさらに試験を実施する必要があると述べた。

ECOG-ACRINは、Breast Cancer Research Foundation、Susan G. Komen、そして国立がん研究所から資金援助を受けた。Sparano氏は、利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 中野駿介

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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