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乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新試験が開始

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乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新試験が開始

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

乳がん検診に使用される検査法に関するいくつかの重要な問題に答えるために、全米規模の臨床試験が開始された。

 

NCIが資金を提供したTomosynthesis Mammographic Imaging Screening Trial、つまりTMISTとして知られている試験は、マンモグラフィに使用される2つの検査法である、トモシンセシス(3Dマンモグラフィと呼ばれることが多い)と標準的な2Dデジタルマンモグラフィを比較している。

 

ここ数週間で、最初の参加施設において女性の本試験への登録が始まった。最終的に、米国およびカナダの約100の施設が参加すると予想され、45歳~74歳の女性約165,000人を登録する計画である。

 

本試験は、トモシンセシスが、生命を脅かす可能性のある乳がんの検出に有意義な影響を与えるかどうか、という重要な未知の問題を解決するためにデザインされていると、本試験の臨床試験責任医師であるEtta Pisano医師は説明した。同医師は、ボストンのベスイスラエル・ディーコネス医療センターの医師で、米国放射線専門医会のチーフサイエンスオフィサーである。

 

Pisano医師は、TMISTの重要な目標は、乳がん検診におけるトモシンセシスの役割を、臨床医がよりよく理解できるようにすることであると説明した。

 

「私たちは、検診が必要であることは知っています、それだけです」とPisano医師は述べた。「問題は、私たちが新しいツールに期待しているのと同じくらい、これらのツールが本当に女性に利益をもたらしているかどうかです」。

 

2Dマンモグラフィと3Dマンモグラフィを直接比較

ECOG-ACRIN Cancer Research Groupが主導するTMISTは、ここ数十年で最初のマンモグラフィ検診に関する大規模ランダム化臨床試験である。また、現在の乳がん検診の標準検査法である2Dデジタルマンモグラフィと、トモシンセシスを直接比較する最初の試験である。

 

1980年代~1990年代に行われた試験において、マンモグラフィを用いた定期的な検診により、乳がんで死亡する女性の数を減少させることができたと示されたが、これらの試験ではフィルムマンモグラフィが用いられた。

 

デジタルマンモグラフィ(X線像をデジタルで取得して、高解像度のコンピュータ画面でより鮮明に見ることができる)は、過去10年の間にフィルムマンモグラフィを性能的に大きく上回ったと、Sunnybrook Health Sciences CenterのMartin Yaffe博士は述べた。同博士は、約3年間カナダで進行中のTMISTの「リードイン」試験の臨床試験責任医師である。

 

Yaffe博士は、フィルムマンモグラフィに比べデジタルマンモグラフィにはいくつか利点はあるが、いまだ平面的な2次元画像しか生成しておらず、それはまるで空に浮かんだ平らな月のようだと語った。

 

一方、トモシンセシスでは、乳房全周の画像を取得し、次にコンピュータによって、取得した画像から3Dのような画像が生成される。トモシンセシスは「本当の3Dではなく、3Dに近いものです」とYaffe博士は説明した。

 

乳がん検診用の最初のトモシンセシス装置は、2011年に米国食品医薬品局(FDA)によって承認された。米国においてマンモグラフィ検診に現在使用されている装置のうち、28%はトモシンセシス装置であり、FDAのデータによると、その割合は少なくとも昨年中は横ばいであった。

 

ネバダ州のCarson Tahoe Cancer Centerの臨床試験コーディネーターであるJennifer Simas正看護師は、3D技術が女性の関心を引いていると述べた。TMISTは、同センターが参加した最初の乳癌検診の試験である。

 

Carson Tahoeでは、1日に150〜200人の女性の乳がん検診を行っているが、昨年トモシンセシスによる検診を開始し、その需要は高まっている。

 

「多くの女性は3D(装置)による検診を希望しています」とSimas氏は述べた。

 

Pisano医師によると、新しい科学技術には魅力があるが、トモシンセシスには標準的なデジタルマンモグラフィと比べ欠点がいくつかあるという。例えば、トモシンセシス検査時の被ばく線量は、標準的なデジタルマンモグラフィ検査時の2倍を超える可能性がある。

 

この高い放射線量は、ひとつにはトモシンセシス装置が標準的な2Dスキャンも実行することが可能であり、放射線科医が2Dスキャンと3Dスキャンの両方を行うことが多いという事実によると、Yaffe博士は説明した。トモシンセシスはまだ比較的新しいため、放射線医はこの装置による検査を「ある程度慎重に」行っていると、同博士は述べた。

 

トモシンセシス装置はまた、標準的なデジタルマンモグラフィ装置よりも高価である。それに加えて検診の手順と分析により多くの時間がかかり、「患者や保険会社にとってはより高価なのです」と、Pisano医師は話した。

 

Simas氏によれば、少なくとも現時点で一部の女性にとって費用が問題になっているという。多くの女性がトモシンセシスを用いる検診を希望するが、その検査は受けられない。「なぜなら彼女らの保険はトモシンセシス検査に適用されないからです」と同氏は説明した。

 

それにもかかわらず、全米の施設で両方の検査法が通常使用されているため、Pisano医師は、直接比較が必要であると述べた。

 

進行乳がんの発見が総合的に減少するのか?

TMISTに登録された女性は、トモシンセシスまたは2Dデジタルマンモグラフィのいずれかの検診に無作為に割り付けられる。本試験中に、大半の女性は、1年に1回の検診を5年間受ける。

 

しかし、閉経後で、原発性乳がんの危険因子(乳がんの家族歴や高濃度乳腺など)を持たない女性は、隔年で5年間検診を受ける予定である。つまり、5回ではなく3回の検診しか受けない。

 

Pisano医師によると、この女性たちは、高悪性度の乳がん発症リスクが一般的に低いことが研究によって示されているため、検診をより少ない回数で安全に受けることができると、TMISTのデザインを手助けした専門家委員会は結論づけたとのことである。

 

本試験の主要評価項目(本試験のリーダーたちが答えを望んでいる重要な問題)は、各集団の女性の死亡数ではない。むしろ、本試験はトモシンセシスによって生命を脅かす乳がんの発生率が低下するかどうかを検討する目的でデザインされている。

 

エンドポイントには多くの点で現実的な問題があるとPisano医師は説明した。

 

「死亡率をエンドポイントとした試験はできません。10年~20年というあまりに長い時間がかかります」と同医師は話した。

 

そこで、致死的である可能性が最も高い進行がんの割合の減少が、実際には、死亡率の代替エンドポイントとなる。

 

「一方の検査がもう一方よりも優れた検診ツールであれば、5年にわたる検診で(その集団における)進行がんが少なくなるはずです」とPisano医師は述べた。不利益となる可能性のある乳房腫瘍は、「もっと早期に発見されていたはずであり、その時期の腫瘍は小型で、容易に治療可能なのです」。

 

したがって、試験デザインはこの問題の逆に答えるのにも役立つはずであると、Pisano医師は付け加えた。致命的であると判明する可能性のある侵襲性のがんを検出する代わりに、「非常に進行が遅いために、進行しないもしくは女性を死に至らしめることのない、あまりにも多くのがんを(トモシンセシスによって)発見しているのではないでしょうか」。

 

検査法それ自体の比較以外のところでも答えが出るであろう

TMISTには、主要評価項目以外にも重要な情報に関する項目がいくつかある。これらの副次的評価項目は、トモシンセシスによる検診を受けた女性に、呼び出し、つまり再検査が少ないかどうか、および最終的にがんでないことが判明する疑わしい結果(いわゆる偽陽性)のための生検が少ないかどうかである。

 

トモシンセシスへの期待の一つに、より完全な乳房の画像によって、標準的なデジタルマンモグラフィと比較して結果の偽陽性率が減少することであると、Pisano医師は述べた。しかし、今のところ、この希望が事実かどうかに関するデータは様々であると、同医師は注意喚起した。

 

「本試験は、トモシンセシスによる検診が乳がんの過剰診断を増加させるかどうか、そしてそれがどの程度かを明らかにする助けとなるはずです」と、NCIのがん予防部門長であるBarry Kramer医師/公衆衛生学修士は述べた。過剰診断とは、がんと診断されるが、進行があまりに遅いので不利益をもたらすことがなかったであろうがんを指す。

 

他の副次的評価項目は、中間期がん、すなわち、以前に陰性であったマンモグラフィ検査と次に予定されたマンモグラフィ検査との間に診断された乳がんの割合である。

 

TMISTの知見によって、これらの異なる検診技術の最適な活用方法に関する重要な情報が提供されることを期待していると、Yaffe博士は述べた。

 

「一部の女性にとって、2Dデジタルマンモグラフィ検査は申し分ないことがわかるでしょう」と同博士は話した。「乳房の特徴に応じて、2Dデジタルマンモグラフィ検査を続けるべき女性もいれば、トモシンセシス検査を受けるべき女性もいるかもしれません」。

 

本試験は、さまざまな形態の乳がんの基礎となる生物学に関する他の問題に答えるのに非常に役立つ可能性があると、Pisano医師は述べた。試験の一環として、参加者からの組織および血液サンプルを保存するために、バイオリポジトリの設立を予定している。

 

このバイオリポジトリから、がん研究者らにとって正真正銘の貴重な発見が生み出されるはずであると、同医師は続けた。

 

「それは将来の研究のための大きな資源となるでしょう」とPisano医師は話した。

 

例えば、TMISTの臨床試験責任医師らは、乳がんだけでなく他のがんとも相関する、組織や血液サンプル中のバイオマーカーを検討する目的で計画された付随研究もすでに行っている。

 

大規模で広範囲な本試験には、確かな利益が他にもあるはずであると、ニューヨークのMontefiore Einstein Cancer Care CenterのBruce Rapkin博士は述べた。同センターは、NCI Community Oncology Research Program (NCORP)の一環でもある本試験に参加が予想される、多くの施設のうちの1つである。

 

MontefioreはNCORP Minority Underserved site、つまり、少数派の人種や民族、もしくは農村部住民の大規模集団に医療サービスを提供する施設である。

 

「つまり、費用の影響や健康リテラシーなどに関する問題、それに加えて(検診の)実施に関するあらゆる種類の課題に答えるには最適な場所です」と、Rapkin博士は述べた。同博士はNCORPの試験責任医師であり、Montefioreプログラムに携わって、がん治療を人々に届けることに焦点を当てて研究を行っている。

 

Rapkin博士はこう続けた。「本試験の結果に関して本当に重要なことの1つは、検診について人々が情報に基づいた決定を下す助けになるように、結果をわかりやすく伝えることです」。

原文掲載日

翻訳坂下美保子

監修河村光栄(放射線腫瘍学、画像応用治療学/京都大学大学院医学研究科)

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