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大腸がん検診の受診率、従来の奨励方法で改善

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大腸がん検診の受診率、従来の奨励方法で改善

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

案内書の郵送や検査キットの無償提供など、従来法での検診推進により、大腸内視鏡検査や自宅検便のいずれかによる大腸がん検診を受診し、適切なフォローアップを終了する人の数が増加する可能性があることが新しい臨床試験の結果で明らかになった。

 

本臨床試験の結果は9月5日JAMAに発表された。

 

「私たちの最大限の努力の結果、検診過程の終了率(*監修者注:スクリーニングから必要に応じて精密検査まで完了すること)が(従来のケアと比較して)3倍となったが、さらに改善の余地がある」と試験の統括筆者であるテキサス大学南西(UTSW)医療センターのEthan Halm医師は語った。

 

米国のがんによる死亡原因の第2位である大腸がんは検診により死亡者数が減少することが確認されているが、大腸がん検診を継続していない、または検診結果により精密検査が必要であるにもかかわらずそれを受けていない米国の成人は多い。

 

本臨床試験に参加したのは、米国で大腸がん検診の受診率が低いマイノリティーの低所得者が多数であった。

 

「本試験により、現実世界の状況で重要な教訓がいくつか得られた」とテキサス大学オースティン校のMichael Pignone医師およびウェイク・フォレスト医科大学院(Wake Forest School of Medicine)のDavid Miller医師は本試験に付随する論説に記した。「米国の(大腸がん)受診率は十分でなく、受診率改善のためには創造的手法が必要である。」

 

本試験は、乳がん、大腸がん、子宮頸がんの検診過程の改善方法をいっそうよく把握することを目的としたNCIのPROSPRプログラムにより一部資金援助を受けている。

 

複数に及ぶ検診への障壁

米国で最も普及している大腸がんの検診手法は、大腸内視鏡検査である。内視鏡による検診は、がんを早期発見するとともに、前がん状態の腫瘍すなわちポリープを検出し除去することが可能で、がんによる死亡リスクを低減する。

 

もう一つ普及している大腸がんの検診手法は免疫学的便潜血検査(FIT)で、患者が採取した便のサンプル中に潜む血液(潜血)の有無を検査するものである。便潜血検査により、大腸がんによる死亡者数が減少することが確認されている。便潜血検査は年に一度受診し、検査結果に異常(便中の血液の徴候)が認められた場合、原因究明のため内視鏡での経過観察を受けることが推奨されている。

 

米国予防医療専門委員会(U.S Preventive Services Task Force)は、平均的リスクのある50歳から75歳までの成人が10年に一度の内視鏡検診や年に一度の便潜血検査のいずれかによる大腸がん検診を受診することを勧めている。

 

Halm医師は、大腸がん検診は、乳がんや子宮頸がんいずれかの検診以上にがんを多く発見し、がんによる死亡を防ぐことを強調した。しかし、検診の受診に二の足を踏む原因となる障壁が多い。検査自体に対する恐怖心や、内視鏡の場合には前処置、また、検診を受けられる機会の欠如、検診について医師と患者の話し合いが皆無または不十分であるなどである。

 

大腸がん検診の有効性に関する研究によると、「検診過程の各段階で失敗が存在することが明らかになっており、それが(大腸がんによる)死亡率増加に繋がっている」と本試験の著者は記している。しかし、検診方法に関する試験の多くは、検診過程の段階一つひとつに焦点を当てており、経時的に全過程を完了するかどうか(*監修者注:スクリーニングから精査まで)に関する効果について別の検診方法と比較している試験はほとんどない」。

 

本試験の著者は、検診過程が適切に完了しなかった原因は、便潜血検査を推奨どおりに毎年受診しない、便潜血検査で異常が認められた場合の内視鏡検査を受診しない、内視鏡検査の定期検診に行かない、または内視鏡検査のための腸管前処置が不完全であるなど、多岐の要因にわたると指摘している。

 

現実世界の検診アウトリーチ

本試験には、検診を受診し続けていない50歳から64歳までの成人5,999人が参加した。参加者全員が、加入している保険が不十分または保険未加入の患者をケアする大規模の公的資金の医療制度であるテキサス州ダラスのParkland Health and Hospital Systemでプライマリーケア(一次医療)を受けていた。

 

参加者のうち、49%がヒスパニック系、24%が黒人、22%が白人で、人種・民族が不明だったのは0.6%であった。

 

参加者は、内視鏡受診を奨励する群、便潜血検査を奨励する群、通常ケアの3つの群に無作為に割りつけられた。内視鏡および便潜血奨励群は、案内状の郵送、無料の腸管前処置または便潜血検査キットの無料提供、スケジュール管理の補助および検診前の事前電話連絡を実施した。通常ケアは、実際にクリニックで検診を勧めたり、指示したりすることであった。

 

本試験は3年におよび、内視鏡群では38.4%が、便潜血群では28.0%、通常ケア群では10.7%が検診過程を終了した。検診過程の終了とは、上記のとおり、奨励された数の検診を受診し、検診結果に異常が見られた場合、適切な精密検査または治療評価を適時に終了することである。

 

本試験で内視鏡検査の案内を受けた群は、郵送で便潜血検査キットを受け取った群よりも終了率が高かったが、「便潜血検査キットによる検診方法は3年の試験期間があり、失敗する可能性がより高いため、公正な競争ではなかった可能性がある」とHalm医師は語った。

 

便潜血検査キットによる検診方法が上手くいかなかった理由は2つあったとHalm医師は語る。便潜血検査キット群の参加者の3分の1(37%)以上が推奨されたとおりに毎年検診を受診しておらず、残りは検診結果に異常が見られたにもかかわらず、適時に内視鏡による精密検査を受けていなかった。

 

内視鏡検診奨励群で検診が上手くいかなかった主な理由は、参加者のほぼ半数(44%)が検診を開始しなかったことである。

 

5年から10年以上かけて2つの検診方法を比較すれば、より信頼のおける試験になるとHalm医師は続けた。

 

検診の改善にはさらに取り組みが必要

また本試験には弱点があったとHalm医師は語った。臨床試験をした検診奨励方法はお決まりのシンプルな従来法が故意に選択されていた。検診を妨げる可能性のある、人々の根底にある大腸がんに対する考えに公式に対処するカウンセリングの要素は本試験に含まれていない。また、医師の大腸がん検診に関する姿勢や行為を変える方法についての試験はなされなかった。

 

「医師がいったん大腸がん検診を勧めると、検診を受診する可能性が高まることは知っているが、検診の話を常にするわけではない」とHalm医師は語る。例えば、他に、より差し迫った問題がある場合が多いため、医師は検診について話をする時間が常にあるわけではないとHalm医師は指摘する。

 

加えて、Pignone医師とMiller医師は、「検診の選択肢について中身のある十分共有できる議論は臨床医と患者の間でほとんどなされていないことを臨床試験は示唆している」と記している。

 

「経時的な大腸がん検診から多くの利益を得る人々が確実に検診を受診するためには、もっと多くの取り組みが必要である」とHalm医師は語った。医療制度が選択する検診方法は、そこから利益を得る患者にとって道理にかなうものであるべきで、患者は選択した検診方法が機能するために必要なことを行うべきであるとHalm医師は続けた。

 

「大腸がん検診の受診率を上昇させるには、検診を推進するやり方が一種類では不十分であることが既存のエビデンスで示唆されており、代わりに、臨床医、医療管理者および政策立案者が、さまざまな種類の効果的な介入を組み合わせる取り組みを行う必要がある」とPignone医師およびMiller医師は記した。「患者が、経時的に自分たちが実行できる検査を見極めることができるよう手助けをし、患者が最後までやり遂げる手助けをすることが最大の利益を生む可能性が高い」。

 

また、「実際に実行できる検査が最高の検査である」とHalm医師は述べた。

原文掲載日

翻訳松長愛美

監修斎藤 博(検診研究部/国立がん研究センタ−)

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