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乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害

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乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

ある大規模な臨床試験の追跡調査データによると、タキサンベースの化学療法で乳がんを治療する女性の多くが長期の末梢神経障害を経験している。

 

この試験の参加者のうち40%超が、治療開始から2年後に手足のしびれ感や刺すような痛みが続いていると回答しており、10%の症状は重度と評価された。重度の神経障害がある患者は、ない患者よりも生活の質が低いことが報告されている。

 

「患者さんが治療のメリットと害の両方を理解できるようにしたいのですが、決まって伝えられるのは急性副作用についてのみなのです」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジョンソン総合がんセンターのPatricia Ganz医学博士は述べている。「長引く神経障害、痛み、疲労、認知困難などが残った場合、患者さんは本当に驚くことがあります…(潜在的に)たくさんある症状全てに対して、実際に準備できている人など誰もいないのです」。

 

NCIがん予防対策課の緩和治療研究責任者であるAnn O’Mara博士はさらにこう述べている。「早期乳がん、あるいはII期、III期であっても、患者さんの長期生存は期待できるようになっています。だから今私たちはより注意を払い、こういった慢性的な毒性に対してより強く意識を向ける必要があるのです」。

 

この試験はJournal of the National Cancer Institute誌に8月24日掲載された。

 

がん治療の長引く影響

 National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project clinical trial B-30臨床試験には、手術で除去できるものの、がん細胞が近くのリンパ節にまで広がったため再発のリスクが高いとされた、乳がんがある女性が参加した。

 

試験の主な目的は、タキサン系薬剤の一つであるドセタキセルを含む3種類の化学療法レジメンの1つに無作為に割り付けられた女性において、全生存期間を比較することであった。末梢神経障害は、タキサン化学療法の一般的な副作用である。

 

試験中の女性は、ドキソルビシンおよびドセタキセルを同時に投与する群、ドキソルビシン、シクロホスファミド(エンドキサン)、およびドセタキセルを同時に投与する群(ACT)、またはドキソルビシンおよびシクロホスファミドの同時投与後ドセタキセル(AC→T)を投与する群に、無作為に割り付けられた。AC→T群の参加者には、この試験におけるタキサンの最高用量が投与された。

 

神経障害に関する情報は、治療前、化学療法の第4サイクル中、ならびに治療開始後6、12、18、および24カ月に患者から収集した。

 

この試験の主な分析では、AC→T投与の患者は治療開始後8年で測定された全生存率が最も良好であり、ACTは2番目であった。ドキソルビシンおよびドセタキセルのみを投与された女性においては、3剤併用療法のいずれかを受けた女性よりも、わずかに悪い生存率が示された。

 

治療開始後6カ月までにすべての患者において神経障害率が上昇したが、他の2剤の後にドセタキセルを投与された患者において特に高い神経障率が認められた。

 

この治療群において神経障害症状があった患者の割合は、治療開始後24カ月で50%未満に低下したものの、この群の神経障害率は他の2群よりも高いままであった。

 

 任意の神経障害が報告された試験参加者の割合

  ドキソルビシン+
ドセタキセル
ドキソルビシン+
シクロホスファミド+
ドセタキセル(ACT)
ドキソルビシン+
シクロホスファミド後、
ドセタキセル(AC→T)
治療前* 19.1% 20.7% 15.8%
6カ月フォローアップ時 33.3% 37.7% 68.2%
12カ月フォローアップ時 31.2% 37.1% 56.4%
24カ月フォローアップ時 34.7% 41.4% 49.8%

 

*神経障害は、糖尿病などの一般的な病状、または各種手術を含むその他の医療処置を伴うこともある。

 

 

神経障害のリスク要因に対する考慮

研究者らによれば、治療前の神経障害の存在、高齢、体重過多または肥満、乳房切除術歴、がん細胞を含むリンパ節の数が多いことなどの患者特性が、治療開始後24カ月時の神経障害のリスクを増加させていることがわかった。

 

臨床試験以外で治療された患者は臨床試験に登録する患者よりも高齢で健康的ではないことが多いため、タキサンベースの化学療法後に慢性的神経障害を経験する女性の「現実の」割合は、この試験による報告よりもおそらく高いとGanz博士は説明している。

 

「残念ながら末梢神経障害の治療に関して、患者さんに提供できていることは多くありません」、O’Mara博士は述べた。

 

Ganz博士はさらに、デュロキセチン(サインバルタ)薬で限定的に軽減される患者もいるが、現時点で最良の治療戦略は、神経障害が初期段階で発症するのを防止する努力にとどまっていと述べている。

 

広範囲の化学療法レジメンは再発のリスクが高い乳がん女性に対する専門家グループによって現在支持されているが、これらのレジメンのうち1つを選択しても生存率にはわずかな差しか生じないのではないかと、Ganz博士は指摘する。さらにGanz博士は、ほとんどの女性が治療後に長期生存することを考えると、初期決定の段階においてその治療が将来の健康にどのように影響を与えるかを考えることがますます重要になっているとも述べている。

 

別の研究チームによる最近の結果では、がん治療後の慢性的神経障害を有する女性は能力障害のリスクが高く、危険な転倒の可能性もあることが示されている。

 

B-30の結果に関してGanz博士はこう述べている。「ここで重要なポイントとして考えられることは、ACTはAC(後にドセタキセル)と同等の生存利益を有し、神経障害ははるかに少ないということです。つまり神経障害を発症し持続的な問題となるリスクの高い患者にとって、ACTは治療法を選択する際に代替手段となり得ます」。

 

加えてGanz博士は、どの患者において慢性的神経障害のリスクが高いかを知るためには、腫瘍学者が治療前に既存の神経障害を尋ね、初期の治療計画期間中に他の危険因子を考慮する必要があるとしている。しかし初診断時後は、医者と患者の双方が他のことで頭が一杯になりやすく、その種の会話は行われないことが多いそうだ。

 

Ganz博士はこう締めくくった。「これら(の議論)が治療上の意思決定に組み込むための戦略的な方法が必要です」。

原文掲載日

翻訳岡部師才

監修小坂泰二郎(乳腺外科/彩の国東大宮メディカルセンター)

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