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広範囲のリンパ節郭清は一部の早期乳がん患者の生存を改善しない

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広範囲のリンパ節郭清は一部の早期乳がん患者の生存を改善しない

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

大規模臨床試験の長期的結果から、外科治療として乳腺腫瘍摘出術を受けた早期乳がん患者の一部では、範囲を縮小したリンパ節生検で十分であることが確認された。

 

今回の試験において、1カ所または2カ所のセンチネルリンパ節にがん細胞がある早期乳がん患者は、乳房温存手術後の腋窩リンパ節郭清(ALND)を省略しても長期の生存に影響しないことが明らかになった。

 

腋窩リンパ節郭清はしびれ、上半身の可動域の減少、およびリンパ浮腫などの慢性的な副作用を生じることがあるため、今回の研究結果は患者にとって重要であると、この試験を主導したシーダーズ・サイナイ医療センター(米ロサンゼルス)のArmando Giuliano医師は述べた。

 

Giuliano医師は現在、患者に対して、長期的には「腋窩郭清をする方が、しないよりも苦痛が大きい」と告げることに抵抗がないと語った。

 

この試験結果はJAMA誌9月12日号に掲載された。

 

乳がん転移に対する考え方の変化

腋窩リンパ節は乳房組織からわきの下の間に存在する。乳がん転移の初期の理論では、原発腫瘍から遊離したがん細胞は最初にこの腋窩リンパ節を通ってから他臓器へ移動すると考えられた。そこで、腋窩リンパ節を取り除くことによって、がんの再発と転移のリスクを両方とも低下させることができると考えられてきた。

 

しかし、より最近の研究から、乳がんが他臓器へ転移する経路は他にもいくつかある可能性が示唆されていると、Giuliano医師は説明した。

 

さらに、現代の早期乳がん治療には、乳房温存療法とともに腋窩リンパ節の一部を標的とした放射線療法を行うのが一般的であると、Giuliano医師は付け加えた。

 

ほとんどの患者が、追加でホルモン療法や化学療法、さらに最近では分子標的療法など、全身のがん細胞を死滅させることができる全身療法を受ける。

 

リンパ節手術を縮小しても生存は変わらず

ACOSOG Z0011試験は、乳房温存術後に放射線療法と全身療法を受けた患者群において、術後に、「センチネルリンパ節生検(SLNB)」のみを実施した場合と「腋窩リンパ節郭清(ALND)」まで実施した場合で、同等の生存利益を得られるかどうかを比較するようデザインされた。この試験では1999年から2004年の間に891人の患者が登録された。

 

この試験に参加するための適格条件は、ステージ1または2で、センチネルリンパ節転移が1カ所または2カ所のみである患者であった。患者は全員、乳房温存術施行時にセンチネルリンパ節生検を受けた。

 

試験参加者の半分はその後の手術を受けず、残りの半分は腋窩リンパ節郭清を受けた。両群の患者のうち約90%が術後放射線療法を受け、ほぼ全員が何らかの全身療法を受けた。

 

この試験の初期の結果(2010年および2011年に公表)では、センチネルリンパ節生検のみを受けた患者の全生存期間は腋窩リンパ節郭清を受けた患者と同等であった。この2群は、無病生存率もがんのリンパ節再発率もほぼ同じであった。

 

この初期の結果は「標準治療を完全に変えました。現在、圧倒的多数の外科医が、転移陽性の(センチネル)リンパ節が1カ所か2カ所の患者に対して、完全な腋窩リンパ節郭清を行わなくなりました」と、NCIがん治療診断部門乳がん治療科長Larissa Korde医師は語った。

 

しかし、がん研究界ではこの試験についての不安が消えなかったと、今回の論文の著者らは説明した。

 

たとえば、この試験に登録された被験者数は、当初の計画よりも少なかった。さらに、この試験の両群とも、乳がんの再発件数が予想よりもはるかに少なく、統計学的な群間比較が困難だった。

 

さらに、ほとんどの被験者がホルモン受容体陽性乳がんで、初回治療から長年経過してから再発する可能性があった。

 

しかし、10年間経過観察したところ、この初期の試験結果は正しいことが確認された。どちらの群も、何らかの原因で死亡した患者は約50人のみであった。全生存率はセンチネルリンパ節生検群では86.3%、腋窩リンパ節郭清群では83.6%であった。

 

「今の時代、手術の範囲は小さい方が安全だと思われます」とKorde医師は述べた。ACOSOG試験で長期間のデータが得られたことによって、「長期間続けることによって得た成果にもう少し自信をもてるようになりました」と付け加えた。

 

手術による副作用の発生率は腋窩リンパ節郭清群の方がはるかに高く、創感染、治癒遅延、疼痛を経験する患者は腋窩リンパ節郭清群では70%であるのに対し、センチネルリンパ節生検単独群では25%であった。さらに、腋窩リンパ節郭清群の方が、リンパ浮腫の報告件数が多かった(試験期間中に認められた副作用についての全データは、以前の論文に報告されている)。

 

他の患者における腋窩リンパ節郭清については未解明

これらの結果を適用できるのは、乳がんと治療計画が今回の試験の参加者のものと一致する患者だけであるということを、医師と患者が理解することは重要なことだと、論文の著者らは警告した。

 

今回の結果は、触知可能な腋窩リンパ節がある患者、乳房腫瘍が直径5 cmを超える患者、転移陽性のセンチネルリンパ節が3個以上の患者、術前に化学療法やホルモン療法を受けた患者、および乳房温存術と放射線治療の併用療法ではなく乳房切除術を受けた患者の治療法を決定する際に用いられるべきではない。

 

「ほかの[治療]背景における腋窩リンパ節郭清[の必要性]については、まだ解明されていないことがたくさんあります」と、Giuliano医師はコメントした。

 

欧州で現在行われているある試験では、早期乳がんで乳房切除術を受けた女性の一部において腋窩リンパ節郭清を省略できるかどうかについて調べているが、結果が出るまでには何年もかかる。

 

しかし今のところ、「ACOSOG Z0011試験は、100年間にわたって信じられてきた、がんを含む腋窩リンパ節全体を切除しなければならないという考えを打ち破りました」と、付随論説の著者でテキサス大学サウスウエスタン医療センターのEdward Livingston医師とHsiao Ching Li医師は述べた。

原文掲載日

翻訳粟木 瑞穂

監修尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

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