悪性骨腫瘍患者の治療におけるがん標的薬BMTP-11の可能性

BMTP-11が高リスク骨肉腫を標的とすることが前臨床試験で明らかに

悪性骨腫瘍の中でもっとも多い骨肉腫は治療困難であるが、この重大な疾患の新たな治療戦略として、骨転移を標的とするペプチド模倣薬(BMTP-11)が有望であることがテキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の研究により明らかとなった。

BMTP-11を単独または化学療法剤ゲムシタビンと併用投与した前臨床試験の結果が、全米科学アカデミー会報誌電子版に2017年7月11日掲載された。

骨肉腫は比較的まれな悪性腫瘍であるが、10~20歳までの小児および若年成人の疾患関連死の主な死亡原因の上位にある。にもかかわらず、過去25年間の5年生存率に変化はなく、治療選択肢はほとんどない。しかも、これらの選択可能な治療法による副作用は重大かつ累積的である場合が多く、他の健康被害や主要臓器の損傷をもたらす可能性がある。

MDアンダーソン整形外科腫瘍学 教授であるValerae O. Lewis医師は、「この治療法は、BMTP-11が腫瘍を標的とし、他の臓器への損傷を及ぼさないという点で画期的である」と語った。「本研究は、現在の治療選択肢に見られる累積的かつ致死的な副作用を発現することなく、骨肉腫の治療法を検討する臨床試験の基礎になるとわれわれは考えている」。

この研究では、骨肉腫患者における腫瘍増悪および予後不良に関連する骨肉腫細胞表面受容体としてのIL-11Rαを同定した。 研究チームは、臨床試験中はMDアンダーソンに勤務し、現在はニューメキシコヘルスサイエンス大学(UNMSC)の教授を務めるRenata Pasqualini博士とWadih Arap医学博士が共著者である。この研究チームは、IL-11RαおよびIL-11は、ヒト転移性骨肉腫細胞株において活性を増加していて、このことは、この疾患のマウスモデルにおける肺転移の発生と相関していることを示した。

IL-11Rα発現を標的とすることで骨肉腫細胞株の転移能を抑制することができた。 肺転移に伴う呼吸不全による死亡は、骨肉腫患者にとって現在でも重大な問題である。

Pasqualini博士は、「われわれは骨肉腫モデルで抗腫瘍活性の存在を確認することができた。BMTP-11の初めてのヒト投与試験が最近になって報告されていることから、がん領域のアンメット・メディカル・ニーズであることを踏まえると、今回のproof-of-concept 試験 が論理上次なる段階として、骨肉腫患者を対象としたトランスレーショナルな早期臨床試験へと移行することを期待する」と述べている。

さらにArap博士は「従来型化学療法と分子標的候補薬であるBMTP-11の併用療法を、治療に難渋し苦しむ骨肉腫患者を対象とした初回後の治療レジメンとする治療計画の可能性およびその開発を研究するため、本試験はその基盤となる前臨床試験結果を示した」と述べた。

MDアンダーソンがんセンター研究チームの研究員はEugenie Kleinerman医師(小児科)、Eswaran Devarajan博士(骨軟部腫瘍科)をはじめとする、Marina Cardò-Vila博士(UNMSC)、Dafydd G. Thomas医学博士(ミシガン州立大学)、Richard L. Sidman医師(ハーバード大学医学部)、Serena Marchiò博士(トリノ大学)であった。

BMTP-11および関連する知的財産は、MDアンダーソンによってArrowhead Research Corporation社(カリフォルニア州パサデナ)にライセンス供与されている。

本研究は、Triumph Over Kid Cancer財団、米国国立衛生研究所(P30CA016672およびP30CA118100)、Gillson-Longenbaugh財団およびMarcus財団からの資金提供を受け実施された。

翻訳担当者 ステップアップ!チーム

監修 遠藤 誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院 整形外科)

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