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短期の化学療法が大腸がん患者の最良の治療となり得る

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短期の化学療法が大腸がん患者の最良の治療となり得る

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

一部の大腸がん患者にとって、術後の化学療法をより短期間にすることが望ましいかもしれないという結果が国際的な共同研究から得られた。

 

これは、米国、欧州、アジアで同時に実施された6つの第3相臨床試験を解析して得られた結果である。解析結果は、米国臨床腫瘍学会年次総会で6月4日に発表された。臨床試験に参加した約13,000人の患者はステージIIIの大腸がんを有していたが、これは再発防止のためには手術だけでは不十分とされる段階に腫瘍が進行していたことを意味する。10年以上にわたり、そのような患者に対する標準治療は、6カ月間の術後化学療法、すなわち補助化学療法である。

 

しかし解析の結果、これらの患者の過半数を占める再発リスクが低いと考えられる患者では、3カ月間の補助化学療法で十分である可能性があることが分かった。

 

低リスク患者では、2種類の補助化学療法のどちらかを短期間受けた場合、長期間の治療を受けた場合とほぼ同じ期間、再発のエビデンスなく生存していた。また、リスクの高低に関わらず、3カ月の補助化学療法を受けた全ての患者において、手足のピリピリ感、しびれ、痛みなどの神経障害の割合が大幅に減少した。神経障害はオキサリプラチン使用時に多く現れる厄介で長期にわたる副作用であるが、オキサリプラチンは本臨床試験で用いられたFOLFOXならびにCAPOXの補助化学療法レジメンの主要な薬剤である。

 

この研究にはある種の限界があるために、臨床腫瘍学会に出席した大腸がんの治療にあたる腫瘍学者たちは、この知見が新たな標準治療を支持するかどうかという点に関して全会一致の合意には至らなかった。

 

しかしながら、本臨床試験の責任医師であるメイヨークリニックがんセンターのAxel Grothey博士は「この試験結果はその結論を支持するものだと信じている」と話した。そして、高リスク患者にとって、この試験は治療法についての議論の「枠組みを提供する」ものになるいう。

 

補助化学療法の使用

ステージIIIの大腸がんの診断は、がんが近くのリンパ節に広がっており、原発腫瘍が腸管壁に浸潤していることを意味する。3カ所以上のリンパ節にがん細胞が見つかった場合には再発リスクが高いことが過去の研究から分かっており、そのような場合には集中的な術後療法を行うことが標準的である。

 

しかし、がんが広がっているリンパ節が3つ以下である場合、これらの患者の再発リスクは低いというエビデンスがある。それにもかかわらず、これらの患者の多くは、オキサリプラチンをベースとした化学療法レジメンを6カ月間受けることが依然として推奨されている。Grothey博士は、オキサリプラチンを用いた治療によって誘発された神経障害は何年も続き、しばしば消耗性となって患者のQOLに著しい影響を与えると述べた。

 

治療期間を短縮しても良いかどうかの研究

2007年、ステージIIIの大腸がんを有する患者において、3カ月の補助化学療法が6カ月の補助化学療法に劣らず効果的かどうか、すなわち非劣性かどうかを判定するための十分な臨床試験データを収集する目的で、補助化学療法期間の国際評価(IDEA)共同研究が開始された。

 

NCIが資金を提供するCALGB/SWOG試験80702を含む、IDEAの傘下で実施された6件の臨床試験は全て、ステージIIIの大腸がんを有する患者を無作為に3カ月または6カ月間の補助化学療法に割り付けた。

 

公的または慈善的な支援によるIDEAは、これまでで最大の大腸がんに関する前向き研究であるとGrothey博士は述べた。

 

6つの試験の全患者を解析したところ、3カ月間の補助化学療法が6カ月間の化学療法に比べて非劣性と見なすことができる統計的規準にはわずかに届かなかった。すなわち再発のエビデンスがない無病生存率は、6カ月間の治療を受けたグループで75.5%であったのに対し、3カ月間のグループでは74.6%であった。

 

しかし、臨床試験に参加した患者の約60%を占める低リスクの大腸がん患者では、3年間の無病生存率の差はほとんどなかった(83.1%対83.3%)。

 

さらに、短期間の補助化学治療を受けた患者では、中等度から重度の末梢神経障害の割合が劇的に低下した。使用した補助化学療法のレジメンによって神経障害の発症率にわずかな差があったものの、6カ月間の補助化学療法を受けた患者では、神経障害はほぼ3倍の頻度で発生したとGrothey博士は報告した。

 

治療法が変わるか?

スローンケタリング記念がんセンターで消化器がん患者の診察にあたるAndrew Epstein博士は、IDEAの結果に基づいて治療を変えるべきとするGrothey博士の意見に同意した。

 

「今や、高リスク患者であっても、6カ月未満の補助化学療法を検討することは妥当だ」とEpstein博士は述べた。これらの患者には、既存の神経障害を有する患者、あるいは血球減少症または全身倦怠感など、その他の問題または症状を有する患者も含まれるかもしれない、と説明した。「ほとんどの患者は6カ月間のオキサリプラチン投与に耐えられない」とEpstein博士は語った。「そのため、6カ月間の治療を軽減できるデータを歓迎する」

 

しかしながら、全ての専門家が納得したわけではない。

 

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの結腸直腸センター副所長であるCathy Eng博士は、研究の不十分な点をいくつか指摘した。

 

それは、「3カ月レジメンの非劣性を証明する」という試験の主要目的を達成できなかったこと、また異なるリスクグループ別に解析することが、もともとの試験計画に含まれていないことなどである。Eng博士はまた、CAPOXレジメンのデータの多くが、IDEAの6つの臨床試験のうちのSCOTと呼ばれる1つの臨床試験データのみから成っていることを指摘した。その結果も会議で示された。

 

このような限界があるために「3カ月の補助化学療法が6カ月の補助化学療法に比して劣らないと断定することはできません」と、米国臨床腫瘍学会での試験についてのセッションでEng博士は述べた。

 

治療期間についての議論は、未解決な部分も多いが、会議に出席した研究者と臨床医は同意したようだった。

 

例えば、Epstein博士は、自身が治療を行う際、ステージIIIの患者に丸6カ月間、補助化学療法を行うことはめったにないそうだ。「治療に十分に耐えられる患者」のみ、補助化学療法を6カ月に延長すると付け加えた。そして、そのような患者にも、遅発性神経障害として知られる治療終了後に起こる神経障害のリスクについて、定期的に指導していると話した。

 

また、IDEAの解析によると、CAPOXを3カ月間投与された患者は、6カ月間のCAPOX補助化学療法を受けた患者よりも3年間の無病生存期間がわずかに長いことが示された。しかし、CAPOXの使用は米国では一般的ではないとGrothey博士は述べている。CAPOXレジメンはオキサリプラチンに加えてカペシタビンも使用するが、カペシタビンは患者の保険負担が高く、しばしば「FOLFOXと比較してより高い毒性を有する」と続けた。また、FOLFOXレジメンの使用には、外来点滴を可能にするための外科的なポート植え込みも必要となる。

 

それゆえ今後は、CAPOXの場合、「患者が副作用の多い方の治療を好んで受ける可能性がある。つまり、ポート植え込み手術を受けずに3カ月だけの補助化学療法を受けることを選択するかもしれない」とGrothey博士は語った。

原文掲載日

翻訳相川聡子

監修廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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