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Mammaprint分子検査で死亡リスクが最も低い乳がん患者を特定

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Mammaprint分子検査で死亡リスクが最も低い乳がん患者を特定

カリフォルニア大学サンフランシスコ校

最小限の治療でも超低リスク患者の長期生存をUCSFの研究が示す

分子検査により、診断および腫瘍切除から20年経過した後も乳がんによる死亡リスクが非常に低い患者の特定が可能であることが、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)がスウェーデンの研究者と共同で実施した新たな臨床試験で明らかになった。これにより「超低リスク」の患者は積極的治療や過剰治療を回避できるため、治療に伴う毒性の影響を減らすことにもつながる。

 

「これは乳がんの患者に個別化したケアを提供するための重要な一歩です」と、UCヘルスの乳がん専門外科医であり経営学修士のLaura J. Esserman氏は述べた。「小腫瘍径のリンパ節転移陰性乳がんの検査が可能です。超低リスクの範疇であれば、乳がんで死亡する可能性はきわめて低く、乳腺腫瘤摘出後の放射線治療を含む積極的な治療は不要であると女性に伝えることができます」。

 

がん専門医は、超低リスクの腫瘍の存在について議論し、検診によって悪化する可能性について懸念を表明していた。しかしEsserman医師は、今回の研究結果が、診断時に診断テストを行い超低リスクの腫瘍を特定できるという最初の証拠であると述べた。本試験は、6月29日JAMA Oncology誌に掲載された。

 

「これは素晴らしい進歩です。今日診断された腫瘍の約20〜25%が超低リスクかもしれないのです」と、UCSF教授でCarol Franc Buck Breast Care CentreのディレクターのEsserman医師は話す。同医師はUCSFへレン・ディラー家族総合がんセンター(HDFCCC)の乳腺腫瘍科の共同責任者でもある。

 

診断時の特定

医療界は何年もの間、がんを治癒させる、あるいは比較的容易に治療できるようにと、がんの早期発見に注力してきた。早期発見が一部の患者に利益をもたらす一方で、検診によって、過剰治療につながるような非常にリスクが低く、生命を脅かすことのないがんを検出する可能性がある。しかし乳がんは診断後、何年にもわたり再発する可能性があり、低悪性度の腫瘍の場合、大部分のリスクが診断から5年後以降に発生するなど様々な問題が重なっていた。これまでは、医師がこうした晩期再発を本当に避けられるという確信を持てなかったため、診断時に超低リスクの腫瘍を確実に識別するツールを使うことができなかった。

 

この新たな研究では、70遺伝子の検査で、不活性あるいは成長の遅い腫瘍を正確かつ確実に特定できるかどうかを見極め、また診断から20年後までの再発のリスクを評価した。同じ検査によって、昨年は早期乳がんでも従来の高リスク基準を満たしていた患者のほぼ半数が、腫瘍の生物学的特性に基づいて、安全に化学療法を回避できることが示された。

 

本試験の著者らは、UCSFのがん研究者Laura van ‘t Veer博士が考案したMammaPrint(マンマプリント)と呼ばれる検査であることを公表した。同博士はこの新たな試験の共筆頭著者であり、HDFCCCの乳腺腫瘍プログラムの共同リーダーでもある。マンマプリントは、van’t Veer博士が共同設立者であるAgendia社が生産する70遺伝子シグネチャーの検査で、早期乳がん患者でがんが再発するかどうかを予測することができる。2007年に米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。

 

15%は超低リスク

新たな分析では、研究者は乳がん患者を20年以上にわたり評価し、転移進行のリスクが全くない、あるいはほとんどない腫瘍の評価を試みた。その際、ストックホルム乳がん研究グループ(STO)と協力して、タモキシフェンとランダム化臨床試験の一部で、何十年も追跡されてきた患者を評価した。

 

STO-3低リスク試験には、直径3cm以下の腫瘍を有する1,780人のリンパ節転移陰性患者が含まれた。術後タモキシフェン(40mg /日)投与を2年間受けた群と、術後療法を受けていない群にランダムに割り付けた。術後補助療法療法は、再発性腫瘍を抑制する意図で、最初の手術または治療後に行われる治療である。

 

すべての女性は、外科的に腫瘍の切除を受けた。 研究者らはこれらの組織を用いて、合計652人(うち311人はタモキシフェンを受け、339人は術後薬物療法を受けていない)を分析した。大多数の女性(79%)は、乳房切除とリンパ節切除を受けていた。データには、より積極的ではない局所療法の症例は含まれていなかった。すべての女性の腫瘍は、マンモグラフィによる検診導入期以前に発見されたため、マンモグラフィで検出された例はなかった。

 

この多遺伝子検査では、患者の42%が高リスク、58%が低リスクと分類された。研究者らは、低リスク患者は95%の5年生存率を示したが、その後、多くの患者が乳がんで死亡したことを発見した。

 

この検査ではまた、15%(98人)が超低リスクに分類された。乳がん検診が普及する以前でも、こうした超低リスク腫瘍が乳がんの分布に本来含まれていることを示している。低リスク腫瘍のすべてが超低リスクというわけではない。実際、超低リスクの分子定義に見合うものは、4分の1にすぎなかった。超低リスクの腫瘍を有する女性は、タモキシフェンを2年間使用したかどうかにかかわらず、非常に予後が良かったと、著者らは述べた。

 

「これは早期発見が果たす役割と、恩恵を受ける可能性の高い人に焦点を当てることで検診の効果をいかに高められるかを強調しています」と、Esserman医師は述べた。

 

治療コースの選択

本試験の結果は、70遺伝子検査が医師および患者が治療コースを決定するのを助け、全身療法または局所療法を選択する際の情報として使用できることを示唆している。著者は、非検診集団でも女性の15%が超低リスクの腫瘍を有すると述べている。広範な検診をした場合、閉経後の女性の約25%が、再発または死亡と関連することがめったにない超低リスクの乳がんを有する可能性があると報告している。75歳以上の超低リスクの高齢女性で、他の病気があり、平均余命が10年未満の場合、治療は単純な腫瘍切除で十分かもしれないと、著者は述べた。

 

「全身に波及するリスクがほとんどない、または全くないという乳がんもあります」

ローラ・エッサーマン医師

「全身に波及するリスクがほとんどない、または全くないという乳がんもあります」と、Esserman医師は話す。「70遺伝子シグネチャーにより、超低リスクに分類される腫瘍を有する女性は、ホルモン療法の有無にかかわらず、長期的に優れた予後が期待できると確実に言えます。最初からリスクがほとんどない女性を正確に特定できる検査法の存在は、患者にも臨床医からも歓迎されるはずです。これらのツールによって、超低リスクの腫瘍を持つ女性に対しては、治療を個別化して、安全かつ最小限の治療を提供することが可能になるのです」。

 

試験に用いた腫瘍サンプルの分析は、Agendia社が無償で行った。Van ‘t Veer氏は、Agendia NV社にライセンス契約されているMammaPrint70遺伝子リスクシグネチャーの発明者の1人。また同氏はAgendia NVの共同設立者、パートタイム従業員、経営委員会のメンバー、株主として、以前に「本研究以外でも、個人的な報酬や支援をAgendia NV社から受けた」と開示している。 マンマプリントに関連する特許はオランダがんセンターが保有しており、UCSFはマンマプリントの特許に金銭的利害は持たない。

 

UCSFの共同執筆者は以下のとおりである: Christina Yau, PhD, Carlie K. Thompson, MD. Senior author Linda S. Lindstrom, PhD, of the Karolinska Institutet and University Hospital in Stockholm, worked closely with the UCSF team. STO investigators included Nicholas P. Tobin, PhD, and Tommy Fornander, MD, PhD, of the Karolinska Institutet and University Hospital in Stockholm; and Bo Nordenskjold, MD, PhD, and Olle Stal, PhD, of Linkoping University in Linkoping, Sweden. Christopher C. Benz, MD, director of the Cancer and Developmental Therapeutics Program at the Buck Institute for Research on Aging, was involved in the original design of the study. Other co-authors are Alexander D. Borowsky, MD, of the Center for Comparative Medicine at UC Davis; and Katherine A. Hoadley, PhD, of the Lineberger Comprehensive Cancer Center at the University of North Carolina, Chapel Hill. Rick Baehner, MD, in the UCSF Department of Pathology, helped lead the pathology review.

 

本試験は、カリフォルニア乳がん研究プログラム助成180B-0065で開始され、UO1CA187945およびU01CA196404からの継続支援、スウェーデン研究評議会からの助成(521-2014-2057および2014-1962)、Gosta Miltons募金基金の助成を受けた。乳がん研究財団も本試験を支援した。

 

 

 

原文掲載日

翻訳片瀬ケイ

監修原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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