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2つの併用療法、メラノーマの脳転移を大半の患者で縮小

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2つの併用療法、メラノーマの脳転移を大半の患者で縮小

MDアンダーソンがんセンター

予後不良な患者に対する免疫療法薬(ニボルマブ+イピリムマブ)、および分子標的療法薬(ダブラフェニブ+トラメチニブ)による2種の併用治療が、MDアンダーソンの研究者により発表された。

 

脳転移を有するメラノーマ(悪性黒色腫)に対する治療法は、これまで進歩がみられなかったが、2種類の併用療法が同疾患に対して高い奏効率を示し、この治療法が新たな選択肢となる可能性がある。

 

2種類の免疫療法薬を併用投与するレジメン、および2種類の分子標的薬を併用投与するレジメンが多施設共同臨床試験において、患者の50%以上で転移性脳腫瘍を有意に縮小させたことが、本日、2017年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会でテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの主任研究者によって発表された。

 

「今回得られた有望な結果は、メラノーマの主要な死因である脳転移を有する患者にとって希望となる、新たな治療選択肢が生まれる可能性を示しています」と、メラノーマ悪性腫瘍部門の准教授であり、今回の免疫療法薬を用いた臨床試験の責任者であるHussein Tawbi医学博士は述べている。

 

臨床試験のプロトコルでは、脳転移を有するメラノーマ患者が除外されていたり、治験薬を投与する前に脳腫瘍に対してまず放射線療法の実施が求められていたりすることが非常に多い、とTawbi氏は述べている。多くの有望な臨床試験で、脳転移をきたしたメラノーマに対する実際の薬剤の効果が事実上検討されていない。

 

「われわれは、脳転移を有するメラノーマ患者に対する全身療法を早急に探し出すことを目標としています。今回実施した試験から、最初に放射線療法を実施しなくても、脳内で薬剤が有効であることが明らかになりました」と、Tawbi氏は述べる。脳転移は、ステージIVのメラノーマ患者すなわち転移性メラノーマ患者の約70%で発生している。

 

「今回得られた試験結果から、使用した2種類の併用療法の安全性と有効性が証明されたことに加えて、脳転移を有するメラノーマ患者を対象とした臨床試験も実施可能であることが示され、今後より多くの薬剤がこれらの患者に使用できることになるでしょう」と、メラノーマ悪性腫瘍部門の准教授で、MDアンダーソンのムーン・ショットプログラムの共同責任者であるMichael Davies医学博士は述べている。

 

Davies氏およびTawbi氏は、脳転移をきたしたメラノーマの治療法改善に取り組んでいるMDアンダーソンのチームの一員である。今回行われた2つの臨床試験は、Davies氏およびTawbi氏が計画し、主導した。

 

過去6年間、免疫療法薬や標的薬をはじめとする新薬が次々と登場し、転移性メラノーマ患者の延命を可能にした。しかし、こうした薬剤が脳内の腫瘍に到達できるかという懸念や、通常、脳転移をきたしたメラノーマ患者の予後は不良であることから、医薬品開発企業は、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得るため、未治療の脳転移患者の臨床試験への参加をすべて見送ってきた。

 

脳には転移しなかった転移性メラノーマ患者の全生存期間中央値は、当初は9カ月であったが、延長している。しかし、脳に転移した場合のメラノーマ患者の生存期間中央値は、当初から4~5カ月のままで、あまり延長していない。

 

チェックポイント阻害薬と効果持続期間

Tawbi氏は、CHECKMATE-204試験で認められた治療効果について最初の報告を行った。同試験では、すべての患者に対し、T細胞のCTLA-4チェックポイントを阻害するイピリムマブ(ヤーボイ)およびPD-1チェックポイントを阻害するニボルマブ(オプジーボ)による併用治療が実施された。この2つのチェックポイントを阻害することにより、T細胞が活性化され、抗腫瘍免疫応答が示される。ニボルマブおよびイピリムマブは、抗体医薬品の点滴薬である。

 

Tawbi氏によると、同試験では、これまでに治療を受けた患者75人のうち41人(54%)において、脳腫瘍が著しく縮小したという前例のない結果が得られており、さらに、完全奏効(すべての腫瘍が消失した状態)が16人で認められているという。また、脳腫瘍が著しく縮小した41人のうち、追跡調査開始後9カ月目で疾患進行が認められたのは1人のみであった。このことから、ニボルマブおよびイピリムマブは、転移性メラノーマ患者に奏効した場合、その効果が持続するという特徴を強く示していると、Tawbi氏は述べている。

 

脳腫瘍の治療は、薬剤が血液脳関門(血液が運搬する毒性物質を脳に入り込ませないよう脳を保護する血管上の密着構造)を通過する必要がある。免疫チェックポイント薬は、腫瘍を直接攻撃するのではなく、T細胞に作用する。T細胞は血液脳関門を通過することができるため、脳腫瘍には免疫チェックポイント薬による治療が有効であると考えられている。

 

その一方で、免疫療法薬が脳腫瘍患者のリスクとなる可能性があることもTawbi氏は述べている。 チェックポイントが阻害されると、免疫応答によって腫瘍が炎症を起こし、腫瘍が縮小する前に腫脹する場合がある。

 

「炎症や腫脹は頭蓋内という閉ざされた空間では、神経系の有害反応を引き起こす可能性があります。同試験での神経学的な有害事象の発生率は、脳への転移のない転移性メラノーマ患者と比較して、上昇していませんでした」とTawbi氏は述べている。

 

患者の52%において、治療に関連した重篤な有害反応(グレード3またはグレード4の有害事象)が生じたものの、問題なくコントロールされていた。同試験で認められた有害反応は、イピリムマブおよびニボルマブによる併用療法を受けたメラノーマ患者でよく認められているものであった。治療に関連した心臓の炎症により、1人が死亡に至った。

 

2剤の分子標的薬による併用療法

COMBI-MB試験の結果については、Davies氏が報告を行った。同試験に参加した患者は全員、BRAF V600変異による転移性メラノーマを有していた。BRAF V600変異は、メラノーマで最もよくみられる発がん性変異であり、患者の約半数で生じている。同試験では、患者に対し、BRAF V600突然変異を標的とするダブラフェニブ(タフィンラー)、MEK1およびMEK 2に結合して阻害するトラメチニブ(メキニスト)による治療が実施された。BRAFおよびMEKは共に、細胞増殖を調節するRAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達経路に存在するプロテインキナーゼである。ダブラフェニブおよびトラメチニブは、転移性または手術不能のメラノーマを適応とする経口単剤療法、併用療法として承認されている。

 

同試験に参加した患者は、BRAF突然変異の種類、脳転移に対する前治療の有無、脳転移症状のコントロールの有無によって4つの群に分けられた。BRAF V600E突然変異を有し、脳腫瘍に対する前治療歴はなく、脳転移による症状がコントロールされている群の患者数が最も多かった。

 

Davies氏によると、同群の患者76人のうち44人(58%)で脳腫瘍の著しい縮小が認められ、4人で完全奏効が認められたという。他の3群においても同様の結果が得られた。しかし、この3群に割り付けられた患者数は、1群あたり16~17人と、はるかに少なかった。

 

同試験で認められたダブラフェニブおよびトラメチニブの奏効率は、脳への転移はない転移性メラノーマ患者を対象とした試験で以前に認められた奏効率とほぼ等しかった。しかし、脳腫瘍がコントールされていた期間は短く、効果の平均持続期間は6〜7カ月間であった。以前実施された脳転移のない患者を対象とした試験では効果が平均で約1年間持続したことや、イピリムマブおよびニボルマブの効果持続期間を考えると、ダブラフェニブおよびトラメチニブの効果持続期間は短かった。

 

「ダブラフェニブおよびトラメチニブによる治療は、まずは素晴らしい結果を示しました。重要な問題は、どのようにしてこの2つの薬剤の効果を持続させるかということです」とDavies氏は述べている。ダブラフェニブおよびトラメチニブと、脳転移において特異的にみられる他の経路を遮断する薬剤や放射線療法など他の治療法との組み合わせが、1つの治療法となる可能性がある。また、予後改善の戦略として、ダブラフェニブおよびトラメチニブを高用量で投与する試験を実施する可能性がある、とDavies氏と述べた。

 

COMBI-MB試験の結果は、6月4日付けの電子版Lancet Oncology誌に掲載されている。

 

次の段階
Davies氏およびTawbi氏は、脳転移を伴うメラノーマ患者に対するダブラフェニブおよびトラメチニブによる併用療法の効果を十分に評価するには、今後も追跡調査を行う必要があると述べている。しかし、併用療法を用いた2つの試験で最初に得られた結果は、これまで研究対象とならなかった脳転移を有するメラノーマ患者を対象とする前向き臨床試験も実施可能であることを強力に裏付け、また、予後を改善させるため、引き続き研究が実施される必要性があることも明らかした。

 

免疫療法薬の試験は、イピリムマブおよびニボルマブを販売するBristol-Myers Squibb社が支援を行った。分子標的薬の試験は、ダブラフェニブおよびトラメチニブを販売するNovartis Pharmaceuticals社が支援を行った。

 

Davies氏の他にLancet Oncology誌の共著者は、共同代表著者のPhilippe Saiag医師(Hôpital A Paré, APHP, Boulogne Billancourt, France)と以下のとおり。 Caroline Robert, M.D., Gustave Roussy, Université Paris-Sud, Faculté de Médecine, Villejuif, France; Jean-Jacques Grob, M.D., Centre Hospitalo-Universitaire Timone, Aix Marseille University, Marseille, France: Keith Flaherty, M.D., Massachusetts General Hospital Cancer Center, Boston; Ana Arance, M.D., Hospital Clinic of Barcelona, Carrer de Villarroel, Barcelona, Spain;  Vanna Chiarion-Sileni,Veneto, M.D.,  Oncology Institute-IRCCS, Padova, Italy; Luc Thomas, M.D., Centre Hospitalier Lyon-Sud, Pierre-Bénite, France; Thierry Lesimple, M.D., Centre Eugène Marquis, Rennes, France;  Laurent Mortier, M.D., Le Centre Hospitalier Régional Universitaire de Lille, University Lille 2, Lille, France;  Stergios J Moschos, M.D., UNC Lineberger Comprehensive Cancer Center, Chapel Hill, N.C.; David Hogg, M.D., Princess Margaret Cancer Centre, Toronto, Ontario, Canada; Iván Márquez-Rodas, M.D., Hospital General Universitario Gregorio Marañon, Madrid, Spain; Michele Del Vecchio, M.D., Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei Tumori, Milano, Italy;  Céleste Lebbé, M.D., INSERM U976, University Paris Diderot, Hôpital Saint Louis Paris, France; Nicolas Meyer, M.D., Cancer Toulouse Oncopole, Toulouse, France; Ying Zhang, Ph.D.,  Yingjie Huang, M.D., and Bijoyesh Mookerjee, M.D., Novartis Pharmaceuticals Corporation, East Hanover, N.J., Georgina Long, M.D., Melanoma Institute Australia, The University of Sydney, Royal North Shore and Mater Hospitals.

原文掲載日

翻訳重森玲子

監修野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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