子宮頸がん予防に対するHPVワクチン接種ガイドラインが発行

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は本日、子宮頸がん予防に対するヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種の臨床実践ガイドラインを発行した。これは、子宮頸がん一次予防に関する初のガイドラインであり、社会経済的および構造的資源状況のレベルが異なる複数の地域に合わせて、世界の医療提供者にエビデンスに基づいた指針を提供するものである。

ガイドラインには、4つのレベル、すなわち基本的、限定的、強化、最大の資源状況による具体的な推奨事項が含まれる。レベルは、国や地域の財源だけでなく、人材、インフラ、サービスへのアクセスなどの保健システムの発展にも関係する。本ガイドラインはASCOの子宮頸がんに関する2つの世界的、資源層別ガイドラインを補完するものであり、これら4つの資源レベルに階層化されている1,2

主なガイドラインの推奨事項:

●資源の設定とは無関係にすべての環境において、9~14歳の少女に対する2回のヒトパピローマウイルスワクチン投与は、6カ月以上の間隔をあけ、12~15カ月までに行われることが推奨される。

●HIV陽性の少女は3回の投与を受ける必要がある。

●最大および強化された資源状況の場合:

・15歳以上の少女が、15歳以前に初回投与を受けた場合、2回の投与で完遂することが可能である。

・15歳までに初回投与を受けていない場合は、3回の投与を受ける必要がある。

・どちらの場合も、ワクチン接種は26歳までに行う必要がある。

●限定的および基本的な資源状況の場合:

9〜14歳の少女がワクチン接種を受けた後に十分な資源が残っている場合、1回投与を受けた少女は15〜26歳の間に追加の投与を受けてもよい。

●少年へのワクチン接種:すべての資源状況で、少年がワクチン接種を受けることは可能である。優先順位の高い女性の対象集団の50%以上に適用範囲があり、かつ十分な資源があるなら、そのようなワクチン接種は費用対効果がある。

子宮頸がんは、世界の女性で4番目に多いがんであり、発展途上の地域では、罹患(りかん)した際の費用負担が大きい。 実際、子宮頸がん診断の85%、子宮頸がんによる死亡の87%は、アフリカや中南米の一部を含む開発の進んでいない地域で発生している。

「資源活用は国によって大きく異なるため、どこでもHPVワクチン接種が利用できるよう戦略を見直す必要があります」と、スペイン、バルセロナのInstitut Català d’Oncologia のがん疫学研究プログラムのの責任者であり、ガイドラインを開発した専門家委員会の共同議長であるSilvia deSanjosé博士は述べた。「本ガイドラインは、さまざまな資源レベルに適応できる子宮頸がんワクチン接種の推奨事項を提供する唯一のものであり、世界の保健社会に大きな影響を及ぼすことが期待されています」。

HPV感染は、事実上、世界中ですべての子宮頸がんの原因となる。 HPV感染は、尖圭(せんけい)コンジローマやその他のがんにつながる可能性もあるが、最もよくみられる重篤な症状は子宮頸がんである。他の既存のHPV予防接種ガイドラインとは異なり、ASCOのガイドラインでは、子宮頸がん予防に対するHPVワクチン接種の具体的な使用に焦点を当てている。

「HPVワクチンは10年以上にわたり使用されてきたが、米国などの高資源国を含む多くの地域で、ワクチン接種は理想的ではなかった」とアルゼンチンのブエノスアイレスにあるInstituto Nacional del Cancer 所属の研究者でガイドラインを開発した専門家委員会の共同議長であるSilvina Arrossi博士は語った。「ASCOは、がん専門医の組織として、この非常に困難ながんから世界中の女性をさらに救うための努力とHPVワクチン接種プログラムを支持し続けています」。

ガイドラインの方法論
 

ガイドラインの推奨事項は、HPVおよびHPVワクチンの世界的に最先端の研究リーダーを含む、腫瘍学、産科/婦人科学、公衆衛生、がんコントロール、疫学/生物統計学、健康経済学、行動/実施科学、患者擁護学の専門家による多国籍および多分野の研究員によって開発された。

専門家委員は、体系的レビュー、既存のガイドライン、費用対効果分析など、1966年から2015年までの関連文献をレビューした。本ガイドラインは、世界保健機関(WHO)ガイドライン、米国疾病対策予防センター(CDC)ガイドライン、予防接種ガイドラインに関する国家諮問委員会(カナダ)、ドイツのガイドライン、およびオーストラリアの予防接種ガイドラインに示された推奨事項を補強するものである。

子宮頸がんの一次予防:米国臨床腫瘍学会資源層別臨床ガイドラインが本日、Journal of Global Oncologyに掲載された。本ガイドラインは、補足資料と共にhttp://www.asco.org/rs-cervical-cancer-primary-prev-guidelineから入手可能である。

翻訳担当者 橋本 奈美

監修 原野 謙一(乳腺・婦人科腫瘍内科/国立がん研究センター東病院)

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