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移植関連サイトメガロウイルス感染症の発症を予防する新薬

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移植関連サイトメガロウイルス感染症の発症を予防する新薬

ダナファーバーがん研究所

ドナー由来幹細胞移植の安全性が大きく向上する中、新規薬剤により移植後の患者で最も好発するウイルス感染症の発症が予防できることが、ダナファーバーがん研究所およびブリガム&ウィメンズ病院 の研究者らが主導する大規模臨床試験で示された。

 

移植患者のサイトメガロウイルス(CMV)感染の発症を予防し、薬剤自体の有益性を打ち消す有害作用のない薬剤を特定する取り組みは10年に及びますが、この試験結果は大きな進歩です、と本研究の著者は述べた。

 

その新規薬剤であるレテルモビルの移植患者のCMV感染症の発症予防に関する国際共同第 3 相試験から得たこの知見は、2017年2月22日にフロリダ州、オーランドで行われた米国骨髄移植学会および国際血液骨髄移植研究センター(CIBMTR)共催の2017年Bone Marrow Transplant Tandem Meetingsで発表予定である。

 

本試験は20カ国67研究施設の成人患者565人を対象とし、ドナー由来の幹細胞移植後の活動性CMV感染症の発症予防おけるレテルモビルの効果を、プラセボと比較した。患者は、血液関連の悪性疾患あるいは他の疾患の治療として移植を予定しており、全員がすでにCMVに感染しているが、免疫系により潜伏感染状態であった。最長14週間の治療期間完了後24週間の時点で、プラセボ群の患者の61%が治療を要する重篤なCMV感染症を発症、あるいは試験を中止した。一方、治療を要する重篤なCMV感染症を発症、あるいは治療を完了しなかった患者はレテルモビル群の患者の38%のみであった。

 

幹細胞移植患者の活動性CMV感染症を予防できる他剤とは異なり、レテルモビルは許容できない毒性を生じさせずに発症を予防した。レテルモビルに関連する有害作用は、軽度の悪心や嘔吐、および多少の腫脹などであり、そのほとんどが耐容可能であったことを研究者らは確認した。また、レテルモビルは生存に対する利益をもたらした。すなわち、治療期間完了後24週間の時点で死亡したのはプラセボ群の患者の15%であったのに対し、レテルモビル群では10%であった。

 

「幹細胞移植患者のCMV感染症に対し、本当に安全で効果的に予防できる薬剤を初めて得たようです」、と本研究の筆頭著者でダナファーバーがん研究所およびBWHの感染症専門医であるFrancisco Marty医師は述べた。「レテルモビルにより多くの患者が感染を回避でき、その有害作用は伴わないか軽度であり、また、移植後6か月間は生存に対する利益をもたらすと考えられます」。

 

造血幹細胞はあらゆる種類の血液細胞(免疫系の白血球など)をつくり出すもとになっている。ドナー由来の造血幹細胞移植は白血病、リンパ腫、骨髄腫などの血液関連の悪性腫瘍の治療および、いくつかの非悪性血液疾患に行われる。通常、患者に化学療法を行い、血液細胞を形成する骨髄を一掃あるいは減少させた後に、血液供給と免疫系を再構築する目的でドナー由来の幹細胞を注入する。

 

移植技術の改良により処置の安全性が急激に向上したものの、移植後のCMV感染症の再活性化が長年の問題となっていた。

 

CMVはヘルペスウィルスの1種であり、CMV感染症は世界で最も多くみられるウイルス感染の1つである。米国では、成人期前に50%超の人が感染すると推定される。米国以外では、CMVの感染率は50%よりかなり高い可能性がある。CMV感染症の症状は無症状のものからインフルエンザ様の発熱や単核球症(モノ[mono])まである。免疫系がCMV感染症を抑制すると、ウイルスは体内で潜伏状態となる。

 

幹細胞移植は、移植前の化学療法および移植片対宿主病予防処置により免疫系が急激に消滅あるいは縮減する。このために、幹細胞移植による衝撃は、CMVが再覚醒し、新たに再構築された免疫系が確立される前に猛威をふるう機会となり得る。骨髄移植治療が始まったばかりの時期には、移植レシピエントの60~70%がCMV感染症を発症した、とMarty氏は語る。発症した患者のうち20~30%がサイトメガロウイルス性肺炎であり、そのうち80%が死亡した。

 

先行臨床試験では、幹細胞移植患者のCMV感染症発症予防を目的とした数種の薬剤はいずれも効果がなかったか耐えがたいほどの有害事象を生じた。安全な予防薬がないため、医師は「サーベイランス」(経過の観察・監視の意)アプローチを行った。サーベイランスでは、患者がCMV感染症を発症した場合にのみ、短期間に限って治療を行う。この戦略は大半が成功しており、現在、患者が肺や他の臓器を侵すCMV疾患を発症する確率は2~3%のみである。しかし、現在使用されている薬剤の有害作用はしばしば重篤であることから、有用な予防薬の探索が続いていた。

 

レテルモビルの作用機序は既存の薬剤の作用機序と異なる。既存の薬剤はDNAポリメラーゼとして知られる酵素の阻害により作用する。DNAポリメラーゼはウイルスが自身のDNAを複製する際に利用する。(ヒト細胞は同じプロセスを利用して自身のDNAを増殖させる。)一方、CMVは感染細胞内に封入されることにより生存し続け、他の細胞を感染させることが可能となるが、レテルモビルは感染細胞内にCMVが「封入される」プロセスを遮断する。この封入プロセスは感染細胞のみで起こりヒト細胞で発生しないという事実が、レテルモビルが通常は軽度の有害作用のみに留まることの部分的な説明となるかもしれない、と研究者らは言う。

 

本試験では、移植後平均9日目から患者にレテルモビルあるいはプラセボを投与した。「ウイルスが再活性化する機会を得る前に抑制することが本試験の目標でした。」とMarty氏は述べた。「本試験結果は、ドナー由来の幹細胞移植患者で移植後に発症するCMV感染症の新たな予防策がレテルモビルから得られるかもしれないという期待が持てます。」

 

本研究の統括著者は、レテルモビルの開発元であるMerck & Co.社のCyrus Badshah医師である。本研究の共同著者は以下のとおりである。Per T. Ljungman, MD, PhD, of Karolinska University Hospital, Stockholm, Sweden; Roy F. Chemaly, MD, MPH, of MD Anderson Cancer Center; Johan A. Maertens, MD, PhD, of Universitaire Ziekenhuizen, Leuven, Belgium; David R. Snydman, MD, of Tufts Medical Center; Rafael F. Duarte, MD, PhD, of Hospital Universitario Puerta de Hierro, Madrid, Spain; Emily A. Blumberg, MD, of the University of Pennsylvania; Hermann Einsele, MD, of Universitätsklinikum Würzburg, Würzburg, Germany; Michael J. Boeckh, MD, of Fred Hutchinson Cancer Research Center; and Valerie L. Teal, MS, Hong Wan, PhD, Nicholas A. Kartsonis, MD, and Randi Y. Leavitt, MD, PhD, of Merck & Co.

原文掲載日

翻訳三浦恵子

監修喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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