PETスキャンが食道がん治療法の選択に有効

専門家の見解

「PETスキャンは、腫瘍医が食道がんに対する化学療法を微調整して実施し、個々の患者ごとに化学療法の有効性を最大化できるようにする有益な手段であると判明したようです」とASCO専門委員Nancy Baxter医師は語った。Nancy Baxter医師は、医学博士、FRCSC(Fellow of the Royal College of Surgeons of Canada)、FACS(米国外科学会特別研究員:Fellow of the American College of Surgeons)、および本日のプレスキャスト(インターネット生放送による記者会見)の司会である。また、「このことは、革新が切望される疾患の治療に対する新たなアプローチにとって心強い証拠です」とも語った。

連邦政府の資金による臨床試験から得られた知見により、食道がん患者に対する予後を改善する新たな方法が示された。すなわち、PETスキャンを用いて、初回化学療法に対する腫瘍反応を評価することで、医師は今後行う化学療法を調整できるかもしれないのだ。化学療法、放射線療法、および手術を併用した積極的治療にもかかわらず、食道がん患者の予後は不良であり、診断後5年の時点における生存割合は50%に満たない。転帰を改善するためには、治療有効性を観察する手段が緊要である。本試験は、サンフランシスコで、近く行われる2017年消化器がんシンポジウム(Gastrointestinal Cancers Symposium)で発表予定である。

病期II~IIIの食道がん患者および胃食道接合部(GEJ)がん患者には、通常、化学療法と放射線療法(化学放射線療法)を5.5週間併用後、手術を行う。手術前の化学放射線療法の実施により、手術単独で行う場合と比べて生存率を改善することが判明している。化学放射線療法期間中に利用できる化学療法レジメンは複数あるが、医師には、ある患者において特定の化学療法が効果を発揮するかどうかを予測する信頼性の高い方法がない。

「本試験では、化学放射線療法前に導入化学療法を追加して実施しています。この導入化学療法後にPETスキャンを用いて反応を評価することにより、医師が軌道修正を速やかに行い、患者に対する化学療法の有効性を最大限にできることを示しています」とKaryn A. Goodman医師は語った。同医師は、コロラド大学医学部(University of Colorado School of Medicine、コロラド州、オーロラ)の放射線腫瘍医である。また、「本アプローチにより手術までの患者の時間は長くなりますが、PETスキャンを利用して治療効果を評価することにより、病理学的完全奏効(手術時に採取した組織標本にがんの痕跡が認められない状態)の数値が示す通り、治療効果が改善することがわかりました」とも語った。

PETスキャンは、リンパ腫における治療決定の指針として通常使われているが、同じ目的で固形腫瘍に使用することについては、検討が始まったばかりである。本試験は、食道がんの手術前治療の決定におけるPET画像法の有効性を示す最初の試験である。

試験

初回PETスキャンの結果に従い、病期II~IIIの食道がん患者および胃食道接合部腺がん患者257人を、2種類の導入化学療法レジメン(修正 FOLFOX-6療法、カルボプラチン+パクリタキセル併用療法)のうち、いずれか1つに無作為に割りつけた。最初に導入療法を数サイクル行った後、PETスキャンを再び実施した。PETスキャンの結果が導入化学療法の奏効を示した場合、化学放射線療法期間中、患者に同一の化学療法レジメンを継続した。

PETスキャンの結果により導入化学療法レジメンが奏効しなかったことが明らかになった場合、化学放射線療法期間中、2つの化学療法レジメンのもう一方に切り替えた。総合すると、PETスキャン後に化学療法レジメンを切り替えたのは、FOLFOX導入化学療法群の患者129人中39人、およびカルボプラチン+パクリタキセル併用療法群の患者128人中49人であった。

主な知見

導入療法後に別の化学療法に切り替えた患者のうち、15.6%で最終的に病理学的完全奏効を達成した。PETスキャンの結果に基づく手術前の化学療法変更をしなかった先行試験では、導入化学療法に反応しない腫瘍(PETスキャンで評価)を有する患者の病理学的完全奏効率はわずか5%であった。先行研究から、このがんにおいて病理学的完全奏効と生存期間が長いこととは関連があることが示唆されていた。

次のステップ

PETスキャンは、食道がんおよび胃食道接合部がんの病期分類と治療奏効の評価の用途として、メディケアが適用される。本試験は、PETスキャンがいずれは、食道がん患者および胃食道接合部がん患者の治療決定に役立つように利用可能になることを示している。「しかし、依然として、この疾患に対する最も有効なレジメンを一層改良する必要があります」と Goodman博士は語った。

食道がんおよび胃食道接合部がんについて

全世界で、毎年40万人が食道がんにより死亡している[1]。米国では、食道がんおよび胃食道接合部がんの発生率は1970年代から上昇し続けている。米国では、2016年に推定で1.7万人が食道がんの診断を受け、1.6万人がこの疾患で死亡した[2]。 米国で最も好発する種類は腺がんであり、食道がんの70%を占める。

本試験は、国立衛生研究所の助成金による支援を受けた。

[1] http://globocan.iarc.fr/Pages/fact_sheets_cancer.aspx?cancer=oesophagus Accessed on December 8, 2016.
[2] https://seer.cancer.gov/statfacts/html/esoph.html Accessed on December 8, 2016.

翻訳担当者 三浦恵子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

食道がんに関連する記事

進行胃/胃食道接合部腺がんにフルキンチニブ+パクリタキセル併用療法の画像

進行胃/胃食道接合部腺がんにフルキンチニブ+パクリタキセル併用療法

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「FRUTIGA試験において、fruquintinib[フルキンチニブ]とパクリタキセルの併用は、進行した胃/胃食道接合部腺がん...
食道がんに免疫療法薬チラゴルマブ+アテゾリズマブ併用療法の画像

食道がんに免疫療法薬チラゴルマブ+アテゾリズマブ併用療法

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「世界中の食道がんの多くは食道扁平上皮がんです。この第3相試験は、新しいチェックポイント阻害薬であるtiragolumab[チラ...
進行した胃・食道がんに2種の免疫チェックポイント(PD-1、TIGIT)阻害薬併用が有望の画像

進行した胃・食道がんに2種の免疫チェックポイント(PD-1、TIGIT)阻害薬併用が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「PD-1阻害薬+化学療法の併用は、胃・食道がんに対する標準的な一次治療です。進行した胃・食道がんには新たな治療法の開発が必要で...
胃・食道がんに新たな抗体薬物複合体が有望の画像

胃・食道がんに新たな抗体薬物複合体が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCOの見解「最近行われた第3相SPOTLIGHT試験およびGLOW試験により、CLDN18.2は胃・食道がん治療の標的として有望であることがわか...