術前化学療法で病理学的完全奏効の乳がん患者に手術回避の可能性 | 海外がん医療情報リファレンス

術前化学療法で病理学的完全奏効の乳がん患者に手術回避の可能性

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

術前化学療法で病理学的完全奏効の乳がん患者に手術回避の可能性

MDアンダーソンがんセンター

将来、手術を回避できる浸潤乳がん患者が出てくる可能性を示唆

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターで行われたパイロット研究で、化学療法や標的治療の術前全身化学療法(NST)後に病理学的完全奏効(pCR)となる乳がん患者を画像ガイド下生検が識別した。今後の研究でこの発見が再現されれば、本研究は、治療がさらに精選・個別化されるに伴い、多くの患者で手術を省略することができる可能性があることを初めて示唆することになる。

 

MDアンダーソン乳腺腫瘍外科教授で本研究の臨床試験責任医師であるHenry M. Kuerer医師は、2016年サンアントニオ乳がんシンポジウムのポスターセッションで「最新演題(Late-Breaking Abstract)」として発表した。

 

Kuerer医師によると、世界中で毎年約37万人の女性がトリプルネガティブやHER2陽性乳がんと診断されている。最近、両方のサブタイプの乳がんを対象とした術前化学療法が進歩しており、これらの患者の手術時のpCR率は60%にもなる可能性がある。この高いpCR率は、当然のことながら、すべての患者、特に術後放射線療法を受ける患者にとって、手術が必要かどうかという疑問を投げかけている。

 

「病理学的レビュー時に、確認できる残存病変がない可能性がこんなにも高いことから、少なくともこれら2つの乳がんサブタイプでは、もしかすると手術は過剰なのではないかと私たちは考えます。化学療法後にがんが残っておらず局所放射線療法を受ける患者にとって、実際のところ手術は必要なのでしょうか」とKuerer医師は述べる。

 

課題は、標準の乳房撮像法がNST後の残存病変を正確に予測できないことであった。

 

「しかし、私たちが診断時に行ったのと同じ画像ガイド下の経皮的針生検法をNST後に行うことで、どの女性にがんが再発するのかを正確に予測できる可能性があることが予備調査で明らかになりました」とKuerer医師は語る。

 

今回の単一施設の前向き研究では、初期ステージ(ステージI、II、III)トリプルネガティブ(23人)またはHER2陽性(11人)の乳がん女性34人が登録された。標準手順に従い、すべての患者がNSTを受けた。標準治療の手術前に、参加者は全員、画像ガイド下穿刺吸引(FNA)生検および超音波やマンモグラフィーガイド下吸引式乳房組織生検法(VACB)を受けることに同意した。本研究で測定した精度、偽陰性率、および陰性的中率は、FNA単独、VACB単独、およびFNAとVACBの併用ごとに計算した。乳房pCRは、手術時に残存病変がないことと定義された。

 

初期腫瘍サイズの中央値は3 cmであり、患者の47.1%で診断時にリンパ節転移がみられた。 NST後、残存腫瘍の中央値は0.9cmであり、患者の94.1%で触診での異常はみられなかった。

 

NST後、FNAとVACBの併用では、残存病変判定で精度100%、偽陰性率0%、的中率100%であった。生検に関連するグレード1の有害事象(出血、血腫、挫滅など)は6人の患者(17.6%)でみられた。

 

「この認識では、手術をしないこと、または『最終的な乳房温存療法』が安全かどうかを検証する義務があります」とKuerer医師は述べる。

 

予備調査の結果が正確だったことにより、MDアンダーソンの臨床試験審査委員会は第2相臨床試験を承認した。この臨床試験はまもなくMDアンダーソンで公開され、その後MDアンダーソンがんネットワーク全体に公開される。この試験では、ステージIおよびIIのHER2陽性およびトリプルネガティブ乳がんの女性が登録される。NST後に画像ガイド下生検でpCRとなったことが証明された参加者は、手術は行わず、全乳房放射線を受けることになる。この試験は、この設定で画像ガイド下生検を使用し、手術を行わない最初の試験となる。

 

「手術が必要かどうかを検証することが急務です。患者との会話では、多くの方が過度の治療を懸念しています。患者は、最大限に個別化された、できる限り最小限の治療を望んでいます。これらの発見が真実であることが証明されれば、患者にとって、身体的にも心理的にも画期的なものとなるでしょう」とKuerer医師は述べた。

 

Kuerer医師以外の全MDアンダーソン試験の著者は以下のとおりである。Wei T. Yang, M.D., chair, Gaiane M. Rauch, M.D., Ph.D., Beatriz E. Adrada, M.D., Lumarie Santiago, M.D., Rosalind Candelaria, M.D., Elsa Arribas, M.D. and Tanya Moseley, M.D., all of Diagnostic Radiology; Savitri Krishnamurthy, M.D., Michael Gilcrease, M.D., Ph.D., both of Pathology; Kelly K. Hunt, M.D., chair, Abigail S. Caudle, M.D., Sarah M. DeSnyder, M.D., Anthony Lucci, Jr., M.D., Rosa Hwang, M.D., Mediget Teshome, M.D., and Makesha V. Miggins, M.D., all of Breast Cancer Surgery; Brian P. Hobbs, Ph.D., Biostatistics; Mariana Chavez Mac Gregor, M.D., Breast Medical Oncology and Health Services Research; Benjamin D. Smith, M.D., Ph.D., Radiation and Vincente Valero, M.D., Breast Medical Oncology。

 

この研究は下記の機関から財政的支援を受けた。The PH and Fay Etta Robinson Distinguished Professorship in Cancer Research, a Cancer Center Support Grant from the National Institutes of Health (NIH), CA16672, a NIH P30 grant, CA016672。また、the MD Anderson Clinical Research Funding Award Programから資金提供を受けた。

原文掲載日

翻訳白石里香

監修尾崎由記範(臨床腫瘍科/虎の門病院)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  2. 2光免疫療法:近赤外線でがん細胞が死滅
  3. 3非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  4. 4COX-2阻害薬と抗PD1免疫療法薬併用でIDO1発...
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  7. 7コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  8. 8がん治療の悪心・嘔吐管理に関するASCOガイドライン...
  9. 9ペムブロリズマブ、欧州にて局所進行・転移性尿路上皮が...
  10. 10FDAがベバシズマブとトラスツズマブのバイオ後続品を...

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他