乳がんの化学療法はレジメンにより費用の差が大きい | 海外がん医療情報リファレンス

乳がんの化学療法はレジメンにより費用の差が大きい

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

乳がんの化学療法はレジメンにより費用の差が大きい

MDアンダーソンがんセンター

MDアンダーソンがんセンター

適切な情報に基づいて化学療法を選択することで、乳がんの治療費を年10億ドル削減できる可能性

 

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新しい研究によると、乳がんに対する化学療法は、その効果が同等であっても、レジメンにより費用面で相当な差があるという。化学療法の選択肢を考えるとき、この費用の差を理解しておくことは、患者と医師の話し合いにおいて有用であろう。

 

今回の知見はCANCER誌電子版に本日掲載されたところだが、最初に発表されたのはシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会2016年年次集会のポスターセッションであった。

 

「がん治療の費用は医療機関にとっても患者にとっても劇的に増加しています。医師として、私たちは患者の経済的負担をより認識するようになっています」。筆頭著者のSharon Giordano医師(Health Services Research所長、乳腺腫瘍学教授)はこう話す。「患者が意思決定する際に治療費という重要な問題について話し合えるように、医師、患者ともに治療費に関する情報をもっと知る必要があります」。

 

アメリカがん協会は、2016年に米国で新規に診断される浸潤性乳がんの症例数を246,660例と推定している。手術や放射線治療に加え、乳がん患者の35%以上が化学療法を受けている。このことから、効果が同等であるもののうちから低費用のレジメンを選択していくと、全米の乳がん治療費を毎年10億ドル削減する効果が得られるとGiordano氏は説明する。

 

治療費を算出するため、研究者らはMarketScanのデータベースから得た2008年~2012年に米国で乳がんと診断された14,643人の成人女性の医療保険請求データを解析した。解析の対象としたのは、診断の6カ月前から診断後18カ月まで完全補償の保険に加入し、診断後3カ月以内に化学療法を受け、診断後1年間は二次性悪性腫瘍の発症がなかった患者である。

 

研究者らは、診断後18カ月までの保険請求データを用いて、乳がんの平均治療費(全体および個人負担分)を2013年のドルで標準化して計算した。なお、トラスツズマブを含む治療と含まない治療に分けて解析した。

 

「今回の研究で、乳がん治療の費用は化学療法レジメンによって相当な差があることがわかりました。同等の効果があるレジメンを比較しても相当な差です」とGiordano氏は述べる。

 

もっとも大きな差が出たのは保険会社の支払額であった。トラスツズマブを含まない治療を受けた患者における保険支払額中央値は82,260ドルで、もっとも多く行われるレジメンとの差は20,354ドルであった。個人負担額の中央値は2,727ドルであったが、患者の25%は4,712ドル以上、10%は7,041ドル以上を負担していた。

 

トラスツズマブを併用する治療を受けた患者の場合、保険支払額中央値は160,590ドルで、もっとも多く行われるレジメンとの差は46,936ドルであった。個人負担額の中央値は3,381ドルで、患者の25%は5,604ドル以上、10%は8,384ドル以上を負担していた。

 

Giordano氏によると、今回の研究は民間の健康保険に加入した若い世代のみを対象としたものである。民間保険に加入していない患者はさらに高い治療費を負担しなければならないだろう。加えて、今回の研究では最新の治療法のコストについては調査することができなかった。また、本研究は保険請求データに依存しているため一部誤分類の可能性があるほか、がん登録データを用いてがんのステージ分類や患者の人種・民族、腫瘍の特性について解析するといったことはできなかった。

 

研究者らは、がん治療の各選択肢の相対的な価値についてさらに明らかにするため、現在利用可能なデータおよび今後のデータの調査継続を計画している。

 

「がん診療に関わる医療者は、患者の目標や考え方に合った、価値の高いケアを提供できるよう努力し続ける必要があります」とGiordano氏は話す。「今回の研究により、化学療法に関連する経済的負担が非常に大きいことをより多くの医療従事者に知ってもらい、患者とともにベストの治療法を選択できるようになることを願っています」。

 

Giordano氏以外の共著者は以下のとおり(全員MDアンダーソン):Jiangong Niu, Ph.D., Hui Zhao, Ph.D., Daria Zorzi, M.D., Tina Shih, Ph.D., and Chan Shen, Ph.D., all of Health Services Research; Mariana Chavez MacGregor, M.D., Health Services Research and Breast Medical Oncology; and Benjamin Smith, M.D., Health Services Research and Radiation Oncology。

 

本研究は次の各機関から資金提供を受けている:the Susan G. Komen Foundation (SAC150061), the Cancer Prevention Research Institute of Texas (RP140020), the Agency for Healthcare Research and Quality (R01 HS020263) and the Duncan Family Institute for Cancer Prevention and Risk Assessment。

 

原文掲載日

翻訳橋本 仁

監修尾崎由記範(腫瘍内科・乳腺/虎の門病院 臨床腫瘍科)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1がんに対する標的光免疫療法の進展
  2. 2アルコールとがんについて知ってほしい10のこと
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4個別化医療(Precision Medicine)に...
  5. 5専門医に聞こう:乳癌に対する食事と運動の効果
  6. 6ルミナールAタイプの乳がんでは術後化学療法の効果は認...
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  9. 9非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 五十音 アルファベット 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他