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乳がん再発の遺伝子リスクが低い患者に化学療法は不要との試験結果

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乳がん再発の遺伝子リスクが低い患者に化学療法は不要との試験結果

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)

生存率の予測および治療の選択における遺伝子検査の有用性

 

腫瘍の遺伝子マーカーに基づき、再発リスクが低いと判定された早期乳がん患者は化学療法を必要としない可能性があることが、新たな臨床試験で示唆された。この試験では、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者の開発した検査法が採用された。

 

2016年8月24日、New England Journal of Medicine誌で報告されたこの試験ではMammaPrint(マンマプリント)として知られる遺伝子検査法により、6700人に上る患者から切除した腫瘍のプロファイリングが行われた。マンマプリントは、1連の70遺伝子の発現量を測定し再発リスクを予測する検査法である。また、腫瘍の大きさ、ホルモン受容体の有無、リンパ節転移など従来の基準に基づく再発の「臨床リスク」は高いが、マンマプリントの結果に基づく遺伝子リスクは低い早期乳がん患者では、化学療法を受けた場合と受けなかった場合でほぼ同様の予後が得られたことが判明した。

 

臨床リスクが高く、遺伝子リスクが低い患者のうち、化学療法を受けなかった患者の5年生存率は95%近くにまで達し、原発巣からの遠隔転移も認められなかった。同様のリスクで化学療法を受けた患者よりわずか1.5%低いのみであった。ただし、これらの患者は手術の他に、ホルモン療法や放射線療法など、化学療法以外の標準治療を受けている。

 

 

医師、患者が治療を評価する上でマンマプリントが有用となり得るか

 上記の臨床試験結果から、化学療法を行わないことも考慮に入れた治療計画を医師や患者が評価するための補助として、マンマプリントが有用であることが示唆される。

 

 「乳がんの患者一人ひとりが十分な情報に基づき化学療法を受けるか否かを選択しなければなりません。そのための一助となるのがマンマプリントを用いた乳がんの生物学的活性評価です。このことは今回の前向きランダム化試験により初めて示されました」とマンマプリントの開発者でありUCSFヘレン・ディラー・ファミリー総合がんセンターの応用ゲノムディレクターである共同筆頭著者Laura van’t Veer博士は述べる。

 

 この結果は、国際共同臨床試験MINDACT(“Microarray In Node-Negative and 1 to 3 Positive Lymph Node Disease May Avoid Chemotherapy”)の結果に基づく。

 

van ’t Veer博士と共に貢献した著者は、Champalimaud 臨床センター(ポルトガル、リスボン)Breast Unit長のFatima Cardoso医師、および欧州がん研究・治療機構本部のJan Bogaerts博士である。また、オランダがんセンター(アムステルダム)のEmiel Rutgers医学博士、ブリュッセル自由大学(ベルギー)のMartine Piccart医学博士も研究チームのメンバーである。

 

世界保健機構(WHO)によると、乳がんは全世界の女性の間でもっとも多いがんである。2015年のアメリカがん協会(ACS)による試算では、2012年に世界中で新たに乳がんと診断された患者数は170万近くにも及び、新たにがんと診断された女性全体の25%を占めた。

 

 腫瘍の遺伝子発現パターンは各個人によって異なる。van ’t Veer博士が共同で創設したAgendia社により開発されたマンマプリントは、乳がんの女性における再発リスクを評価するための新しい手段である。マンマプリントでは、早期乳がん患者の再発リスクを予測することのできる70の遺伝子シグネチャーを解析する。

 

化学療法と転移

 化学療法は、乳がんに対する強力な治療法であるが、毒性も強く重篤な副作用の原因となる。MINDACT試験では、欧州全域の6700人近い乳がん患者のうち、23%が臨床的評価では再発のリスクが高く化学療法の対象とされるものの、マンマプリントではリスクが低いと判定された。これらの患者は、化学療法を受けるグループと受けないグループの2グループに無作為に割り付けられた。

 

 臨床リスクが高く、遺伝子リスクが低い患者で化学療法を受けなかったグループの手術後5年目における生存者数の割合はほぼ95%に達し、化学療法を受けたグループよりもわずか1.5パーセントポイント低いのみであった。また、化学療法を受けなかった患者での原発巣からの遠隔転移もなかった。

 

 乳がんでは最も多いタイプであるホルモン受容体陽性(HR+)・ヒト上皮増殖因子受容体2陰性(HER2–)・リンパ節転移陰性(LN0)の乳がん患者の75%が、マンマプリントにより遺伝子リスクが低いと判明した。これらの患者のうち、化学療法を受けなかった患者の5年無遠隔転移生存率は98%に近かった。

 

 臨床リスクが高い女性の46%がマンマプリントにより遺伝子リスクは低いと判定されたことから、臨床的高リスクの女性の半数近くが化学療法を受けなくても再発しないことが示唆されると研究者は報告している。

 

 「MINDACT試験の結果は早期乳がんの患者さんにとって、非常に重要な意味を持ちます」とvan ’t Veer博士は述べる。MINDACT試験は、112の学術がんセンター、van ’t Veer博士創設のAgendia NV社、欧州がん研究・治療機構、Breast International Groupが共同で実施した試験である。

 

 MINDACT試験のための腫瘍サンプル解析はAgendia社が無償で行った。Agendia NV社の共同創設者、パートタイム社員、取締役会の一員、株主としてvan ’t Veer博士は「届け出た研究以外の事柄に対し、Agendia NV社から個人的な報酬およびその他の支援」を受けたことを公表した。オランダがんセンターはマンマプリントに関連する特許を保有している。マンマプリントの特許使用権はAgendia NV社が保有している。UCSFはマンマプリントの特許に関し利権を有しない。

 本研究は、以下の各機関の支援を受けた。欧州委員会第6次フレームワークプログラム、米国乳がん研究基金、Novartis社、F. Hoffmann–La Roche社、Sanofi-Aventis社、Eli Lilly and Company社、Veridex社、米国国立がん研究所、European Breast Cancer Council–Breast Cancer Working Group、Jacqueline Seroussi Memorial Foundation for Cancer Research、Prix Mois du Cancer du Sein、Susan G. Komen for the Cure、Fondation Belge contre le Cancer、オランダがん学会、Netherlands Genomics Initiative–Cancer Genomics Center、L’Association “Le Cancer du Sein, Parlons-en!”、 Brussels Breast Cancer Walk-Run and American Women’s Club of Brussels、NIF Trust、German Cancer Aid、Grant Simpson Trust and Cancer Research UK、La Ligue Nationale contre le Cancer (France)、EORTC Cancer Research Fund、Agendia NV社。著者全員のリストは発表文献に記載されている。

 

原文掲載日

翻訳八木佐和子

監修原 文堅 (乳腺/四国がんセンター)

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