がん患者介護者への支援に向けて、さらなる研究の必要性

プレスリリース

ASCOの見解

「本研究は、がん患者の介護に特有のニーズや課題の片鱗を示しており、重要です。介護者に対する十分な支援を保証することは、高品質のがん介護の不可欠要素の1つであるべきです」とASCO専門委員Andrew S. Epstein 医師は語った。

米国の1200人以上の介護者のデータ解析から、がん患者の介護者は、ほかの病気の患者の介護者と比較して、より負担が重く、1週間あたりの介護時間が顕著に長いと報告していることが判明した。本解析は米国介護連合の調査データに基づき、同連合の推定では、家族または友人としてがん成人患者を介護する人がおよそ280万人いるという。

本研究の知見は、サンフランシスコで開催される2016年ASCO臨床腫瘍緩和ケアシンポジウムで発表される。

「われわれの研究は、がんが家族と患者支援体制に及ぼす波及効果を提示しています。介護は、身体的にも感情的にも経済的にも非常に強いストレスを伴い、過酷な場合があります。本データは、こうした個人の健康な状態が患者のQOL(生活の質)と治療効果には欠かせないことから、介護者支援をよりうまく実施する必要があることを示しています」と、本研究の研究者であるErin Kent 氏(医学博士、理学修士、米国国立がん研究所(NCI)医療提供研究プログラムの成果研究部門長)は語った。

Kent氏は、がん患者の介護の周期的な性質を強調する。つまり、がん介護には、患者が化学療法などの積極的治療をうける短期ながら非常に集中した時期が何度もあり、それが介護の負担を増す理由の1つとして考えられると強調した。さらに、そのような介護の負担は介護者のストレスとうつ状態の増大にも関与していると指摘した。

2015年「米国の介護」研究から抽出したデータは、がん患者の介護者はがん以外の患者の介護者よりも重い負担を経験している割合が63%高いことを示す。がん患者の介護者はまた、がん以外の患者の介護者と比べて1週間あたり約1.5倍の時間を介護に費やしていると報告されている。

研究者らはまた、がん患者の介護者は医療従事者らと話し合い、患者に代わって主張する割合が高いことを見出した(がん患者の介護者62%に対して、がん以外の患者の介護者49%)。がん患者の介護者は医療従事者らとのつながりが強いにもかかわらず、終末期の決断に際してもっと援助と情報が必要であると報告した割合は、2倍であった。

Kent氏は、介護に関するデータは収集が困難であり、こうした集団レベルでの知見の重要性を強調した。さらに、がん患者の介護者に関する追加研究の必要性を訴えた。

「われわれの知見から、医療従事者と医師がどのポイントで介入して介護者の健康を調べなければならないかをより理解するために、介護に関する追加研究が必要であることが明らかです。臨床的苦痛評価システムを技術に取り入れれば、介護者が有意義な方法で支援されていることの確認手段の1つになると期待できます」と、Kent氏は語った。

本研究は米国介護連合、米国国立がん研究所およびがんサポートコミュニティーから資金援助を受けている。

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翻訳担当者 有田香名美

監修 佐藤恭子(緩和ケア内科/川崎市井田病院)

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