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化学療法による吐気と嘔吐の予防にオランザピン

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化学療法による吐気と嘔吐の予防にオランザピン

  1. 米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

 

NCIの資金提供で実施された大規模第3相臨床試験において、いくつかの精神疾患の治療に用いられている薬剤が、化学療法を受けている患者の吐き気 や嘔吐を抑制する可能性が見い出された。

 

しばしば著しい吐き気と嘔吐を引き起こす化学療法を受ける患者をオランザピン(商品名ジプレキサ)群、またはプラセボ群に無作為に割り付け、吐き気と嘔吐の予防の目的で用いられる3種の標準的制吐薬と併用投与したところ、オランザピン群はプラセボ群と比べ吐き気を自覚することがはるかに少なく、嘔吐の発生、および吐き気または嘔吐に対する”応急用”の制吐薬の必要回数も少なかった。

 

この大規模臨床試験の結果 は、2016年7月14日のNew England Journal of Medicine誌に掲載された。試験責任医師らは、化学療法に共通する、しばしば患者を衰弱させ得る副作用を管理するための重要で新たな選択肢として、オランザピンの役割は大きくなっていくだろうとしている。

 

「オランザピンが新しい標準ケアを確立する」と、米国メイヨークリニックがんセンターで統括著者のCharles Loprinzi医師は話す。

 

早期のエビデンスを検証する

 

広く受け入れられている治療ガイドラインでは、吐き気と嘔吐を誘発する可能性の高い化学療法を受ける患者に対して制吐薬の併用療法が推奨されている。吐き気と嘔吐を誘発する化学療法にはシスプラチン、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドが含まれる。

 

制吐薬はいずれも中枢神経系の一部に作用し、例えば、デキサメタゾン(ステロイドの一種)やセロトニン5-HT3受容体アンタゴニストおよびニューロキニンNK-1受容体アンタゴニストといった2つの薬剤に分類される。

 

これらの制吐薬では不十分な効果しか得られない患者もいるため、研究者らは吐き気と嘔吐を予防、またはコントロールするための新たな選択肢を探し続けてきた。吐き気と嘔吐は患者の生活の質(QOL)を低下させるのみならず、治療を中断させることもあり、化学療法の有効性の障壁にもなりかねない。

 

米国食品医薬品局(FDA)により統合失調症、および双極性障害の適応で承認されたオランザピンは、吐き気と嘔吐に結びつく脳内の受容体を標的として作用する。2011年に報告された第3相臨床試験では、オランザピンが既存の制吐薬の有効性を改善する可能性が示されており、世界の主要がんセンターをつなぐNPO団体National Comprehensive Cancer Network(NCCN)が、吐き気・嘔吐が誘発されるリスクが中等度~重度の化学療法を受ける患者に対する選択肢として既にオランザピンを推奨していたこともうなずける。

 

ただし、本治験責任医師のRudolph Navari医学博士らは、既存制吐薬にオランザピンを追加する場合の有効性と安全性は、より大規模な試験で検証する必要があると記している。

 

「説得力のある」結果

このランダム化比較試験には400例を超える患者が登録された。ほとんどは女性で、がん種は乳がんが最も多く、次に多かったのは、乳がんよりは大幅に少ないが肺がんであった。シスプラチン、もしくはシクロホスファミド+ドキソルビシンの化学療法を受けていた患者をオランザピン群、またはプラセボ群に無作為に割り付け、化学療法の初回投与直前、および投与後3日以上、既存の3種の制吐薬と併用投与した。

 

その結果、オランザピン群はプラセボ群と比べ化学療法初回投与後に吐き気を催した患者が少なく、化学療法初回投与後24時間に吐き気がみられなかった患者の割合は、オランザピン群75%、プラセボ群45%、投与後1~5日ではそれぞれ42%、25%、5日間全体ではそれぞれ37%、22%であった。

 

さらにオランザピン群では、嘔吐をした患者、または評価期間中に嘔吐抑制のための”応急用”薬物療法を受けた患者も、プラセボ群よりはるかに少なかった。

 

既存の制吐薬3種にオランザピンを追加しても全般的な安全性に問題はなかった。過度の疲労、または鎮静を認めた患者もいたが、重度の鎮静と報告されたのはおよそ5%であった。Loprinzi医師は、「鎮静が認められたのは一般的には投与2日目。しかし、その後もオランザピンの投与を継続してもほとんどが回復した」とし、「治療の最終日またはその前日も、強い眠気はみられなかった」と語った。

 

「本試験の結果は確かに説得力がある」と語るのはNCIがん予防部門緩和ケア研究の責任者Ann O’Mara医学博士・正看護師。

 

O’Mara氏は、「オランザピンを用いることはレジメンに別の薬剤を追加することを意味するが、それが使用する上で障害と考える患者や臨床医はほとんどいないと思う。患者は4日間、他の制吐薬と一緒にオランザピンを服用するだけ」と述べ、「吐き気と嘔吐は化学療法の副作用の中でも最も恐ろしいものの1つ。それが動機となって、ほとんどの患者がこの短期間の治療介入を支持する」と続けた。

 

Loprinzi医師は、「本治験では化学療法の初回サイクルのみにオランザピンを追加した。理想的には、以降のサイクルでオランザピンを服用した試験データがある方がベスト」としながらも、「以降の化学療法サイクルでオランザピンが効かないと示すものはない」と語った。

原文掲載日

翻訳川又総江

監修関屋 昇(薬学博士)

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