乳がん術後アロマターゼ阻害療法の期間延長は有用(ASCO2016) | 海外がん医療情報リファレンス

乳がん術後アロマターゼ阻害療法の期間延長は有用(ASCO2016)

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乳がん術後アロマターゼ阻害療法の期間延長は有用(ASCO2016)

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

 

早期のホルモン受容体(HR)陽性乳がんに罹患している閉経後女性では、アロマターゼ阻害剤を用いた術後補助療法の期間を初期治療終了から10年間に延長することに重要な利点がある可能性があることが、最新の臨床試験結果により示されている。アロマターゼ阻害薬を用いる術後補助療法の期間延長により、5年無病生存率が改善され、対側乳がんと呼ばれる、反対側の乳房に発生するがんのリスクも低下した。

 

この知見は、6月5日付けのNew England Journal of MedicineExit Disclaimerに掲載されており、シカゴで開催された2016年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

 

同試験は、早期のホルモン受容体(HR)陽性乳がんに罹患している閉経後女性では、アロマターゼ阻害剤を用いた術後補助療法の期間が5年を超えると、予後が改善される場合があることを示す最初の試験であると、同試験の主導研究者であり、ボストンのマサチューセッツ総合病院の医学博士でもあるPaul Goss医師は説明している。アロマターゼ阻害剤を用いる術後補助療法の期間延長が全生存率を改善させる根拠はまだ示されていないが、同医師は、ASCO総会の記者会見で、対側乳がんのリスク低下を「重要な利点」と称した。

 

今後、個々の患者に合わせた治療を行うことが重要になると、NCIのがん治療・診断部門のJo Anne Zujewski医師は強調している。特に、医師は、アロマターゼ阻害剤による副作用のリスク、つまり骨折などの骨に関連する影響について患者に伝える必要があり、さらに、アロマターゼ阻害剤を使用する女性において副作用を適切に管理する必要があると、同医師は述べている。

 

初期の試験で得られた知見に基づいている

 

エストロゲンホルモンの活性を阻害するタモキシフェン(ノルバデックス)は、1980年代から、乳がん再発予防のため選択されている薬剤であり、アロマターゼ阻害剤との併用投与や順次投与として、現在も多くの医師によって処方されている。

 

アロマターゼ阻害剤は、エストロゲンを産生するために使用される酵素であるアロマターゼを阻害する。アロマターゼ阻害薬は、卵巣からのエストロゲン産生が終了した閉経後女性に対して主に使用される。がん細胞増殖を促進するホルモンが原因となる乳がんを有する閉経後女性に対して、アロマターゼ阻害剤による治療が最も有用であることが知られている。

 

過去に行われた臨床試験Exit Disclaimerでは、タモキシフェンによる治療をすでに5年間実施したことのあるホルモン受容体陽性乳がんを有する女性に対して、アロマターゼ阻害剤であるレトロゾール(フェマーラ)による治療をさらに5年間行うと、生存率が改善した、という結果がGoss医師らによって示されている。また、MA.17と呼ばれる試験では、レトロゾールによる治療期間の延長により、対側乳がんの発生リスクも低下したという結果が示されている。

 

しかし、初期治療が成功した場合でも、早期のホルモン受容体陽性乳がん女性の再発リスクは継続する。Goss医師は、初期治療から20年経過していても、再発する可能性があると述べている。

 

術後補助療法の期間は5年か、それとも10年か

 

MA.17Rと呼ばれる今回行われた新たな試験では、研究者らは、レトロゾールによる治療期間を5年延長し、術後補助療法を計10年間実施した場合、再発リスクがさらに低下するかを検討した。同試験では、アロマターゼ阻害剤による術後補助療法をすでに4.5~6年間受けたことのある女性約2,000人が登録された。そのうちの多くは、MA.17試験に参加した経験があった。女性らは、アロマターゼ阻害剤による治療終了後2年以内に、レトロゾールをさらに5年間毎日投与される群またはプラセボをさらに5年間毎日投与される群に無作為に割り付けられた。

 

追跡調査期間の中央値6.3年後では、レトロゾールを投与された女性の5年無病生存率は、プラセボを投与された女性よりも高く(95%対91%)、対側乳がんの一年ごとの発生率も低下していた(0.21%対0.49%)。5年全生存率は、本質的に両群で同様で、レトロゾール投与群が93%、プラセボ投与群が94%であった。

 

生活の質(QOL)測定の結果も、両群で同程度であった。しかし、プラセボを投与された女性よりも、レトロゾールを投与された女性の方が、骨痛、骨折、初発の骨粗鬆の発生率が高かった。今回の試験に参加した女性はほとんどの場合、副作用にうまく対処したものの、同試験開始前にアロマターゼ阻害薬を5年間服用した際に大きな問題のなかった、非常に選ばれた集団であったと、Goss医師は強調した。

 

今回の試験に参加した女性集団は、アロマターゼ阻害剤による治療に対して、「忍容性があり、生活の質は変化せず、また、特別な毒性も示さない」集団であったと、同医師は言及している。

 

今回得られた知見は、再発リスクの高い女性に対してアロマターゼ阻害剤による治療期間を延長すると、再発リスクが低下する可能性がより高くなることを示していると、Zujewski医師は述べている。逆に、再発リスクの低い患者では、治療期間延長による効果はほとんど得られない可能性があり、「治療期間を2倍にしても効果は得られません」と同医師は述べている。

 

同医師は、閉経後の女性の骨を保護するタモキシフェン、あるいは骨にとって有害となる可能性のあるアロマターゼ阻害剤のどちらを推奨するかという決定を試みる際、骨密度測定を実施することを考慮している、と述べている。

 

「アロマターゼ阻害剤を使用する期間を延長する患者には、骨を保護するため、ビスフォスフォネート剤の使用を推奨します。ビスフォスフォネート剤に関する複数の研究では、同剤の使用が転移性疾患のリスクも低下させる可能性があることが示されています。

 

「アロマターゼ阻害剤を使用して術後補助療法の期間を延長する患者の骨の健康状態を観察し、適切な場合に骨を保護する薬剤を使用することが非常に重要です。今回実施した試験では、骨折を呈した女性でビスフォスフォネート剤を使用していた参加者は、約半数のみでした。われわれは、医師として、術後補助療法の期間延長を考える女性の骨を保護するという課題により良く対応する必要があります」と同医師は述べている。

 

原文掲載日

翻訳重森玲子

監修原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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