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血液検査(リキッドバイオプシー)は腫瘍生検の代替となるか

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血液検査(リキッドバイオプシー)は腫瘍生検の代替となるか

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

腫瘍から血液中に流入した遺伝物質のDNA変異やその他の変化を調べる検査(リキッドバイオプシー)では、従来の腫瘍生検から得られる結果と極めて類似した結果が得られることがわかった。本研究は、同様の研究としてはこれまでで最大規模のものである。

 

先週シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会において、研究者らは、膨大な患者の血液検体を用いた検査で同定したゲノム変異のパターンが、大規模な腫瘍生検プロファイリング研究で見られた遺伝子変異のパターンと大部分で一致した、と報告した。

 

数種類の一般的ながんを患う400人近くの患者では、ほとんどの場合において、患者の腫瘍生検検体で見られたものと同じ変異が、血液検体でも同定された。また、リキッドバイオプシーでは治療抵抗性に関連した変異も同定されたが、これは従来の組織生検では検出されなかった。

 

本研究の主席研究者であるカリフォルニア大学デービス校総合がんセンターのPhilip Mack博士は、リキッドバイオプシーの最適な使用方法と、治療において果たしうる将来的な役割について、より理解を深めるためにさらなる研究が必要だと述べた。

 

しかし、現時点では、従来の腫瘍生検が「適応できない、または利用できない」場合に、リキッドバイオプシーが代替となりうることを本研究結果では示している、と博士は述べた。

 

同じ情報を得る近道となるか

腫瘍生検はがん治療において不可欠なものである。腫瘍生検によってがんの診断を確定し、腫瘍の細胞型を同定することができる。また、標的治療の候補となりうる特定の遺伝子変異の有無を患者の腫瘍で調べる目的でも、腫瘍生検がますます行われている。

 

しかし、腫瘍生検には手術などの侵襲的処置が必要であり、健康状態の不良や体内の腫瘍部位により、適応できない患者もいる。さらに、生検検体の初回検査や分析の後では、包括的な分子プロファイリングに必要な量の組織が残っていなかったり、その質が十分でなかったりする場合がある、とMack博士は記者会見で説明した。

 

患者のがんに関する遺伝子情報の収集におけるこれらの問題を解決するために、研究者らは、腫瘍細胞から血液中に放出されるDNAやその他の遺伝物質を採取して分析する技術を開発してきた。

 

頻度および変異パターンが類似

ASCO総会で発表された研究では、カリフォルニアに本拠を置くGuardant Health社が開発したGuardant360 と呼ばれる検査を用いた。この検査では、がん細胞から放出されたDNA(循環血中の腫瘍DNA:ctDNA)を分析するために、『次世代シークエンシング』を使用する。

 

Guardant Health社による資金提供を受け、本研究では50種類以上の腫瘍を有する15,000人以上の患者の血液検体を使用した。研究者らは、ctDNAについて70種類のがん関連遺伝子の変異や染色体再配列を調べるGuardant360検査によって、がんゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas)などのすでに公表されている腫瘍生検検体を用いたゲノムプロファイリング研究で確認されたのと同じ分布および頻度で、これらの遺伝子変異が検出されるかどうかを比較した。

 

全般的に、リキッドバイオプシーの検査結果は、従来の腫瘍組織検査で報告された遺伝子変異パターンと非常によく一致していた。例えば、Guardant360では、EGFR、BRAF、KRAS、PIK3CAなどの重要ながん関連遺伝子について、以前に腫瘍生検検体で同定されたのと同一の重大な変異を、極めて類似した頻度で同定し、94~99%の統計的相関がみられた。

 

さらに本研究では、血液ctDNAと腫瘍組織DNAの両方の結果が利用できる約400人の患者(主に肺がんまたは大腸がん患者)を評価し、ゲノム変異のパターンを比較した。腫瘍生検解析の結果と比較したリキッドバイオプシーの全般的な精度は87%だった。血液検体と腫瘍検体がそれぞれ6カ月以内に採取された場合では、精度が98%に上昇した、と研究者らは報告した。

 

また、ctDNAを含む血液と腫瘍生検の両方を入手できた患者の検体では、腫瘍生検検体には存在しなかった、腫瘍を治療抵抗性にする遺伝子変異が、リキッドバイオプシーによって同定された。これらには、現在使用されている標的薬剤に対する抵抗性の原因となることがわかっているEGFR、ALK、KRASなどの遺伝子変異があった。

 

取材に対しMack博士は、Guardant360により、全体で27%の患者においてこれらの耐性変異が同定されたと述べた。また、多くの症例でそれらの変異は初回の腫瘍生検時には存在せず、疾患の進行に伴い治療中に出現するものと考えられると述べた。

 

リキッドバイオプシーで確認された遺伝子変化に基づき、研究者らは、3分の2近くの患者において、主治医が治療法を選択するうえで役立つ可能性のある情報をもたらす、腫瘍バイオマーカーを同定した。これにより、FDA承認薬剤を適応する患者候補や、これらの変異に対する治験治療を検証する臨床試験の被験者候補となる患者を特定した。

 

リキッドバイオプシーの次のステップ

リキッドバイオプシーは精力的な研究と商業活動が行われている分野だ、とジョンズホプキンス大学のLuis Diaz Jr.医師は、ASCO総会の臨床ゲノム研究セッションで説明した。「この分野は実に急激に発展しました」と、ゲノム診断法を研究するDiaz医師は述べた。

 

FDAがリキッドバイオプシー検査を初承認

米国食品医薬品局(FDA)は6月1日、がんに適応する初のリキッドバイオプシー検査を承認した。cobas EGFR Mutation Test v2は、EGFR遺伝子の重要な変異を検出する。この変異を有する進行非小細胞肺がん患者は、エルロチニブ(タルセバ)による標的治療の候補となる。FDAは以前に、腫瘍検体を用いる検査を本適応で承認した。新たな利用法は、血液検体を用いて循環血中の腫瘍DNAからこれらの変異を検出するというものである。

 

「包括的な分子プロファイリングのためのリキッドバイオプシーは、今や患者と医師が利用できるようになり、組織生検が実施できない場合に、腫瘍の遺伝情報をもたらす重要な情報源となります。しかし、臨床試験が完了し、治療における有用性が裏付けられるまでは、リキッドバイオプシーの解釈は慎重に行うべきです」とMack医師は述べた。

 

進行がん患者にとってこうした検査は、疾患の経時的な変化をモニターするうえで、また、腫瘍が再発あるいは進行した場合の治療においても、最も役立つ可能性があるとDiaz医師は指摘した。さらに、リキッドバイオプシーは、早期の患者の治療や、前がん病変を有する人の疾患進行のモニターにも、将来的に役立つ可能性があると示唆する研究もある、と述べた。

 

しかし、リキッドバイオプシーががん治療において日常的に使用されるようになるには、さらなる研究が必要である、とシカゴ大学のRichard Schilsky医師は記者会見で述べた。また、本研究はランダム化試験ではなく、開発中または商業的に利用可能なリキッドバイオプシーによって患者の転帰が改善したというエビデンスもまだない、と言及した。

 

「検査が可能だからといって、それを実施しなければならないとは限りません。これらの検査について、真の臨床的有用性を実証する責任がわれわれにはあります。」とSchilsky医師は言った。

 

原文掲載日

翻訳田中 深代

監修北丸綾子(分子生物学/理学博士)

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