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マイノリティのBRCA陽性乳がんサバイバーで予防的手術は少数(ASCO2016)

更新日

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マイノリティのBRCA陽性乳がんサバイバーで予防的手術は少数(ASCO2016)

米国臨床腫瘍学会(ASCO) プレスリリース

 

乳がんおよび卵巣がんのリスクマネジメントにおける人種間での格差が判明

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解

「本研究は、乳がんおよび卵巣がんにおける人種間のさまざまな格差に、われわれが取り組む必要性を大いに喚起するものです。乳がんや卵巣がんの予防的手術を行うかどうかは非常に個人的な問題でもありますが、人種にかかわらず、すべての女性が利益と不利益について医師と話し合うことが大切です」と、乳がんのASCO Expertで本日の記者会見の司会者であるPatricia Ganz医師は述べた。

 

BRCA遺伝子変異を有する乳がんサバイバーは、予防的手術を行うことで、今後乳がんや卵巣がんにかかるリスクが大幅に減少する。しかし、フロリダ州での地域住民をベースとした乳がんサバイバーに関する研究によると、こうした強く推奨されている手術を受ける黒人女性は、白人女性やヒスパニック系女性に比べかなり少ないとみられる。

 

本研究は、本日の記者会見で取り上げられ、2016年ASCO年次総会で発表される。「遺伝子検査から得られる情報に基づいて行動し、適切なフォローアップケアを受けることで、初めてがんのリスクを調べる遺伝子検査から利益を得られるのです」と、筆頭研究著者でフロリダ州タンパH. Lee Moffitt Cancer Center & Research Institute, Inc.社の臨床遺伝学専門のTuya Pal医師は述べている。「今回のデータでマイノリティのBRCA遺伝子変異保因者ではリスク軽減のための手術が少ないことが示されたことで、医師は特に黒人女性に対し、より精力的で的を絞ったフォローアップを行うようになると考えられます」。

 

BRCA遺伝子変異保因者のリスクマネジメント

BRCA遺伝子変異を有する女性が乳がんと診断されると、再び乳がんになる生涯リスクは最大50%で、卵巣がんのリスクは最大44%である。予防的両側乳房切除により再び乳がんにかかるリスクは著しく減少する。

 

同様に、卵巣および卵管の外科的除去(卵巣摘出術)により卵巣がんのリスクは90%減少する。卵巣がんを早期に発見する信頼性の高い検査方法がないため、変異保因者にとり予防的卵巣摘出術は卵巣がんによる死亡を減少させるための非常に重要な戦略である。

 

研究について

本研究はFlorida State Cancer Registryより浸潤性乳がんと診断された50歳以下の非ヒスパニック系白人(NHW)、黒人、ヒスパニック系の女性を対象とした。著者によると、多数のマイノリティの女性を含み、さまざまな医療施設で治療を受けた集団におけるBRCA遺伝子変異保因者のフォローアップケアを調査した研究は、今回が初めてとのことである。これまでの研究は、1カ所の研究施設か医療組織に限られたものであった。

 

参加者1,621人中、917人が乳がん診断後にBRCAの検査を受け、そのうち92人が遺伝子変異陽性であった。

 

重要な知見

研究からは、遺伝子検査を受けた割合は人種間で差があり、非ヒスパニック系白人の65%、ヒスパニック系女性の62%は検査を受けていたが、黒人女性では36%だけであることが明らかになった。臨床でBRCA遺伝子変異検査を受ける黒人女性の割合が低いことは、乳がんの後、予防的処置を行える機会を逃すこととなるため残念なことである。

 

BRCA変異陽性の女性92人においては、乳房切除術および卵巣摘出術を受けた割合も3つの人種群間で有意差が認められた。黒人女性で手術を受けた割合が最も低く、両側乳房切除術(68%)、卵巣摘出術(32%)であった。ヒスパニック系女性は非ヒスパニック系白人女性と比べて乳房切除術を受けた割合は低いが(85%対94%)、卵巣摘出術を受けた割合は高かった(85%対71%)。黒人と他の2群との有意差は、登録時の年齢、診断されてからの時間、収入、乳がんおよび卵巣がんの家族歴、保険の加入状況で調整後も認められた。

 

著者は、本研究に以下のような限界があったことを認めている。

 

各人種群においてBRCA変異女性の数が少なかった(非ヒスパニック系白人51人、黒人28人、ヒスパニック系12人)。

 

本研究に登録された黒人女性のうち4人は、まだ治療中であったため、この群の卵巣摘出術を受けた割合が低下した可能性もある。

 

乳がんの診断が女性にとり衝撃的なものであることを考慮すれば、卵巣がんのリスクマネジメントより乳がんの治療を優先することも考えられる。したがって、これらの女性が、がんのリスクマネジメントにおいてどのような選択をするのかを検討する追跡調査を長期間にわたり行うことが重要である。

 

「今回の結果により、がんケア全体に存在する、遺伝性がんの素因に関する格差への関心が高まることを期待しています。がんのリスクマネジメントについて遺伝性がんの女性が詳細な情報を得た上で決断できるよう、われわれが取組みをさらに促進させるためにも、まずは、こうした格差がなぜ生じるのか理解することが必要です」と、Dr.Pal氏は述べている。

 

次のステップ

本研究は2009年から2012年に乳がんと診断された女性が対象であった。米国の医療制度に影響を与えた最近の変化を反映するためにも、より最近診断を受けた患者を評価する追加の研究が必要である。最近の変化で特筆すべきは、BRCA遺伝子の特許が無効になったことと、DNAの塩基配列を決定する技術が飛躍的に進歩したことである。これにより検査費用が安くなり、より多くの人が検査を受けることを期待できる。

 

本研究はBankhead Coley Granting agency (IBG10-34199)およびアメリカがん協会 (RSG-11-268-01-CPPB)から資金提供を受けた。

 

抄録の全文はこちら

原文掲載日

翻訳成宮眞由美

監修小坂泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)

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