直接的患者アプローチによる画期的乳がん研究プロジェクト(ASCO2016) | 海外がん医療情報リファレンス

直接的患者アプローチによる画期的乳がん研究プロジェクト(ASCO2016)

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直接的患者アプローチによる画期的乳がん研究プロジェクト(ASCO2016)

米国臨床腫瘍学会(ASCO) プレスリリース

 

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解

「今回の試験で、ほんの数カ月のうちに数千人もの患者をリクルートすることができたことは異例の成果であり、特定の治療に非常によく反応した患者の情報など、実臨床で観察された膨大なデータは、今後の高精度治療(Precision Therapy)に向けての重要な情報源となるでしょう」と、女性特有のがんの権威でありASCO専門委員のDon S. Dizon医師は話す。

 

2015年10月に開始された先進的なプロジェクトにより、転移性乳がんのゲノム研究の促進や、新規治療の開発がもたらされるかもしれない。進行性の乳がん患者の医療記録、腫瘍標本、唾液サンプルの回収を伴う研究に、プロジェクト開始から7カ月ですでに2000人の患者が組み入れられている。

 

この研究は本日記者会見で取り上げられ、2016年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会において発表される予定である。

 

「研究を行っている施設で治療を受けることができるのは、米国にいる転移性乳がんの15万人の女性や男性のうち、ごくわずかの患者のみである」とダナ・ファーバーがん研究所のオンコロジストであり米国ブロード研究所(マサチューセッツ州ケンブリッジ)のメンバーでもある筆頭著者のNikhil Wagle医師は述べている。「この新しいアプローチにより、どこに住んでいる患者であっても研究に参加でき、進行性の乳がんに罹患しているすべての人々のための治療法改善に貢献することを期待している。」

 

研究について

米国ブロード研究所およびダナ・ファーバーがん研究所によってプロジェクトが開始された当時、研究者は患者や患者団体と共同し、転移性乳がん患者が国をまたいで研究に参加できるようにウェブサイト(mbcproject.org)を開設した。ソーシャルメディア、ニュースレター、ブログ、支援団体など様々な手段を用いることにより、患者の担当医や施設を通すことなく、研究に参加する患者を直接探すことが可能になった。

 

このがん研究に参加するにあたり、患者は自身のがんや治療についての質問を受け、その後、研究に参加するための同意確認が行われた。これらのステップを経た後、研究者は組み入れられた患者の医療記録や保存されていた腫瘍標本の一部を収集し、また同時に患者は自宅用採取キットを用いて唾液サンプルの提供が求められた。

 

これまでに研究に組み入れられた95%の患者が、自身のがんや、治療、治療経験について詳細情報を提供している。また1,100人以上が医療記録のコピーを承諾し、腫瘍や唾液試料を用いた次世代シーケンスを行うことに同意している。すでに、研究参加者により400以上の唾液サンプルが米国ブロード研究所に送付されている。

 

この転移性乳がんプロジェクトの包括的なゴールは、この致死的疾患に対するより良い治療の開発をリードすることである。数千におよぶ患者の医療記録や遺伝子情報を用いて、これまで一般的な手法でその同定を試みてきた患者、すなわち、治療に対して長期に反応を示したあるいは特別な反応を示した患者、発症初期から転移性であった患者、若年性の患者、および人種/民族的マイノリティに属する患者にまずは焦点が当てられ、転移性乳がんの病態についての非常に重要な視点が生まれることが望まれている。

 

上記のカテゴリに属する患者はすでに本研究に組み込まれている。またこれには、標的治療やこれまでに用いられている一般的な化学療法に例外的な反応を示した多数の患者も含まれている。

 

今後のステップ

研究者は現在、集められた唾液や組織サンプルを用いた次世代シーケンスを行っている。今後数カ月のうちに、試験的な”血液生検”など新しい患者の遺伝子データ収集方法も探索される。それによって治療抵抗性のメカニズムや、治療を上回って進行した転移性乳がんなど、組織サンプルの解析だけでは解決できないリサーチクエスチョンに答えることを可能にする全身の血中を循環する腫瘍DNAの研究が行われる。

 

さらに、このプロジェクトによって集められた臨床および遺伝子データは、米国国立衛生研究所(NIH)によって開発されているデータ共有プラットフォームに、個人情報を非特定化して広く共有される予定である。

 

Wagle医師は次のように述べている。「もし患者が、自身の検体や、経験、データをわれわれのプロジェクトと共有したいと望んでいるのであれば、この領域の研究を促進するために、それらのデータを集め、研究コミュニティーに広く共有するのがわれわれの使命である。」「次の大きな発見をするのは私たちのチームではないかもしれない。しかし、他の研究者にデータを提供することにより、一緒に成功するチャンスを増やすことができる」。

 

近い将来、研究者たちは同様のプロジェクトを他のがん領域にも展開することを計画している。

 

この研究はブロード研究所からの研究助成を受けて行われた。

抄録の全文はこちら

原文掲載日

翻訳仲川涼子

監修東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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