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アロマターゼ阻害剤10年投与でエストロゲン陽性乳がん再発リスクが低下(ASCO2016)

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アロマターゼ阻害剤10年投与でエストロゲン陽性乳がん再発リスクが低下(ASCO2016)

米国臨床腫瘍学会(ASCO) プレスリリース

 

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解

「世界中の何百万人ものエストロゲン受容体(ER)陽性女性乳がん患者にとって、今回のデータは重要です。一般に広く利用可能な治療法をより長く継続すると再発リスクが減少し、二次がんの発生を予防できることを示唆するデータです」と、米国臨床腫瘍学会(ASCO)乳がん専門委員のHarold J. Burstein医師(FASCO)は述べる。「いかなる治療も10年間とは長いものです。幸いほとんどの女性が、長期治療を副作用もほとんどなく、ある程度は耐えることができます。今では女性たちは、補助内分泌療法を続けるかどうか、臨床チームと話し合いながら、十分に説明を受けた上で意思決定ができます」。

 

ランダム化第3相臨床試験MA.17Rの結果、閉経後の初期乳がん女性患者は、レトロゾール(フェマーラ)によるアロマターゼ阻害剤(AI)治療を5年間から10年間に延長することで利益を得られることがわかった。アロマターゼ阻害剤の5年間投与とタモキシフェンの一定期間投与の後、レトロゾール投与を5年間継続した女性は、プラセボ群の女性と比較して再発リスクが34%低かった。本臨床試験はCanadian Cancer Trials Groupの主導のもと、National Clinical Trials Networkの参画によりおこなわれた。

 

ASCO全体会議では、ASCO年次総会で取り上げられる5,000本以上の抄録の中から、患者ケアに最も影響を与えうる4本の抄録を取り上げるが、本試験結果もそこで話し合われる予定である。

 

「初期ステージのホルモン受容体陽性乳がん女性患者たちは不確かな再発リスクを抱えています」と、マサチューセッツ州ボストンにあるマサチューセッツ総合病院乳がん研究部長であり、ハーバード大学医学部内科学教授でもある、本試験主著者のPaul Goss 医学博士(FRCP)は述べる。「本研究は、アロマターゼ阻害剤治療を延長すれば、乳がんの再発リスクをさらに減少させることを裏づけ、多くの患者とその主治医に治療の方向性を示します。より長期のアロマターゼ阻害剤治療は、健康な方の乳房に対しても相当な乳がん予防効果を示すことが証明されています」。

 

MA.17R試験における全生存期間は、2群間に有意差はみられなかった。しかしGoss博士は、ホルモン受容体陽性乳がんは緩慢に再発していく性質上、臨床試験において全生存期間の差異を論証することが困難であったと述べている。このような理由から、乳がんに対する内分泌治療のほとんどは、無病生存率改善のみに基づいて規制当局の承認を得てきたのである。

 

患者の全体的な生活の質(QOL)は2群間で同等であった。身体役割機能において、プラセボ選択群がわずかに優位となったが、臨床的有意差とはみなされない程度であった。「初期乳がんの女性たちの大半は、長期にわたるサバイバーです。ホルモン治療を長期間にわたり投与するにあたり、女性たちがどのような気持ちでいるか把握することが非常に重要です」とMA.17R試験の患者報告結果分析筆頭著者で、カナダにあるCentre hospitalier universitaire de Québec研究員のJulie Lemieux医師は語る。

 

試験について

MA.17R臨床試験から得た2本の関連する抄録、一つは安全性と有効性アウトカムについての報告(LBA1-Plenary)、もう一つは患者のQOL結果についての報告(LBA506)が年次総会で発表される。

 

試験には、初回治療として、もしくは一定期間タモキシフェンによる事前治療の後、アロマターゼ阻害剤3種のうちいずれか1種を5年間投与したことがある閉経後の女性1,918人が登録された。患者は事前アロマターゼ阻害剤治療が完了した後2年まで登録可能であったが、約90%の患者が事前治療の完了後6カ月以内に、レトロゾールまたはプラセボ投与を開始した。

 

患者報告によるQOLは、標準SF-36質問票を用いて数値化した。同質問票は、精神の健康、身体の健康、および閉経時に特化した質問(MENQOL)などさまざまな領域を網羅する。1,918人の試験参加者のうち、1,428人が最初のQOL評価に回答する条件を満たしていた。質問票による調査は12カ月後、24カ月後、36カ月後、48カ月後、さらに60カ月後の各時点で繰り返しおこない、85%以上の女性が追跡調査を完了した。

 

重要所見

再発と新たな乳がん発生のリスクへの影響(LBA1-Plenary):レトロゾール長期治療女性群における乳がん再発リスクは、プラセボ群より34%低かった。年間対側乳がん発現リスクは、レトロゾール群がプラセボ群より低く(0.21%対0.49%)、乳がん予防効果を示している。追跡調査5年時点で、レトロゾール投与を受けた女性の95%、プラセボ投与を受けた女性の91%は乳がんがない状態であった。5年全生存率はプラセボ投与を受けた女性が93%、レトロゾール投与を受けた女性で94%であった(統計的有意差なし)。

 

QOL知見(LBA506):全体的に、5年間レトロゾール投与を受けた女性と、プラセボ投与を受けた女性におけるQOL全般、および閉経時に特化したQOLいずれにおいても有意差はなかった。身体役割機能においてプラセボ選択群がわずかに優位を示す差異が認められたものの、臨床的に意義があるとみなされるほどではなかった。

 

2012年、乳がんと診断された後、少なくとも5年間がんサバイバーであった女性は世界中で600万人以上いた。その大半は、エストロゲン受容体陽性乳がん患者であり、本知見についてよく考えてみたいと思うだろう。

 

本研究はカナダがん学会研究所、米国国立衛生研究所およびNovartis社の資金提供を受けた。

 

本研究ではJanssen Research & Development社から資金提供を受けた。

抄録の全文:
LBA1
LBA506

 

1 http://www.wcrf.org/int/cancer-facts-figures/data-specific-cancers/breast-cancer-statistics Accessed May 27, 2016.

原文掲載日

翻訳佐藤美奈子

監修原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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