FDAが肺がん遺伝子変異の検出に初の血液診断薬を承認  Cobas EGFR Mutation Test v2

FDAが肺がん遺伝子変異の検出に初の血液診断薬を承認  Cobas EGFR Mutation Test v2

速報

米国食品医薬品局(FDA)は本日、がん治療薬エルロチニブ(商品名:タルセバ)の血液ベースのコンパニオン診断薬、cobas EGFR Mutation Test v2を承認した。本承認は、非小細胞肺がん(NSCLC)にみられる上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を検出する、血液ベースの遺伝子検査に対する初のFDA承認である。EGFR遺伝子変異は、NSCLC患者のおよそ10~20%に存在する。

肺がんは、米国でがん関連死の主要な原因である。男性の方が多いが、女性の肺がんによる死亡数も増加してきている。米国がん研究所(NCI)によれば、今年は米国内で221,200人が診断され、158,040人が死亡すると推定されている。NSCLCは、最も一般的なタイプの肺がんである。その腫瘍は患者の血中に腫瘍DNAを放出するため、血液サンプルで特定の遺伝子変異の検出が可能になる。このような血液サンプルを用いた腫瘍のDNA検査は「リキッドバイオプシー」とも呼ばれる。

「リキッドバイオプシー検査の承認により、患者さんに高度な個別の医療を提供できるようになりました」とFDA医療機器・放射線保健センターのOffice of In Vitro Diagnostics and Radiological Health 室長、Alberto Gutierrez博士は述べた。「さらにリキッドバイオプシーにより、医師は、腫瘍に特定の遺伝子変異を持つ患者を、最も侵襲性の少ない方法で確認することができるのです」。

Cobas EGFR Mutation Test v2を用いて、患者の血液サンプルから検出された特定のNSCLC遺伝子変異(エクソン19欠損やエクソン21(L858R)置換変異)の存在を確認することは、エルロチニブによる治療が有効な患者を選択するのに役立つ。しかし血中からそのような遺伝子変異が検出されない場合は、NSCLC遺伝子変異の存在の有無を確認するために腫瘍生検を行うべきである。検査結果が陽性であれば、非常に状態が悪い患者や何らかの理由でEGFRの検査に腫瘍検体を提供できない患者にも効果をもたらす可能性がある。

血液サンプルを使用するcobas EGFR Mutation Test v2の有効性は、臨床試験に登録し、過去に行った腫瘍生検で、cobas EGFR Mutation Test v1で確認したエクソン19欠損あるいはL858R変異が陽性を示した患者を対象に、EGFR変異状態を検査し判定した。

FDAは2004年、1回以上の前化学療法が無効であった局所進行または転移性NSCLC患者の治療薬にエルロチニブを承認し、さらに2013年には同薬をFDA承認の検査によりEGFRエクソン19欠損またはL858R置換変異が確認された腫瘍を有する、転移性NSCLC患者の初回治療薬に承認した。エルロチニブの使用で最も多い副作用は、発疹、下痢、食欲不振、疲労、呼吸困難、咳嗽(がいそう:*咳のこと)、嘔気、嘔吐である。またエルロチニブ、白金製剤との併用は推奨されず、エクソン19欠損またはL858R置換変異以外のEGFR変異が確認された腫瘍を有する転移性NSCLC患者の初回治療薬としては評価されていない。

Cobas EGFR Mutation Test v2は、カリフォルニア州プレザントンのRoche Molecular Systems社が製造している。エルロチニブはオクラホマ州ノーマンのAstellas Pharma Technologies, Inc.社で製造され、カリフォルニア州サウスサンフランシスコのGenentech Inc.社が販売している。

翻訳担当者 白鳥理枝

監修 廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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