2011/06/14号◆特別リポート「エキセメスタンによる乳癌リスクの大幅な低下」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/06/14号◆特別リポート「エキセメスタンによる乳癌リスクの大幅な低下」

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2011/06/14号◆特別リポート「エキセメスタンによる乳癌リスクの大幅な低下」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年6月14日号(Volume 8 / Number 12)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

エキセメスタンによる乳癌リスクの大幅な低下

女性の乳癌発症のリスクを低下させることが示されている治療薬の数が、今後2つから3つへと増えることになる。先週行われたASCO年次総会で発表された臨床試験の結果によると、早期および進行乳癌の治療に主に使用されているアロマターゼ阻害剤のエキセメスタン(アロマシン)が、乳癌発症のリスクが高い閉経後女性において浸潤性乳癌のリスクを大幅に低下させたことが示された。

この知見は、6月4日付New England Journal of Medicine (NEJM) 誌電子版に発表されている。

追跡期間3年の時点において、エキセメスタンを投与した女性はプラセボを投与した女性に比べて乳癌発症の可能性が65%低かった。このリスクの低下率は、これまで行われてきた4つの大規模な乳癌予防の試験の中で最も大きかった。先行試験では、タモキシフェンあるいはラロキシフェンの連日投与により、追跡期間5年の時点において乳癌リスクがそれぞれ約50%と38%低下した。結果としてこの2つの薬剤は、乳癌リスクを低下させるものとして米国食品医薬品局(FDA)に承認された。

この患者集団において3年間の追跡期間は、アロマターゼ阻害剤の長期投与による骨粗鬆症などの重篤な副作用の程度を確定するためには十分ではないと注意を促す研究者もいる。

追跡期間は制限されているものの、この試験の責任医師であるハーバード大学医学部のDr. Paul Goss氏は、これらの結果はエキセメスタンを「閉経後女性の乳癌予防のための新たな選択肢として」位置づけるのに十分であると語った。60歳を超える全ての女性に対して、高齢であるという理由だけで乳癌リスクが高いとされることから、「これらの結果について知らせるべきです」と同氏は続けた。

カナダ国立癌研究所の主導するMAP.3と呼ばれている本試験では、乳癌の発症リスクが高い女性4,560人を登録した。高リスクについての判定は、次のようなリスク要因が1つ以上あることに基づいて行われた。リスク要因には、60歳以上の年齢、異常な乳腺細胞増殖または非浸潤性乳管癌(DCIS)として知られている非浸潤性病変の既往歴、あるいは乳癌リスクモデルとして一般に使用されているゲイルモデル日本語版)による5年リスクの上昇などがあった。

試験参加者は、エキセメスタンあるいはプラセボを5年間連日投与する群のいずれかに無作為に割り付けられた。全体で、浸潤性乳癌を発症した女性はプラセボ群で32人だったのに対し、エキセメスタン群では11人であった。Goss氏によると、エキセメスタン投与によってDCIS発症において統計的に有意な低下がもたらされ、またエキセメスタン群で発症した浸潤性癌はプラセボ群のそれに比べて悪性度が低かったという。

副作用についての理解

重要なことには、エキセメスタン群の女性において重篤な副作用のリスク増加がみられなかったことだ、とGoss 氏は強調した。「重篤な毒性について調べてみましたが見つかりませんでした」と同氏は述べた。骨粗鬆症や心疾患および骨折の発生率は、エキセメスタン群とプラセボ群において同等であった。その一方で、エキセメスタン群の女性においてホットフラッシュや関節痛といった更年期障害がごくわずかに増加したが、統計的に有意な増加ではなかった。

全体としては、参加者の約30%が副作用によりエキセメスタンの投与を中止し、それは各年約10%を占めた。この現象は、早期乳癌に対する術後補助療法としてアロマターゼ阻害剤を使用している女性において臨床現場でみられるものと同様であった。

MAP.3試験のデータから、エキセメスタンは適合する女性においてリスク低下のための新たな選択肢となることが示唆されたと、NCI癌予防部門(DCP)のDr. Worta McCaskill-Stevens氏は語った。「しかし予防という観点から、患者さんはこの薬剤の投与期間さらに起こりうる副作用について詳細に解明されることを求めています」。

特に懸念されるのは関節の激しい痛み、または関節痛であるが、この発生率はアロマターゼ阻害剤によって癌治療を行っている女性において比較的高くなっている。

一方、ある研究によると、アロマターゼ阻害剤の投与を中止した後でも継続して治療の効果(持ち越し効果として知られている現象)が認められており、また有害事象も少なかったことが明らかにされている。MAP.3試験に参加した女性に対して、長期にわたる副作用、特に骨粗鬆症についての程度や重大さをさらに評価するために経過観察を行わなければならないと同氏は強調した。

全体では、この試験では追跡期間が短いためこの薬剤のリスクを明確に理解するのは時期尚早である、とMcCaskill-Stevens氏は述べ、「この群の女性における有害事象が、治療のためにアロマターゼ阻害剤を使用している女性のそれと同じであるとは言えません。なぜなら、利益とリスクは、治療のために使用している患者集団では異なるためです」と続けた。

ペンシルベニア州ダンヴィルのGeisinger Health System 癌研究所長であるDr. Victor Vogel氏は、タモキシフェンとラロキシフェンによる予防試験に携わった医師であるが、エキセメスタンによるリスク低下の知見について「実に素晴らしい成績」と述べた。エキセメスタンによる副作用のほとんどは、モニタリングによって予防や治療が可能である、と同氏は説明した。

副作用が理由でリスク低下を目的としたエキセメスタンの投与を中止したとしても、それまでの努力は価値があるものだとGoss氏は考えている。「エキセメスタンを6カ月でも1年でも使用することで効果が得られることに満足しています」と同氏は述べた。

アロマターゼ阻害剤を乳癌のリスク低下のために使用した場合の安全性や起こりうる副作用について、現在進行中の臨床試験によって新たな情報が得られることを強く望んでいる、とDCPのDr. Leslie Ford氏は述べた。

英国のIBIS-2試験では、乳癌リスクが高い女性を対象にアロマターゼ阻害剤のアナストロゾールとプラセボの比較が行われている。National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP:米国乳癌・大腸癌アジュバント・プロジェクト)主導による米国の試験では、DCISを有する閉経後女性を対象にアロマターゼ阻害剤のレトロゾールとタモキシフェンの比較が行われている。

臨床現場における新たな選択肢

タモキシフェンとラロキシフェンが臨床現場において頻繁に使用されなかったことは明らかであり、患者および医師が毒性を主な懸念事項とみていることが要因となっている。「嬉しいことに、エキセメスタンは全く異なる毒性プロファイルを有します」と、ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンターのCancer Risk Evaluation Program(癌リスク評価プログラム)の所長を務め、この試験の分担責任医師であったDr. Susan Domchek氏は述べた。「そうした違いから、一部の女性にとってエキセメスタンは良好な選択肢とみられています」。

Vogel氏は、乳癌リスクおよび予防に対する対策として薬剤を使用するかについて患者と話し合いをするのは、腫瘍科医ではなくプライマリーケア医であると強調した。その立場にある臨床医は患者とともに乳癌の予防策について教育を受ける必要がある、と同氏は説明した。

「リスク評価の仕方、つまり患者へのカウンセリングの仕方についてプライマリーケア医を教育する必要があります」とVogel 氏は述べた。「それから診療報酬が算定対象であることを確実にし、予防的介入について患者さんにカウンセリングを行う時間に対しても報酬が支払われるようにする必要があります」。

Domchek氏によると、臨床医のリスク評価およびカウンセリング問題について支援するツールを開発している研究グループがあるという。ピッツバーグ大学癌研究所のDr. Nancy Davidson氏およびDr. Thomas Kensler氏は、NEJM誌の付随論説で、「特定の介入に対する反応を予測できる高リスクの患者群およびバイオマーカー」をさらに同定する必要性について述べている。

実際に、スローンケタリング記念がんセンターのDr. Andrew Seidman氏が述べたとおり、血圧やコレステロールの薬剤と違って、タモキシフェンやラロキシフェンあるいはエキセメスタンに意図された予防効果があるのかどうか評価することはできない。医師や患者が薬剤に意図された効果が存在するかどうか確認できるような「フィードバック・ループが形成されていない」と同氏は述べた。

エキセメスタンは2010年に特許切れとなっているが、製薬会社のファイザー社は乳癌のリスク低下を目的としてエキセメスタンを販売するためにFDAに申請を行うかどうかは公表していない。

— Carmen Phillips

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栃木 和美  訳
原野 謙一(乳腺科・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院) 監修
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