第1相臨床試験における高精度医療の活用が患者の転帰を改善 | 海外がん医療情報リファレンス

第1相臨床試験における高精度医療の活用が患者の転帰を改善

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第1相臨床試験における高精度医療の活用が患者の転帰を改善

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解
「高精度医療(Precision Medicine:プレシジョン・メディシン)は、未来のがん治療の話ではなく、現在のものです。本試験は、患者と腫瘍にあわせて治療を個別化していくほど、臨床試験の早期段階の治療法であってもより良い結果が得られることを裏づけています」。米国臨床腫瘍学会(ASCO)の広報担当者、本日のpresscast(インターネット生放送による記者会見)の司会であり、米国内科学会名誉上級会員(FACP)のDon S. Dizon医師は話す。「これは、ASCOの TAPUR試験で用いているアプローチと同じであり、必要としている患者へのより良い治療提供につながる新たな知見が得られるでしょう」。

 

腫瘍の分子特性を基に治療が選択された患者13,000人以上を含む第1相臨床試験346本のメタアナリシスで、有意な転帰改善が確認された。本研究は本日、記者会見で取り上げられ、シカゴで開催される2016年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

 

主著者Maria Schwaederle薬学博士(カリフォルニア大学サンディエゴ校School of Medicine 、Center for Personalized Cancer Therapy所属)は、「今回の研究から、高精度医療アプローチでは患者個別の腫瘍バイオマーカーを利用して、ある特定の治療法が臨床開発の最も早い段階であっても、奏効する可能性が高いかどうかを判定することができると言えます」と話す。「こうしたアプローチは、患者に良い結果をもたらすことが多いので、高精度医療をベースとした第1相臨床試験への登録を検討している医師と患者に自信をもたせ、勇気づけるものと期待しています」。

 

研究に関して
同じ研究者らによる第2相と第3相臨床試験のメタアナリシスでも、高精度医療アプローチによる同様の転帰改善がすでに認められている。著者らによると、今回の研究は臨床開発の最も早い段階であっても、こういった利益が明確であることを初めて示したものである。第1相臨床試験に登録する患者の選択に腫瘍バイオマーカーをますます活用するべきであると言える。

 

本研究は、2011年から2013年の間に発表された第1相臨床試験346本から、有効性と安全性を検証している。本解析は、高精度医療(治療対象患者の選択にバイオマーカーを用いることと定義)を採用した58治療群と、高精度医療を採用しなかった293治療群を対象とした。(1本を除くすべての高精度医療臨床試験で、分子標的薬剤を評価した。上記例外の臨床試験1本では、低酸素誘導因子1α (HIF-1 alpha)を阻害すると考えられている化学療法剤トポテカンを評価し、同試験の患者はこのマーカーについて検査された。)

 

主要な結果
高精度医療を採用した治療群では、腫瘍縮小率が30.6%であったのに対し、採用していない治療群では4.9%であった。高精度医療採用群では、非採用群に比べ、原疾患が悪化するまでの期間も延長していた(無増悪生存期間(PFS)中央値は高精度医療採用群5.7カ月に対して、非採用群2.95カ月)。

 

がん細胞に発見される特有の遺伝子やたんぱく質を標的とした薬剤を用いる分子標的治療法の57試験を対象とするサブ解析でも、結果は同様であった。この患者群のうち、治療の割り当てにバイオマーカーを用いた治療群では、腫瘍縮小率が31.1%であったのに対して、バイオマーカーを用いていない群では5.1%であった。さらに、遺伝子(DNA)バイオマーカーを基に患者に合わせて治療を選んだ群では、たんぱく質バイオマーカー利用群(22.4%)よりも、腫瘍縮小率が高かった(42%)。

 

本解析で、高精度医療アプローチによる腫瘍縮小率上昇と原疾患増悪までの期間延長が確認され、この結果、従来は安全性に焦点を当てていた第1相臨床試験で、有効性および最も恩恵を受ける可能性の高い患者に関しても重要な知見を導くことが可能なことが示唆された。生存期間エンドポイントを第1相臨床試験に組み込めば、重要な新治療法の開発促進に役立つ可能性もあると著者らは示唆している。

 

本研究は、Joan and Irwin Jacobs Philanthropic Fundの資金と援助を受けている。

 

アブストラクトの全文はこちらを参照のこと。

 

読者のために(英語)
・がん治療への第1相臨床試験
・腫瘍マーカーの検査
・がんの個別化医療とは
・分子標的治療への理解
・Cancer.Net ブログ

2016年ASCO年次総会ニュース企画チームの情報開示についてはこちらを参照のこと。
あらゆる報道・取材において米国腫瘍学会年次総会への帰属を明示のこと。

原文掲載日

翻訳松川深玲

監修下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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