イクサベピロンのFDA承認

イクサベピロンのFDA承認

原文 2007/10/17掲載 2011/01/17更新

商標名:Ixempra

・乳癌治療に対して承認(2007/10/16)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

2007年10月16日、FDAは以下の2つの適応症に対して注射用イクサベピロン(ブリストルマイヤーズスクイブ社製造のイグゼンプラ)を承認しました。・イクサベピロンは、転移または部分的に進行した乳癌患者でアントラサイクリンおよびタキサン系抗癌剤に耐性を示す患者、あるいはタキサン系抗癌剤に耐性を示しこれ以上アントラサイクリン治療を行うことが禁忌となっている患者の治療において、カペシタビンとの併用療法として適用されます。

イクサベピロンは、腫瘍がアントラサイクリン、タキサン系抗癌剤およびカペシタビンに対し耐性がある、または難治性の転移あるいは部分的に進行した乳癌患者に対する単独療法として適用されます。

部分的に進行あるいは転移した乳癌患者752例に対し行われたオープンラベルの国際ランダム化臨床試験により、イクサベピロン(3週間毎に1回40mg/m2を静脈投与)とカペシタビンの併用の効果および安全性を、カペシタビン単独療法と比較して評価しました。患者はアントラサイクリンとタキサン系抗癌剤の投与を受けたことがあり、顕著な病状進行がみられたか、耐性を示した、あるいはアントラサイクリンに関してはある一定の蓄積用量を超える量が投与されていました。

治療群は、以前行われた治療、病巣部位、ホルモン受容体の状態およびHER2発現に関して調整が行われました。併用療法を受けている患者は、放射線診断により病状の進行の判定、あるいはあらゆる原因による死亡によって定義した場合、進行停止生存(PFS)において統計的に有意な改善を示しました(HR: 0.69, p<0.0001)。PFSの中央値は併用療法群においては5.7ヶ月、カペシタビン単独治療群では4.1ヶ月でした。また併用治療群の患者では客観的な腫瘍奏効率も上昇しました。生存に関するデータは今回の臨床試験ではまだ完全なものではありませんでした。

イクサベピロン単独療法は、アントラサイクリン、タキサン系抗癌剤およびカペシタビンによる治療を受けたことがあり転移または部分的に進行した乳癌患者、および病状の進行またはアントラサイクリンの場合ある一定の蓄積用量を超える量が投与された患者126例を対象とした単一群の臨床試験において評価されました。イクサベピロンは併用療法の臨床試験と同用量、同スケジュールで投与されました。独自の放射線診断レビューに基づいた客観的奏効率は12.4%(95%CI:6.9, 19.9)でした。臨床試験責任医師の評価に基づいた客観的奏効率は18.3%(95%CI:11.9, 26.1)でした。奏効期間の中央値は6ヶ月(95%CI:5.0, 7.6)でした。

イクサベピロンの投与により患者の約65%において新たなあるいは増悪した末梢神経障害が引き起こされました。グレード3あるいは4の末梢神経障害がイクサベピロンおよびカペシタビン投与患者の23%に見られましたが、カペシタビン治療群においてはグレード3または4の末梢神経障害は報告されていません。イクサベピロン単独療法の試験において患者の14%がグレード3または4の末梢神経障害を経験しました。神経障害は治療を中止すると全体的にグレード1以下に改善されました。

グレード3または4の好中球減少の発現率がカペシタビン単独では11%であったのに対し、イクサベピロンとカペシタビンの併用投与では68%でした。イクサベピロンとカペシタビンの併用投与を受けた患者12例が好中球減少が原因となった合併症により死亡しました。

ベースラインで中程度または重度の肝障害を持つ患者がイクサベピロンとカペシタビン両方の治療を受けた場合、好中球減少に関連する死亡率が高くなりました。この組み合わせは中程度または重度の肝障害がある患者において使用すべきではありません。単独療法として使用した場合、イクサベピロンが投与された患者の54%にグレード3または4の好中球減少が見られました。

その他の共通して見られた毒性(>20%)は、貧血、白血球減少、血小板減少、倦怠感/無力症、筋肉痛/関節痛、脱毛症、嘔気、嘔吐、口内炎/粘膜炎、下痢および筋骨格痛でした。

さらに併用療法群の20%以上で発生した事象は、手掌足底感覚異常(手足)症候群 、食欲不振、腹痛、爪の異常および便秘でした。

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西川百代 訳
林正樹 監修 

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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

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