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エルロチニブとスリンダク併用で、家族性大腸腺腫症患者の十二指腸ポリープが縮小

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エルロチニブとスリンダク併用で、家族性大腸腺腫症患者の十二指腸ポリープが縮小

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

 

遺伝的に消化器がんを発症するリスクが極めて高い人を対象とした小規模な臨床試験において、前がん病変である十二指腸ポリープが2つの薬剤の併用で縮小することが示されたことから、このレジメンを用いることで十二指腸がんのリスクを軽減できる可能性が高まった。

 

このランダム化試験で、エルロチニブ(商品名:タルセバ)とスリンダクを服用した家族性大腸腺腫症(FAP)の患者では、十二指腸(胃に続く小腸の最初の部分)にある前がん性ポリープが、プラセボを服用した患者に比べてはるかに少なかった。その有益性は明白であり、計画されていた登録者数の3分の2だけが治療を終えた段階で試験は早期 に中止された。

 

この試験結果は、JAMA誌の3月22日号に掲載された。

 

十二指腸ポリープの減少が示された初めての試験

FAP患者では、通常、消化管での異常な細胞増殖を抑制しているAPCと呼ばれる遺伝子に遺伝性の異常が認められる。そのため、FAP患者では一生涯のうちに、大腸 、直腸および十二指腸に数百から数千ものポリープが発生すると、米国国立がん研究所(NCI) がん予防部門の消化器その他のがんグループ長であるAsad Umar博士 は説明した。

 

これらのポリープの一部はがんへと移行する可能性がある。FAPの患者はほぼ100%の確率で大腸がんを発症し、一旦ポリープ量と関連するがんのリスクが非常に高くなると、多くの場合すべての大腸を取り除く大腸切除術を受ける。

 

FAP患者の最大12%が、十二指腸がんも発症する。アスピリンやスリンダクなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が単剤でFAP患者の大腸ポリープの増殖を遅らせることは示されていたが、十二指腸では示されていなかった。

 

論文の主著者であるN. Jewel Samadder医師はユタ大学の同僚らとともに、92人のFAP患者をこの試験に登録した。このうち半数がエルロチニブとスリンダクを毎日、6カ月間服用する群に無作為に割り付けられ、残りの半数がプラセボを服用する群に割り付けられた。十二指腸にある総ポリープ量(長さ10 cmの十二指腸にあるポリープの直径を合計して計算)を6カ月間の治療の前後に内視鏡検査で測定した。副作用については、2週間に一度の電話インタビューによる追跡調査を最初の3カ月間実施した。

 

薬剤を併用した患者のおよそ4分の3で試験中にエルロチニブの用量を減らす必要があったが、その最も多かった理由は痛みを伴った発疹が生じたためであった。

 

67人の参加者が6カ月間の治療を終えた時点で、この試験の効果安全性評価委員会は患者の登録を中止するよう勧告した。プラセボ群では総ポリープ量(全ポリープの直径をミリメートル単位で合計)に平均8 mmの増加が認められたのに対し、エルロチニブとスリンダクを服用した患者では平均8.5 mmの減少が認められた。変化を割合に換算すると、プラセボ群では30.6%のポリープ量の増加であり、エルロチニブとスリンダクの併用群では37.9%の減少であった。

 

「FAP患者の十二指腸ポリープにおいて、進行性腺腫の退縮を目的とした何らかの治療により有意な有効性が確認されたのは、この試験が初めてです」とUmar氏は述べた。

 

未解決の問題

この2剤を研究者らが選択したのは、十二指腸腺腫の進行を促進させることが知られている異なる2つの分子経路を標的とする可能性を有するためであると、本試験の主著者の一人であるハンツマンがん研究所のDeborah Neklason博士は説明した。

 

これまでの分子的研究から、(FAP患者にみられる)APC遺伝子の不活性化と上皮成長因子受容体(EGFR)経路によるシグナル伝達が組み合わさることによって、ポリープの形成を促進するCOX-2経路という別の分子経路の活性が上昇することが示唆されてきた。COX-2経路はスリンダクにより阻害され、エロルチニブはEGFR経路を標的とする。

 

「高精度医療について色々と話しますが、これはまさに高精度予防なのです」とNeklason氏は述べた。「それぞれの患者のAPC遺伝子に異常があることがわかっていて、さらにこれらの経路がAPC経路と影響し合っていることがわかっているのです」。

 

この試験の中で実施された研究で、7人の患者から得た組織検体を用いて、予想通りEGFR経路が確かに抑制されていたことが研究者らにより示された。

 

今後の興味深い疑問の一つは、エルロチニブ単独で、エルロチニブ+スリンダクと同程度にポリープ量を減少させる可能性があるかどうかであるとUmar氏はコメントした。

 

この疑問について検討することに研究者らは関心を持っていると、Neklason氏は述べた。「しかしながら、互いに影響し合う独立した2つの分子経路を阻害することができたことから、この試験は成功であったとわれわれは確信しています」。

 

Neklason氏と、そのチームは試験結果から生じた2つのさらなる疑問に回答するために、現在、試験を計画している。その疑問とは、副作用の軽減が見込まれる、より低い用量のエルロチニブがポリープの増殖を抑制するのに有効であるか、そして、どのような投薬スケジュールが患者にとっての有効性と利便性のバランスの上で最適であるかということです。彼らは、12カ月間の連続服用と、連日の代わりに週1、2回の服用を繰り返す投薬スケジュールの両方を試験したいと考えている。

 

この薬剤併用により、すでにあるポリープの縮小に加えて、新たなポリープの形成を防止できるかという疑問に答える上でも、より長期の試験の実施が助けとなる可能性がある。

 

「私が思うに、おそらく最も重要な長期的疑問は、これらの薬剤が実際のところ個々の患者ががんを発症するのを防ぐかどうかを含めた臨床転帰ではないだろうか」とNeklason氏は述べた。

 

この疑問に対する答えには、10年あるいはそれ以上の追跡調査が必要となる可能性があると彼女は続けた。大きな十二指腸腺腫の除去のために、たびたび受けなければならないが、繰り返され、衰弱を招く手術をFAP患者が回避するのにこの方法が役立つかが、今後の試験における実用的な評価項目となる可能性がある。

 

「これらの手術によって多くの傷跡や合併症が引き起こされるのです。したがって、このような治療を実際に予防したり、あるいは遅らせることが可能かどうかを確認することが重要です」。

 

 

原文掲載日

翻訳田村克代

監修辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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