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進行卵巣がんに対する新しい治療戦略がマウスで有望

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進行卵巣がんに対する新しい治療戦略がマウスで有望

 米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

進行卵巣がんの実験的な治療戦略により、動物モデルで腫瘍の縮小が認められたという新しい研究が報告された。この治療法では、タンパク質の断片(ペプチド)を用いてがん細胞周囲組織(腫瘍微小環境)を刺激し、がん細胞の増殖を阻害する。

 

ボストン小児病院血管生物学プログラムのSuming Wang博士とAnna Blois博士のチームが、3月9日付けのScience Translational Medicine誌に研究結果を報告した。この結果を踏まえ、研究チームでは、身体の他部位に転移した卵巣がんに対する治療法の候補として、この治療法の研究を続けるとしている。

 

研究を統括するボストン小児病院のRandolph Wstnick博士は、転移性卵巣がんには新しい治療法が必要だと述べた。手術や化学療法で効果が得られる患者もいるが、多くの卵巣腫瘍では遺伝子変化が起こり、最終的に化学療法が効かなくなるため、患者には治療選択肢がほとんど残らない。

 

微小環境を標的とする

 この新しい研究は、10年以上にわたりWatnick博士の研究室が行ってきた、腫瘍と微小環境の相互作用を解明する研究を基礎としている。長期的な目標は、腫瘍微小環境の非がん性細胞を刺激して腫瘍を縮小、または安定化させ、それによってがんの転移を抑える方法を見出すことである。

 

2009年にWatnick博士のチームは、ヒトの前立腺がんおよび乳がんの動物モデルにおいてプロサポシンと呼ばれるタンパク質が転移を予防することを報告した。このタンパク質が、骨髄から転移部位に動員される単球と呼ばれる免疫細胞を刺激し、トロンボスポンジン-1というタンパク質を産生する。

 

これらの骨髄由来単球は、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)とも呼ばれ、免疫細胞の働きを抑制することで腫瘍増殖を促進する。このペプチドは、MDSCを標的とすることでT細胞の抑制を阻害し、T細胞の腫瘍増殖抑制能を増大させる可能性があることを、研究チームでは2013年に報告した。

 

トロンボスポンジン-1は通常、損傷に対する組織反応を抑制する役割を担っている。がんの動物モデルにおいて、トロンボスポンジン-1は2つの方法で転移性腫瘍の増殖を阻害する。1つは、がんが一定以上の大きさに増殖するのに必要な血管新生を阻害することであり、もう1つは免疫細胞を刺激してがん細胞を殺すことである。

 

今回の研究でWatnick博士らは、トロンボスポンジン-1を刺激するプロサポシンのペプチド断片を同定し、薬剤候補として使用する改変ペプチドを作製した。研究チームでは、ヒト卵巣がん細胞を移植した腫瘍マウスでこのペプチドを検討した。

 

「このペプチドは腫瘍の増殖を抑制するだけでなく、検出できなくなるまで縮小させることがわかりました。実に面白い発見です」とWatnick博士は述べた。

 

トロンボスポンジン-1の研究者であるが本研究には参加していないNCIがん研究センターのDavid Roberts博士は次のように述べた。「一般的に、生理活性ペプチドは不安定なので活性の弱い薬剤ですが、この研究の著者らは環状ペプチドを作製してこの問題を解決しようとしています。環状ペプチドは新しい実験的な治療薬で、さらに研究する価値があります」。

 

生物学的機序を研究する

 マウスでは、このペプチドが、トロンボスポンジン-1と相互作用するCD36と呼ばれる受容体タンパク質を発現する卵巣がん細胞を死滅させた。この結果に基づき、研究者らは転移性卵巣がん患者から採取した組織検体および腫瘍検体中のCD36の発現量を解析して、ペプチド治療薬をどのくらい広範囲に適応できるかについて評価した。

 

134人から得られた検体を分析したところ、原発腫瘍の97%が CD36を発現していたのに対し、正常細胞では61%であった。また、CD36の発現量は原発腫瘍よりも転移性腫瘍で多かった。CD36の発現量と卵巣がんの程度が関連することは、このペプチドの開発を継続するうえでさらなる根拠に、と研究の著者らは述べた。

 

Roberts博士の研究室や他の研究者らは最近、がん細胞の直接的な破壊に関与すると考えられる別の トロンボスポンジン-1受容体を特定した。CD47と呼ばれるこの受容体も、腫瘍始原細胞(がん幹細胞とも呼ばれる)を成熟細胞に分化させる。

 

つまり、腫瘍微小環境においてトロンボスポンジン-1の発現を増加させる薬剤は”複数の有益な効果をもたらす可能性がある”のです」と Roberts博士は説明した。

 

Watnick博士は、新しい治療法により患者には別の利点があるかもしれないと付け加えた。腫瘍そのものではなく微小環境を標的とする治療に対して、腫瘍が抵抗性を獲得することは考えにくいためだ。腫瘍は、過去に効果があった治療に対する反応を抑えることができる遺伝子変化を起こすことも多い。

 

「腫瘍ではなく微小環境の細胞を標的とすることで、抵抗性の問題を大幅に緩和したり、回避したりできるかもしれません。」とWatnick博士は述べた。

 

 

原文掲載日

翻訳石岡優子

監修北丸綾子(分子生物学/理学博士

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