腫瘍DNA検査はリンチ症候群の検出率を向上させる―検査の年齢制限に異議 | 海外がん医療情報リファレンス

腫瘍DNA検査はリンチ症候群の検出率を向上させる―検査の年齢制限に異議

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腫瘍DNA検査はリンチ症候群の検出率を向上させる―検査の年齢制限に異議

オハイオ州立がんセンター

 

オハイオ州立大学総合がんセンター、Arthur G. James Cancer Hospital and Richard J. Solove Research Institute(OSUCCC)の新たな研究で、リンチ症候群の症例の多くは、現在推奨されている年齢制限と試験方法では見逃されている可能性が示された。

 

リンチ症候群は、遺伝性の遺伝子変異であり、その遺伝子変異を持つ人に特定のがん腫を発症させる。最も多いのは大腸がん、子宮内膜がんであり、卵巣がん、胃がんその他の消化器がん、肝臓系のがんも発症する傾向がある。今回の新しい研究によると、リンチ症候群の遺伝子変異を有する人の24%が、61歳以上で子宮内膜がんと診断されたにもかかわらず、リンチ症候群のスクリーニングとして腫瘍組織診が推奨されるのは60歳以下の患者に限定されてきた。

 

さらに、マイクロサテライト不安定性検査( またはMSI検査として知られる)特殊なDNA検査を追加することにより、子宮内膜がん患者におけるリンチ症候群の検出率が12%増加すると報告している。

 

この新しいデータを基に、研究者らは、子宮内膜がんと初めて診断された全ての患者が、年齢に関わらず、リンチ症候群検査に、検出率の改善を示した特殊なDNA検査を追加すべきであると述べている。

 

「60歳以下の患者に限定して検査を行うと、リンチ症候群で子宮内膜がんを発症する患者の5分の1が見逃されることになります。61歳以上のリンチ症候群による子宮内膜がん患者の血縁者に対して、がんの早期発見ができる機会があるという情報を知らせ説明することができないため、患者に介入する機会が失われることになります。われわれは、全ての子宮内膜がん患者が、年齢に関わらず、リンチ症候群のスクリーニングとして腫瘍検査を受けるべきと考えています。遺伝子変異のある人において、がんや前がん病変を早期発見するベネフィットは十分確立されています」と共著者のPaul Goodfellow博士は述べている。

 

Goodfellow博士と共同研究者は2015年9月発行Journal of Clinical Oncology誌に先んじて電子版に研究結果を報告した。

 

「DNA構造に根本的な変化を有する患者を特定しなければ、リスク要因のある血縁者に対してこれらのがんを発見し抑えるのに必要な情報を利用できません」と、The OSUCCC – James Molecular Biology and Cancer Genetics programで研究を行うPaul Goodfellow博士は言う。

 

試験デザインと結果

特定のMSI検査を追加することでリンチ症候群の検出率が現方法を上回るか明確にするために、現在の研究を実施した。この検査により腫瘍医は微小なDNA鎖に生じる変化を評価同定し、がんのリスクを伝えることができる。

 

研究者は、NCIの共同グループが実施する臨床試験(GOG-210)に参加した1000例以上の子宮内膜がん患者から得た腫瘍組織 と正常組織サンプルを解析した。本試験は現在十分な患者数を得たため終了している。

 

また、人口統計学的情報、がん家族歴、特異的な腫瘍の特徴も試験の解析に組み入れられた。

 

その結果、DNA 検査 (マイクロサテライト不安定性検査)を追加することにより、子宮内膜がん患者におけるリンチ症候群の検出数が有意に増加した。

 

診断された年齢は、変異のある群のほうが、変異のない群よりも低かったが、変異のある患者の約4分の1は61歳以上であった。

 

この解析によると、腫瘍の約12%にDNAミスマッチ修復遺伝子の異常が示唆されたと共に、リンチ症候群の腫瘍スクリーニングとしてマイクロサテライト不安定性検査も加えることで、生殖細胞系突然変異を有する患者をより多く抽出できることがわかった。「もし腫瘍タンパク質の発現検査のみを実施するならば、これらリンチ症候群の追加的診断は行われないでしょう。がんリスクの増加について知っておくことが、血縁者に対するスクリーニングの推奨を変えるだけでなく、患者の治療とサーベイランス(経過観察)を決定するためにも重要です」とGoodfellow博士は述べている。

 

「リンチ症候群関連のがんを発症するリスクが最も高いのはどのような対象なのかを理解しておくことで、より集中的に標的とするがんのサーベイランスを行い、前がん状態から重い診断となる人を見分けることができるのです。つまりこのことを認識し行動することが、リンチ症候群の血縁者を進行がんと診断するリスクを減らすために非常に重要です」とGoodfellow博士はつけ加えている。

 

本研究は以下より資金提供を受けた:the National Institutes of Health/NCI (grant CA134254), Barnes-Jewish Hospital and Siteman Cancer Center, The Ohio State University James Comprehensive Cancer Center and NCI Gynecologic Oncology Group and its subsidiaries (grants CA 27469, CA 37517, CA180822, CA27469, CA114793, and CA180868).

 

OSUCCCの共同研究者は以下の通りである:Heather Hampel MS, LGC, Floor Backes MD, Caroline Billingsley, David E. Cohn, MD, Nilsa Ramirez, Luke Simmons and Alexis S. Chassen. Collaborators from other institutions include, Amy P. Schmidt, Feng Gao, MD, Louise Brinton, MD, Lisa Landrum, MD, Melissa Geller, MD, Paul DiSilvestro, MD, Michael Pearl, MD, Shashikant Lele,MD, Matthew Powell, MD, Richard J. Zaino, MD and David Mutch MD.

原文掲載日

翻訳武内優子

監修原野謙一(乳がん・婦人科がん・腫瘍内科/MDアンダーソンがんセンター)

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