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免疫チェックポイント阻害剤の進歩

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免疫チェックポイント阻害剤の進歩

米国国立がん研究所(NCI)/ブログ~がん研究の動向~

原文掲載日:2015年12月18日

 

2015年初めに、ジミー・カーター元米国大統領は、免疫チェックポイント阻害剤という部類の薬剤の1つである免疫療法薬ペムブロリズマブ(Keytruda[キートルーダ])を含む進行期の悪性黒色腫(メラノーマ)に対する治療を受けていると公表した。 カーター氏は最近、最新の核磁気共鳴画像法(MRI)検査の結果、原発がんや転移性腫瘍の徴候が示されないことを公表した。

 

本インタビューで、James Gulley医学博士(米国国立がん研究所(NCI)がん研究センター(CCR)泌尿生殖器悪性腫瘍部門 免疫療法課長 兼 腫瘍内科長)は、免疫チェックポイント阻害剤、患者のケアに対するその影響、および免疫療法に対する今後の方向性に関して議論した。

 

免疫チェックポイント阻害剤は通例、免疫系のブレーキを外す治療薬と言われます。これは最適な説明になっていますか。

 

はい。最適な説明になっています。ただし、免疫チェックポイント阻害剤が腫瘍を直接攻撃しないことを理解することも確かに重要です。免疫チェックポイント阻害剤には直接的な抗腫瘍活性はありません。つまり、こうした薬剤を使用する前に腫瘍に対する免疫反応が存在しないと、こうした薬剤は効果を示さないでしょう。ある種の免疫反応がすでに発現している場合は、こうした薬剤は免疫反応のブレーキだけを外します。

 

しかし、免疫反応が存在するかどうかを確認することは困難です。また、各患者が反応する場合、それは免疫反応が存在するということですか。

 

はい、まだ免疫チェックポイント阻害剤投与患者の少数で反応が認められる程度です。しかし、こうした薬剤による免疫反応の活性化を促す要因の1つは、ペムブロリズマブニボルマブ(オプジーボ)などの抗PD-1抗体に対する強力で持続する、すなわち長期にわたる、そして、迅速な反応です。また、私たちはさまざまな種類の腫瘍においてこうした薬剤に対する反応を調べているところです。しかし、この場合も患者にあらかじめ免疫反応が存在する必要があります。

 

こうした既存の免疫反応を得る方法で可能性のあるのは、腫瘍内に多くの遺伝子変異が存在するか否かです。一部の腫瘍、すなわち肺がん、黒色腫、および膀胱がんには遺伝子変異が多数存在する可能性が高く、それゆえ免疫反応が生じる可能性が高いと思われます。

 

実例として、私たちは実際、多数の大腸がん患者で強力な免疫活性を確認していません。ですが、大腸の腫瘍にマイクロサテライト不安定性 (変異を多数引き起こす遺伝子異常)というものが存在すると、免疫系による腫瘍認識能が高まることが現在知られています。免疫チェックポイント阻害が大腸がん患者で作用することをまさに調べているところです。

 

免疫チェックポイント阻害剤は全て点滴静脈注射剤です。その投与スケジュールはどのようなものですか。

 

免疫チェックポイント阻害剤はいずれもモノクローナル抗体で、通常2~3週間毎に1時間かけて投与されます。疾患が進行しない以上、かつ、投与を中止させる可能性がある副作用が生じない以上、患者は投与を受け続けます。

 

免疫チェックポイント阻害剤に対する腫瘍の奏効率はどのようなものですか、また、その副作用はどのようなものですか。

 

腫瘍の奏効率は通常、15~25%程度の範囲です。より高い奏効率が見積もられるかもしれませんが、それは一部の選ばれた患者でのことです。実例として、膀胱がんでは、最大40%に達する可能性がありますが、腫瘍内でPD-L1が高発現している患者でのことです。

 

副作用、特に抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体によるものに関しては、副作用プロファイルは、抗CTLA-4抗体で認められるものと比較して重度ではありません。通例、重度の有害事象が認められる患者は少なく、また、多数の患者には副作用は認められません。

 

最初に承認された免疫チェックポイント阻害剤イピリムマブ(ヤーボイ)はCTLA-4を標的とします。ですが、その作用は抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体と異なるように思えます。それはなぜでしょうか。

 

最初に、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体の副作用プロファイルは以前より良好です。患者にとって忍容性がさらに優れているので、患者はより長期間投与を受け続けることができます。

 

さらに、イピリムマブでは急速な腫瘍の縮小はまれに確認される程度です。大抵の場合、腫瘍は一旦進行し、その後縮小します。この理由は、イピリムマブは主に血液中のT 細胞に作用し、そして、こうした非特異的活性化が時間をかけて多数の抗腫瘍性T細胞を活性化し、奏効をもたらすためです。

 

しかし、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体では、非常に急速な奏効が認められます。この理由は、こうした薬剤は主にすでに腫瘍を攻撃している初回抗原刺激を受けたT細胞に作用するためです。T細胞はすでに抗腫瘍活性を有し、攻撃準備が整っているものの、チェックポイントにより抑制を受けています。次に、こうしたチェックポイントの作用を阻害する薬剤によりT細胞は再び活性化し、すぐに腫瘍を攻撃することができます。

 

こうした2つの要因が決定的な差を作ります。

 

実例として、カーター元米国大統領の例のように、治療に対して完全奏効する患者はどこにいますか?こうした反応は多数の症例で持続しますか。

 

こうした薬剤で認められる奏効の大多数はいまだに部分奏効で、化学療法や他の分子標的薬で認められる奏効と同様の比率です。しかし多くの場合、認められる奏効は非常に強力で、腫瘍縮小率は80%~90%です。

 

そして、より重要なこと、すなわち、誰もが驚くことは、こうした奏効が持続することです。部分奏効でさえも化学療法やチロシンキナーゼ阻害剤などの分子標的薬で認められたものと比較すると、非常に持続するのです。

 

一部の症例で認められている奏効は、機能的治癒です。当然のことですが、誰にでも認められるものではありません。しかし実例として、イピリムマブによる初回治療を受けた黒色腫患者の約20%は、治療開始から最長で10年間も生存しています。

 

イピリムマブによる治療開始から3年以上生存した患者の大多数は10年後も生存するでしょう。現在、黒色腫患者は低年齢化していることが多いので、競合する死因はそれほど多くはありません。しかし、これらは興味深い数でありますが、イピリムマブによる利益が得られた場合は、多くの症例で寿命が延長することを示唆しています。

 

免疫チェックポイント阻害剤の将来はどのようなものになりますか。

 

焦点となる分野がいくつか必要ですが、いずれも同時に研究されています。

 

奏効を予測するバイオマーカーの特定は重要な分野の1つです。実例として、私たちが発見したことは、腫瘍微小環境におけるPD-L1発現量が多い患者は治療に反応する可能性が高いことです。これが賦活化した免疫反応の「足跡」になります。しかし、私たちは治療開始時に患者の腫瘍内で生じていることを調べることができるようにしなければいけません。1年前の生検標本ではありません。

 

生検は優れていますが、非常に侵襲的で、腫瘍の位置に依存し、かつ、危険を伴うことがあります。そこで、私たちは血液中の腫瘍細胞上のPD-L1発現量を測定することができるかどうかを調べ始めています。

 

私たちは、炎症反応が生じている(免疫反応の指標)腫瘍を特定する画像診断法も調べています。すなわち、腫瘍内の炎症を安全にかつ明確に画像化する方法が見つかると、これは大きな進歩になることでしょう。炎症が見つかると、免疫チェックポイント阻害剤を使用して治療するでしょう。炎症が見つからないと、腫瘍部位に免疫反応を引き起こす薬剤を追加後、免疫チェックポイント阻害剤を使用して治療するでしょう。

 

こうした免疫チェックポイント阻害剤+他の免疫チェックポイント阻害剤などの併用療法の開発も重要で、私たちはすでにこうした臨床試験を実施し始めています。腫瘍微小環境を詳しく調べることで、治療に対する個別化アプローチがさらに深まり、ある患者には併用療法が必要であり、別の患者には免疫チェックポイント阻害剤のみで十分であるといったことを決定することができると私は考えます。

 

免疫チェックポイント阻害剤はより早期の疾患で使用される可能性はありますか?既存の免疫反応が確立する時点で腫瘍内遺伝子変異は十分に認められますか。

 

もちろんです。臨床的に腫瘍が見つかる頃には、腫瘍における変異荷重はすでに大きく、こうした変異荷重により既存の免疫反応は増強されますが、それだけでは免疫系はまだ機能することができません。

 

免疫チェックポイント阻害剤は、その副作用プロファイルが化学療法や放射線治療と比較して少ないため、かつ、その反応が急速なため、多数のがんに対する初回治療において臨床試験をされるべきです。また、こうした薬剤は有効であると考えます。

 

こうした紛れもない進歩は、患者の20%で現在認められている強力で持続する奏効に基づき、かつ、奏効率を40%、60%、そしてそれ以上に上げるでしょう。これを可能にするのが併用療法であり、最終的にはそうなると私は考えます。

 

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James Gulley医師(左、NCI所属)は、米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターで治療を受けている担当患者(右)と話している。(NIH所内研究プログラム)
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画像はこちらをご覧ください
[画像左]PD-L1とPD-1の結合によりT細胞は腫瘍細胞を殺傷することができません。
腫瘍細胞、抗原、T細胞受容体、T細胞

[画像右]PD-L1かPD-1どちらかを阻害することにより、T細胞は腫瘍細胞を殺傷することができるようになります。
腫瘍細胞の死、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、T細胞

[画像下解説]ペムブロリズマブはPD-1(免疫反応を抑制するいわゆる免疫チェックポイント分子の1つ)という免疫細胞上に存在するタンパク質を標的とする。(NCI/Terese Winslow)
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原文

 

翻訳渡邊 岳

監修田中謙太郎(呼吸器内科、腫瘍内科、免疫/福岡東医療センター)

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