うつ状態の頭頸部がん患者は生存率が3.5倍減少し、再発リスクが上昇する | 海外がん医療情報リファレンス

うつ状態の頭頸部がん患者は生存率が3.5倍減少し、再発リスクが上昇する

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うつ状態の頭頸部がん患者は生存率が3.5倍減少し、再発リスクが上昇する

うつ状態から転帰までの決定的な関連性がMDアンダーソンの研究で明らかに

MDアンダーソンがんセンター

 

うつ状態は、頭頸部がんの5年生存率および再発率の重要な予測因子である。これは、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新たな研究による。これらの知見は、Psychosomatic Medicine誌で発表され、がん生存率におけるうつ状態の影響についての最も大規模な報告の一つである。

 

うつ状態は個人の生活の質(QOL)に明らかな悪影響を及ぼしうるとし、さらに近年ではがん患者のQOLへの影響もより明白になっていると、MDアンダーソンがんセンターの行動科学助教で、本研究の主著者であるEileen Shinn医学博士は説明した。うつ状態の症状の増加ならびに肺がん、乳がん、卵巣がん、および腎臓がんの死亡リスク増加との間に、軽度の関連を示すエビデンスが増加している。

 

生存におけるうつ状態の影響を明らかにするため、調査チームは単独のがん種を解析することに焦点を当てた。サンプル集団を限定し、年齢、腫瘍サイズ、化学療法の既往歴など、転帰に影響を及ぼすことが知られる因子を調整したため、うつ状態の影響をより深く知ることができた。

 

研究者らは、MDアンダーソンがんセンターで新たに中咽頭扁平上皮がん(OSCC)との診断を受けた患者130人を追跡調査した。このがんは、咽喉の背側および舌根に発現する腫瘍である。

 

放射線療法の開始時に、患者は臨床的抑うつ症状を同定するのに有効な質問紙に回答した。研究者らは、全員の治療が完了し、最終来院または死亡に至るまで、中央値で5年間、参加者を観察した。

 

「本試験の結果はかなり興味深く、一般的に是認された予後因子の調整後も、うつ状態が5年生存率を予測するうえで重要な因子であることを示しています」と、統括著者である放射線腫瘍学教授のAdam Garden医師は述べた。実際に、うつ状態は生存への重要な影響があることが示された唯一の因子であった。

 

質問紙でうつ状態と評価された患者は、うつ状態とのスコアが出なかった患者に比べ、5年後の生存が3.5倍減少した。うつ状態の程度を示すスコアも重要で、本評価においてスコアが高かったすべての項目において、生存率低下のリスクが10%増加する結果となった。

 

本試験の結果は、異なる心理学的健康調査によって再現されたもので、がん診断後からうつ状態の評価までの期間は考慮されていない。

 

著者らによると、米国では毎年10,000~15,000人が中咽頭扁平上皮がんと診断されている。中咽頭扁平上皮がんに関連することが知られるいくつかの主要リスク因子として、喫煙、飲酒およびヒトパピローマウイルス(HPV)感染などがある。実際、中咽頭扁平上皮がんの発現率はHPV感染の増加により過去20年間で2倍になったとShinn医学博士は述べた。

 

本患者群で飲酒および喫煙も調査されたが、いずれも生存率への影響はなかった。また、調査可能な症例におけるHPV感染の有無については関連性はないとみられた。

 

中咽頭扁平上皮がんの治癒率は通常60~80%と高いにもかかわらず、患者の再発率は約30%と異常に高い。研究者らは、うつ状態が生存と関連づけられたことから、この疾患の再発との関連性について調査した。

 

「すべての不定要素を調整すると、うつ状態が4倍近くもの再発のリスク増加と関連していました」とShinn医学博士は述べた。 「また、喫煙歴が全くない人々では、喫煙者と比較して、再発の可能性が73%低かったのです」。がん再発に関連するのは、これら2つの因子のみであった。

 

今回の結果を 他のがん種で一般化するのには注意を要すると強調する一方で、研究者らは、本試験の結果は中咽頭扁平上皮がん患者の転帰に影響を及ぼすうつ状態の重要な役割を示唆した。今回の研究はうつに対する治療を行ったかどうかには対処していないが、本患者集団に対するうつ病のスクリーニングは妥当である可能性がある、とShinn医学博士は説明した。

 

「がんの転帰におけるうつ病の影響にかかわらず、すべての患者が効果的な治療および治療選択肢を受けられるように、うつ状態が長引くあるいは悪化する場合には、専門家に相談に来られるべきです」とShinn医学博士は述べた。

 

今後、研究者らはさらに大規模なサンプルでの知見を再現し、このがんをより致死的に至らしめるうつ状態の生物学的原因を究明することに注力する意向である。

 

機序として考えられるものは、抑うつと関連する好ましくない生活習慣、または、がん生物学に影響を及ぼす慢性炎症に対する異なる生物学的反応である。しかし、これらの課題は、今後の研究で答えを出す必要がある。

 

Shinn医学博士を筆頭に、他のMDアンダーソンがんセンターの著者は以下のとおりである: Alan Valentine, M.D., Psychiatry; Amit Jethanandani, Karen Basen-Engquist, Ph.D., and Emma Atkinson, all of Behavioral Science; Bryan Fellman and Diana Urbauer, both of Biostatistics; Wamique Yusuf, M.D., and Myrshia L. Woods, both of Cardiology; Merrill S. Kies, M.D., Thoracic Medical Oncology; Anil K. Sood, M.D., Gynecologic Oncology and Reproductive Medicine; Cindy Carmack, Ph.D., Palliative Care; William H. Morrison, M.D., Radiation Oncology; and Ann Gillenwater, M.D., and Erich M. Sturgis, M.D., both of Head and Neck Cancer Surgery. Additional authors include: Daniel Lenihan, M.D., Vanderbilt University Medical Center.

 

本試験は、米国国立がん研究所(R03 CA108358, P30 CA016672, K07 CA 093512, and R25 CA056452)および米国国立歯科・頭蓋顔面研究所(R01 DE019141)から助成を受けた。

原文掲載日

翻訳太田奈津美

監修太田真弓(精神科・児童精神科/さいとうクリニック院長)

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