FDAが多発性骨髄腫の治療にエロツズマブを承認

Oncology Approved Drugs

2015年11月30日、米国食品医薬品局(FDA)は以前に1~3種類の治療を受けたことがある多発性骨髄腫患者を適応として、レナリドミドおよびデキサメタゾンとの併用でエロツズマブ[Elotuzumab]を承認した(商品名:EMPLICITI,ブリストル・マイヤーズ スクイブ社)。

エロツズマブはSignaling Lymphocyte Activation Molecule Family 7(SLAMF7)を標的とするモノクローナル抗体である。SLAMF7は骨髄腫細胞およびナチュラルキラー細胞に存在する。

過去に1~3種類の前治療を受けたことがある再発性または難治性の多発性骨髄腫患者において、無増悪生存期間および全奏効率を評価した多施設、ランダム化、オープンラベル比較試験の結果に基づいて、エロツズマブは承認された。全646人の患者はレナリドミドおよびデキサメタゾンにエロツズマブを併用した群(n=321)および、レナリドミドおよびデキサメタゾン単独の群(n=325)に無作為に割付けられた。病状が増悪するあるいは忍容できない毒性が生じるまで治療は続けられた。

本臨床試験では複数の主要エンドポイントである無増悪生存期間および全奏効率が統計学的に有意に改善された。エロツズマブ併用群の無増悪生存期間の中央値は19.4カ月、レナリドミドおよびデキサメタゾン単独群は14.9カ月(hazard ratio 0.70,95% CI:0.57,0.85; p = 0.0004)であった。エロツズマブ併用群の全奏効率は78.5%(95% CI:73.6,82.9)、一方でレナリドミドおよびデキサメタゾン単独群は65.5%(95% CI:60.1,70.7)であった(p = 0.0002)。

レナリドミドおよびデキサメタゾンにエロツズマブを併用した318人の患者およびレナリドミドおよびデキサメタゾン単独の317人の患者における安全性データは薬剤曝露を反映している。もっともよくみられ(20%以上)、かつ対照群と比較してエロツズマブ併用群で頻度が増えた有害反応は疲労、下痢、発熱、便秘、咳、末梢神経障害、鼻咽頭炎、上気道感染症、食欲減退、肺炎であった。

他の重要な有害反応は注入反応、二次癌、肝毒性、完全奏効の判定への干渉であった。エロツズマブはIgGモノクローナル抗体なので、奏効率の評価に使用される血清タンパクの電気泳動および免疫固定アッセイにて検出されてしまうからである。

重篤な有害事象はエロツズマブ併用群患者の65.4%、レナリドミドおよびデキサメタゾン単独群患者の56.5%で発生した。もっともよくみられた重篤な有害反応は肺炎、発熱、呼吸器感染症、貧血、肺塞栓および急性腎障害であった。

エロツズマブの推奨用量・用法は、初回の2サイクルは10mg/kgを週1回静脈内投与,その後,病状が増悪あるいは忍容できない毒性が生じるまで2週に1回投与し、レナリドミドは1日目から21日目まで1日1回25mgを経口投与する。デキサメタゾンはエロツズマブを投与した週には分割投与を行う,すなわち、エロツズマブ投与前にデキサメタゾン8mgを静脈内投与し、28mgを経口投与する。エロツズマブを投与しない週にはデキサメタゾン40mgを経口投与する。H1ブロッカー、H2ブロッカーおよびアセトアミノフェンの前投薬はエロツズマブの投与前に実施すべきである。

エロツズマブは処方薬ユーザー・フィー法(PDUFA)の目標期日である2016年2月29日より前に承認されている。本申請は優先審査がなされ、画期的治療薬に指定されている。これらの迅速承認プログラムについてはGuidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics(http://www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm358301.pdf)に記載されている。

全処方情報はFull prescribing information(http://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2015/761035s000lbl.pdf)を参照のこと。

医薬品および医療機器の使用との関連が疑われる重篤な有害事象が認められた場合、医療従事者はいずれももれなくFDAのMedWatch報告システムに報告する必要がある。FDAのウェブサイト(http://www.fda.gov/medwatch/report.htm)を参照し、オンラインフォームに記入するか、記入したフォームをファックス(1-800-FDA-0178)または郵送料前納済みの住所が記載された書式をダウンロードして郵送、または電話(1-800-FDA-1088)によって報告する。

翻訳担当者 下野龍太郎

監修 北尾章人(血液・腫瘍内科/神戸大学大学院医学研究科)

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