ダラツムマブは多発性骨髄腫に有効

キャンサーコンサルタンツ

現在も臨床試験中である分子標的薬ダラツムマブ[daratumumab]は、標準治療に反応しなくなった多発性骨髄腫患者に有効と思われる。これらの結果はこのほど、New England Journal of Medicine誌に掲載された。

多発性骨髄腫は形質細胞のがんで、形質細胞は体の免疫系を構成する白血球細胞の特殊な型である。米国では約70,000人が多発性骨髄腫に罹患して生活しており、毎年約24,000人が新たに同疾患と診断される。骨髄腫患者では異常な形質細胞数が増加し、機能を果たさない抗体が大量に生産され、それが血中や尿中から検出される。レナリドミド(レブラミド)およびボルテゾミブ(ベルケイド)に対して不応性(または耐性)を示すようになった多発性骨髄腫患者は、治療の選択肢が限られている。このような患者には標準治療がなく、概して予後不良である。

多発性骨髄腫を理解する

多発性骨髄腫に対していくつかの治療の選択肢があるが、ひとたびがんが標準治療に対して反応しなくなると不応性とされ、そうなると治療の選択肢はほとんど残っていない。

多発性骨髄腫細胞はCD38と呼ばれるタンパク質を過剰発現している。それゆえに研究者は、CD38を特異的に標的としてCD38に結合するようにダラツムマブを設計した。ダラツムマブはがん細胞に結合し、ひとたび結合が生じると複数の経路を介してがん細胞を死滅させる。

ダラツムマブを評価する最近の試験では、中央値で4種類の前治療法に反応しなくなった多発性骨髄腫患者を対象とした。これはダラツムマブを評価する初期試験で、患者に対して同薬剤を2種類の用量で投与した。

高用量を投与された患者のうち、36%で抗腫瘍効果が得られた。

抗腫瘍効果が得られた患者のうち、65%の患者は治療1年後において疾患の増悪がなかった。

特にこの患者群が広範な前治療を受けていたことを考えると、ダラツムマブの忍容性は良好であった。

参考文献:
Lokhohrst H, Plesner T, Laubach J, et al. Targeting CD38 with daratumumab monotherapy in multiple myeloma. New England Journal of Medicine. 2015; August 26, 2015DOI: 10.1056/NEJMoa1506348


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翻訳担当者 木下秀文

監修 北尾章人(腫瘍、血液内科/神戸大学大学院医学研究科)

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