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アスピリンは乳がんを治療しうるか?

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アスピリンは乳がんを治療しうるか?

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アスピリンが乳がん女性患者のがん再発防止と延命に役立つかどうかの研究に対して、ダナファーバーがん研究所、ブリガム&ウィメンズ病院(BWH)の研究者らは国防総省のCongressionally Directed Medical Research Program(議会指定医学研究プログラム)から1,000万ドルのBreakthrough Awardを獲得した。これは乳がんに対するアスピリンの効能を検証する米国初のランダム化試験であり、乳がんと診断されている300万人以上のアメリカ人女性に影響を与えるものだ。

 

乳がんに対するアスピリン(Aspirin for Breast Cancer: ABC)臨床試験は、米国国立がん研究所(NCI)が助成支援する全国的臨床試験ネットワークAlliance for Clinical Trials in Oncology (Alliance)を介して、ステージ2あるいは3の乳がん女性患者3,000人を募る。臨床試験に参加する女性を無作為に2グループに分け、一方にはアスピリンを、他方にはプラセボ錠剤を投与する。

 

人々の行動を調査し、行動と健康状態の相関性を検証した先行研究から、定期的にアスピリンを服用していた乳がんサバイバーは、アスピリンを定期的に服用しなかった患者と比較して、乳がん再発と死亡のリスクが50パーセント低かったことがわかっている。このため、他の有望な前臨床研究結果も合わせて、医師とサバイバーの間では、アスピリンの治療的有用性探求への関心が高まっている。

 

「化学療法とホルモン療法は乳がん女性患者の生存期間を延長しますが、治療費は高額で、多くの副作用を伴います」と、ダナファーバーがん研究所のスーザン・F・スミス女性がんセンター上級医で今回の共同研究者であるWendy Chen医師(公衆衛生学修士)は述べた。「腫瘍がホルモン感受性でない女性の治療選択肢は限られています。この臨床試験からアスピリンが有効という結果が出れば、米国で年間10,000人、低所得国で年間75,000人の命をアスピリンで救える可能性があるとわれわれは推測しており、乳がんという病気に非常に大きな影響を与えることになるでしょう」。

 

もし効果が証明されれば、現在の化学療法とホルモン療法にアスピリンを追加することで延命効果を高められるかもしれない。米国以外でみると、アスピリンのコストの低さ(年間6ドル)は、高額な治療を受けられない発展途上国で大きな助けとなるだろう。

 

「アスピリンと乳がん再発に対する効能を関連付ける疫学的、前臨床的エビデンスは非常に有力ですが、今回のような前向き臨床研究によって、乳がんにおけるアスピリンの役割を明確に特定することが必要です」と、臨床試験のパートナーの一員で、BWHのChanning Division of Network Medicine、内科学・疫学准教授のMichelle Holmes医師(医学博士)は話した。

 

米国では、製薬業界ががん治療の資金援助に大きな役割を担っているが、処方箋なしで購入できるジェネリック医薬品であるアスピリンを使用する大規模臨床試験への出資は、企業にとってほとんど魅力がなかった。しかしながら、国防総省のBreakthrough Awardは、従来の資金源からは資金援助を受けられなかったであろうABC臨床試験のような研究を支援する独自の方法である。

 

「今回の臨床試験は、この種の臨床試験としては米国初となるでしょう」。ダナファーバーがん研究所のBreast Oncology Program統括者、内科学教授、乳がん研究所Thompson ChairであるEric Winer医師は述べた。「乳がん再発予防におけるアスピリンの潜在的有効性は有意であり、現在の治療法をアスピリンが増補しうると断定する日を心待ちにしています。これは今後も評価を進める必要がある治療法です」。今回の研究資金獲得のパートナー研究者(Partnering PI)でもあるWiner医師は強調した。

 

試験責任医師らは、がんにおけるアスピリンの役割を研究している別の大規模国際臨床試験と今回の試験の結果を結びつける予定で、それによって、アスピリンの有用性が乳がんのあるサブタイプ特有のものかどうか分析することが可能になるであろう。研究者らは、アスピリンには特に出血など既知のリスクがあるものの、多くの臨床試験や、心臓病や大腸がんなど他の病気予防を目的とした臨床診療で広く安全に使用されていることにも注目している。

 

Breakthrough Awardは、従来の資金調達方法には該当しない研究を支援する独特の方法であるが、研究レビューと遂行の全段階における患者アドボケート(サイト注*日本では患者ボランティア、患者支援者、ピアサポーターなどにあたる)の関与を必要条件としている。なぜなら、患者アドボケートは乳がんの予防と治療に関する教育に重要な役割を担っており、闘病経験のある患者も多く参加しているからである。

 

「手ごろな費用で効果的な乳がん治療を受けられる方法は国際的に注目されています。アスピリンの利用しやすさ、毒性の低さ、そして生存期間を有意に延長する(そして死亡率を下げうる)可能性は、数百万人の患者の命とその家族たちに影響を及ぼすでしょう」とABC臨床試験患者アドボケートのCarol Matyka氏は話した。

 

出典:ダナファーバーがん研究所 プレスリリース

 


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原文掲載日

翻訳宮本満里

監修小坂泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)

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